贄の令嬢はループする

みん

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❋ループ編❋

11 二度目の

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私が婚約解消の話をしてから1週間。

王家からの返事はまだない。王家にとって、ハロルド様とジュリエンヌ様の婚約、婚姻は良い話でしかないのだから、私との婚約は直ぐに解消されるかと思っていたのに。この間にも、ハロルド様とジュリエンヌ様との距離は近いまま。私がそこに入る事はない。

“婚約者よりも、トワイアル王女を大切にしているトルトニア王子”

それが、学園内での認識だ。

可能な限り、あの2人には近付かないようにしているし、1人で行動しないようにしているけど、これ以上、変な噂が広まる前に、早く婚約を解消したい。






「ハウンゼントさん、申し訳無いけど、今集めたプリントをミレニー先生の所に持って行ってくれないか?」
「分かりました。」

その日、私はクラス担任の先生に頼まれて、集めたプリントを職員室へと持って行く事になった。
私達高等部3年生の教室は2階にあり、職員室は1階にある為、教室が並ぶ廊下を歩き、丁度校舎の中央にある階段を降りなければならない。その階段を降りようとした時だった。

ドンッ──
「えっ!?」

背中を押された!?と思った時には体が階段の方へと傾き───

「ハウンゼント嬢!!」

誰かが私の名を呼んだけど、その直後、体に衝撃を受け、私はそのまま意識を失った。












******


「リーナ…目が覚めて良かった……」
「お兄様……」

次に私が目を覚ました時、お兄様が私の手を握って泣いていた。
どうやら、私は学園の階段から転げ落ちて意識を失ってから、3日間も眠り続けていたらしい。

「い───────っ!」
「リーナ!大丈夫か!?直ぐに医師を呼んでくるから、おとなしくしてて!」

そう言うと、お兄様は急いで部屋から出て行った。

「………どうして……………」

ジクジクと痛みのある左肩にそっと触れる。
階段から転げ落ちた際、左肩を強打したらしく、そこからかなりの出血を伴っていたらしい。それは、前回、ハロルド様を庇ってできた傷痕の位置とほぼ同じ位置にある。
回避できたと思っていたのに。結局は前回と同じ事になったのだ。

お兄様が医師を連れて急いで戻って来た頃には、私はまた痛みで気を失っていて、更に熱に浮かされ、それからまた三日三晩眠り続けた。



目が覚めてからも微熱は続き、階段から転げ落ちてから1ヶ月程経った頃、ようやく普通の生活に戻れた。そのタイミングで、王家から、ハロルド様との婚約の書類が届いた。



「この様なタイミングになり、申し訳無い─と、国王陛下は仰っていました。」

そう言って頭を下げているのは、国王陛下から預かった書類と手紙を届けに来た者で、ハロルド様の誕生会で私が声を掛けた騎士だった。

「頭を上げてください。」

本当に、嫌なタイミングだ。

私が“傷物”になったタイミングでの婚約解消。
以前から、しかも、私の方から婚約解消を願っていたなんて事は知られていない。

“傷物になったから捨てられた”

と思われても不思議ではないタイミングだ。



この騎士の名前は─オーウェン。平民出身だそうだけど、騎士としての能力は高いらしく、第一騎士団所属ではあるが、王太子やハロルド様の護衛に就く事もよくある。以前、ハロルド様とジュリエンヌ様がカフェの個室へと行く時に、私達に気付いて焦っていたのも……この騎士だった。

国王陛下からの手紙は、謝罪も含まれていた。
そして、手渡された書類に父と私がサインをして、第二王子ハロルド様との婚約は解消された。





1ヶ月ぶりに行く学園は、何とも言えない雰囲気だった。ただ、フルールとジョナス様が一緒に居てくれたお陰で、直接私に何か言って来たり訊いたりして来る人は居なかった。

勿論、ハロルド様とジュリエンヌ様が、私に会いに来る事もなかった。これは、国王陛下が、学園で私と接する事を禁止しているのかもしれない──と、ジョナス様は言っていた。また改めて、婚約解消について、ハロルド様から謝罪させるつもりだ─と、国王陛下と王太子殿下が言っているそうだけど…謝罪は要らないから、もう…私に関わらないで欲しいと言うのが本音だ。





学園でのハロルド様とジュリエンヌ様は、相変わらずいつも一緒に居るようで、時々目にする事があるけど、お互い話し掛ける事はない。一緒に居る2人を見て痛みを訴えていた胸も、少しずつ訴える事がなくなり、最近では何も思わなくなった。


ーそう言えば、ハロルド様とジュリエンヌ様の婚約は、どうなったんだろう?ー

2人の婚約が調った、婚約が進められている等の話は全く耳にしていない。極秘裏に進められているのかもしれないけど……。
今日は、いつもより早目にお風呂に入り、いつもより早目にベッドに入り、久し振りに本を読みながら、ふとそんな事を思った。

「?」

そして、いつもとは違う香りが部屋に漂っている事に気付いた。
少し甘い感じの…落ち着くような香り。

ーこれは…どこかで……嗅いだ事がある?ー

パサリッ─と、手から本が滑り落ち、私の意識もそこで途絶えた。












「──────なん……で………」

『グルグルルルル───』

次に目を開けた時、目の前にまた、あの竜が居た。
真っ黒な体に真っ黒な瞳の竜だ。その真っ黒な瞳で、また私を見下ろしている。
恐怖でしかない。今世もまた、この竜に贄として噛み付かれるのか───

「──?」

前回は直ぐに噛み付かれた筈が、今回の竜は我慢するかのように、何かに耐えている。その間、私から視線を外す事はない。

「********」
『───っ!!』

そして、その竜の後ろから、誰かが何かを叫ぶと、その声に反応した竜が口を大きく開けて────

「っ!!」






私は二度目の人生を終えた。








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
_(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)_ꕤ*.゚


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