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第七章ー隣国ー

宮下香との対面

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「謁見は明後日になった。」

ーえ?手紙を飛ばしたの昨日だよね?色々と早過ぎませんか?ー

「飛ばした手紙に“既にそちらに向かっている。謁見の時間を作ってくれ”と書いたのだ。」

あぁ─要約すると─

グレン=パルヴァンオレが、既に王城に向かっているから、最短日程で時間を作れ”

ですね─

「実際は、ハル殿に王都の邸に転移してもらう事になるが、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。ロンさん達とも会いたかったので、謁見予定日の前日の明日に─でも良いですか?」

「あぁ、前日の方が私も助かる。宜しく頼む。」

と、パルヴァン様はニッコリと笑った。







そして、今日はお昼ご飯を食べた後、私とミヤさんと別々に宮下香と対面する事になった。














†宮下香とモブのハル†


「何かあったら、すぐに私を呼んで下さい。」

と、ゼンさんに言われて「分かりました」と答えて、私は扉の中に、ゼンさんはそのまま扉の前に留まり─

私はその扉を閉めた。


うん。久し振りの牢屋だ。ティモスさんに、問答無用でここに入れられたのが…懐かしい─。



『また誰か来たの?話が通じる人を呼んでくれたの?』

ーあぁ…やっぱり日本語だー

『あなた…モブの薬師が、何でこんな所に?って言うか、あんたのせいで滅茶苦茶になったのよ!!』

ガシャンッ

と、鉄格子を両手で握り、私に向かって叫び出した。

『なんで、モブのくせに!あんたがエディオルやレフコースの側に居るのよ?そこは、私の場所なのよ!返しなさいよ!あんたなんて、消えてしまえばいいのよ!』

“聖女”についての云々は、ミヤさんが締め上げるだろうから、そこについては触れないでおく。

それにしても─この子、本当に何も解ってないんだな。いや─よく考えたら…まだ高校生なんだよね。この子自体も、何やら日本に居る時からみたいだけど。周りの大人も…何も咎めたりはしなかったんだろうか?私にお姉さん達が居たように、甘やかすだけじゃなくて、駄目な事は駄目だと─言ってくれる人は居なかったかのだろうか?

『はっ!黙りなの?何か言ったらどうなのよ!』

『あなたって、本当に可哀想な人だよね?』

『─っ!にほ…ご!?あんた…あんたも日本人なの?』

私が日本語で話し掛けると、彼女は少しトーンを落とした。

『まだ分からない?ここは、ゲームの世界じゃないって。ここはね、皆1人1人が自分の意思を持って生きている世界なの。ゲームの世界じゃないからこそ、私と言うゲームには居なかったか人間が居るの。そして、私や…レフコースやエディオル様が、自分自身で選び選択をして、今、私がに居るの。だから、は─私が居て良い場所─私の場所なの。あなたなんかには─絶対に渡さない。』

『な──っ!』

『私は、ここに居る為に…努力をした。でも、あなたは…ここで何をした?魅了で人を駄目にしただけだよね?そんな人が選ばれる訳ない。そんな人に、ここに居て欲しいなんて、誰も思わない。』

私は、宮下香から目を逸らす事なく言い切った。

『でも、私は…ヒロインで…!』

ーあぁ…ここまで言っても無理なのかー

『あなたの話は…聞くつもりはないから。それに、もう二度と…あなたと会う事は無いと思う。さようなら。』

そう言いながらドアノブに手を掛け、扉を開ける

『待ちなさいよ!言い逃げするつもり?何様なのよ!』

『何故、私があなたから逃げなきゃいけないの?あなたは──あなたが、皆から置いていかれるだけだよ。』

私は、彼女を振り返る事なくそう言ってその部屋から出て、そのまま後ろ手に扉を閉めた。

 












