最初で最後の我儘を

みん

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婚約解消

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学園の1年のカリキュラムは、前期と後期に別れていて、それぞれ進級や卒業に必要な単位を取っていかなければならない。
そして、前期から後期の間には1ヶ月の休みがあり、後期が終わった後、進級前にも1ヶ月の休みがある。

しかし、今年は国を上げての大きな式典が後期が始まる頃にある為、今年の休みは例年より1週間長くなっている。
長期休暇ともなれば、寮生活をしている学生は領地や国に帰ったりするが、私とヴァレリアは混乱を避ける為に、そのまま寮に残る事にした─のだけど。



「休園中の学園は警備が薄くなる。」と、王太子とシモン様からも言われてしまい、学園が休みの間は、王城の客室で過ごす事になってしまった。時々、帰国しない留学生も居て、その場合も王城の客室で過ごしているらしく、特別な事ではないと言われ、断る事もできなかった。ただ、「王城に居る間は、ヴィンスを付けさせてもらう。」と言われてしまい、それだけは申し訳無い思いでいっぱいだ。



前期最後に行われた初めて受けたテストは、学年5位だった。やればできる子だった。
ちなみに、1位は第二王子で、3位はリル、ヴァレリアは10位だった。
テストが終わるとその2日後に終業式が行われ、その翌日から長期休暇に入る為、寮生活をしている子達は荷物整理やらでバタバタしている。
そして、終業式が終わると、次々と人が減っていき、学園内も寮内も静かになっていった。

「それじゃあ、私達も行きましょうか」
「はい!」

荷物は既に王城に送ってあるので、街でランチをしてから歩いて王城迄行く事にしていた。

「お待たせしました。今日も、付き合わせてしまってすみません。」
「いえ、気にしないで下さい。」

今日もまた、サクソニア様の護衛付きだ。




どうやら、サクソニア様には本当に婚約者も彼女も居ないみたいだ。ただ、本人はとてもモテていると思う。3人で歩いていると、すれ違う女の人の殆どがサクソニア様に目を奪われている。

ー本当に、勿体無いよねー

私達の護衛がなければ、もっと出会い?の時間がとれるんじゃないかなぁ?と思ったりもする。

ーサクソニア様にも、良い人ができれば良いなー

と思いながら、今日も3人でのランチを楽しんだ。








その日、王城に到着したのは夕方だった。
入城した後は、一度サクソニア様とは別れて、私とヴァレリアは女官の案内で、今日から過ごす事となる部屋へとやって来た。夕食迄は時間があった為、部屋で2人で寛いでいると、第二王子が話がしたい─と言う先触れの遣いの女官がやって来た。
断る理由もなかった為承諾すると、第二王子はすぐにやって来た。



「どうして、私に黙っていたんですか!?」
「え?」

チラッ─と、第二王子の後ろに居る王太子に視線を向けると『バレた』と、声には出さず、口だけが動いた。

ー何が?ー

『ジゼル。かいしょう』

ーなるほどー

私が、フォレクシス第二王女ジゼルだと言う事と、婚約を解消しようとしている事がバレたようだ。
フッ─と息を吐き、第二王子─ロルフ様としっかりと目を合わせる。

「お話しますので、どうぞ、椅子に座って下さい。王太子殿下も…どうぞ。」

ーここで逃げても仕方無い。私からハッキリ伝えた方が良いだろうー

震える手に、グッと力を入れた。







バレてはいない“魔女の呪い”には触れず、持病があり不安定である為、もともと結婚する予定ではなかった─と言う事にした。

今は元気であっても、1年後、3年、5年後にはどうなっているか分からない。そんな不安定なまま、結婚はできないから─と。

「でも、治る…しれないんですよね?」
「“かも”では…結婚できません。結婚してすぐに死んでしまうかもしれません。そうなると、ロルフ様だけではなく…色んな人に迷惑が掛かりますから。」
「そんな事は───」
「そんな事は、あるんですよ。それに、私は……私の事で、ロルフ様に迷惑を掛けたくないんです。ロルフ様は、私に優しさをくれました。プレゼントも頂きましたけどね?でも、私は……ロルフ様には何もあげられないんです。だから、その分、ロルフ様には、ロルフ様が本当に想いを寄せている人と幸せになって欲しいんです。」
「───え?」

何故か、眉間に皺を寄せて固まるロルフ様。

ーうん。このまま自覚してもらおうー

「ロルフ様自身、気付いていないかもしれませんが、ロルフ様がリルに向ける視線は……いつも優しくて甘いですよ?」

「─────え?」

暫く黙り込んだ後、今度はポンッと顔が赤くなり、そのまま両手で顔を覆って俯いた。

「「………」」

そんな様子のロルフ様を見た後、王太子と私は無言で頷きあった。どうやら、ロルフ様はようやく、自分の気持ちを自覚したようだ。これで、私との婚約の解消も進むだろう。






「私は先に行っているから」と、王太子が部屋から出て行き、今は私とロルフ様と、少し離れた所に控えているヴァレリアの3人だけとなった。



「ジゼル様……私は…本当に、貴方となら、一緒に歩んで行けると思っていたんです。リル嬢の事を指摘された後に言っても…信じてもらえるかは分かりませんが……」

「いえ…ロルフ様が、そんな嘘をつくなんて…思ってませんから。その気持ちは……有り難く受け取っておきます。その代わりに、私に対して申し訳なく思うなら……その分、リルを幸せにしてあげて下さい。リルと……幸せになって下さい。」

「はい…必ず……。ジゼル様、ありがとうございました。」

ロルフ様は、少し辛そうな笑顔を浮かべた後、この部屋から出て行った。





その2日後。レイノックス第二王子ロルフと、フォレクシス第二王女ジゼルの婚約が、正式に解消されたのだった。







❋エールを頂き、ありがとうございます❋
*.(๓´͈ ˘ `͈๓).*




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