††宮下香と聖女ミヤ††


『──次は…誰なのよ?次こそ、私をここから出してくれる人なの?』

宮下香は、私に背を向けたまま─鉄格子に背を預け、地べたに座り込んだまま話し出した。

『………』

『何?あぁ、また言葉が通じない人なのね?本当に腹が立つ!私は、聖女でヒロインなのに!』

『…あなた、本当に何も分かってないし、変わろうともしないのね?』

『な…何?あんたも…日本人なの?』

と、また聞き慣れた日本語に驚いたようで、宮下香が私の方へと振り返った。

『私は、あなたより前に召喚された聖女よ。』

『それじゃあ、あんたが完璧に浄化したって言う、聖女達のうちの1人って事!?あんた達のせいで、私はこの世界に必要とされなかったのよ!この国に穢れがなかったから、召喚されるのが遅くなって、エディオルをあのモブに取られて─!』

ガシャンッ

『きゃあ─っ』

『あら、ごめんなさいね?足が少し…滑ったみたい。この部屋、声が響くのよね…本当に煩いから…キーキー猿みたいに叫ばないでくれるかしら?』

『──なっ…』

『あなた…人の命を何だと思ってるの?穢れがある事によって、この世界がどうなるか…知らない訳じゃないよね?ゲームを知っていると言うのなら尚更。』

穢れがあると、魔物や魔獣が増える。それらが増えると、次々と人間の犠牲者が出るのだ。そうならない為に、何年、何十年と掛けて魔力を貯めて聖女を召喚するのだ。

『ここは、ゲームの世界みたいに、“失敗したから、もう一度やり直し”なんて事は出来ないのよ?死んだら終わりなの。穢れが無くて、聖女が必要無いと言う事は、この世界にとっては本当に幸せだって事なのよ?それを、恋愛がしたいから穢れが出て欲しいって─あなたは、本当に救いようの無い馬鹿─クズだよね?』

『ば…ばか?くずって…』

『宮下香─あなた…日本でもかなりわよね?』

ー本当に、この子って…クズなんだよねー

『は?何を言ってるの?って、何?』


ハルから名前を聞いてから、“宮下香”を探ってみた。そうしたら、半年程前に義理の両親から捜索願が出されていた─のだが…。

『あなたが寝取った男のうちの1人が、結構なお家の息子でね。あなたとの関係を知った、その婚約者が─自殺したのよ。』

『え?』

百歩譲って、浮気ならまだ良かったのかも知れない。でも…宮下香は未成年だった。誘惑したのが宮下香だったとしても、その非は、その男に向けられたのだ。未成年に手を出した御曹司。その御曹司には婚約者が居たと、あっと言う間に広がった。その男は病んでしまい今でも入院している。

『そこから、次々にあなたの行いが露見したのよ。苛めもしていたみたいね?あなたの同級生の何人かが、あなたが行方不明になった後に行った、学校のアンケート調査に書いていたそうよ?』

『……そん…な…』

多分だけど、将来、こちらの世界で生きていく事になるから─と、日本で好き勝手な事をして来たんだろう。

『それに、努力も何もせずに“自分は聖女だ─”なんて言わないでくれるかしら?毎日訓練を必死にやって努力して、この世界の穢れを浄化して来た歴代の聖女に失礼よ。あなたの行い全てが─聖女を冒涜しているわ。そんなあなたが、ここで必要とされる人間になれる訳がないの。エディオルさんが、あなたを選ぶなんて─例え、あのモブの薬師が居なかったかとしても、絶対に有り得ない。』

『……わたし…』

『ここには、あなたの居場所はなかったけど…日本では…あると良いわね?』

きっと、日本にもこの子の居場所はないだろう。

『いや…だ…お願い。日本に還りたくない!お願い!ここに居させて!』

『…それは無理よ。あなたは、リュウがくれた最後のチャンスを逃したのよ。もう聖女でもない。あなたは、日本に還って…自分の犯した罪を償いなさい。』

日本に還すと言うなら、この世界で私がこの子にする事は何も無い。日本で…苦しめばいい─。

『…あ…あぁ…』

牢屋の中で蹲り、泣き出した宮下香。

ようやく、自分の犯した罪の大きさに気が付いたのか…それとも─

ーどっちでも…もう私達には関係無いけどー

それ以上、言葉を掛ける事なく、私はその部屋から出た。






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