魔障のシルヴィオ

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09 浄化の成果

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#09


 カーテンから差し込む光でシルヴィオは目を覚ました。

「う……」

 数年分の快楽を一晩で味わわされた体は重く、節々が痛かった。特に後ろの穴は数日使い物にならないだろう。
 体を起こすと腹の奥にドロリとしたものを感じた。昨夜、セラフィナに散々出された神聖力の雫だ。彼女に犯され、奥に出されると、彼女のものになれたようで嬉しかった。
 「もっと」と求めて何度も腰を振った自分の痴態を思い出してシルヴィオは頭を抱えた。

(どんな顔して、これから彼女に会えば……)

 半魔として生まれたシルヴィオは、幼い頃から将来は聖女と結婚するのだと教えられてきた。
 彼女の浄化がなければ長生きできないのだから、妻を敬い、大切にするようにと言い含められてきたのだ。
 両親のように互いを尊重し、思いあえる夫婦になりたいと思っていたのに――。

(あんな……)

 あらゆる体液を流して快楽に突き落とされるのが彼女は浄化だというんだろうか。
 病みつきになってしまう。

(こういうのは、時間をおくほどよくないから……)

 すぐに彼女に会いに行こう。一晩中犯されて力尽きたあと、セラフィナはシルヴィオの体を洗って服を着せると、自室に戻るよう言ったのだ。ベッドは汚れてしまって休める状態にないからと。
 ふらふらになって、歩くだけで快楽の余韻で軽く達しながら、なんとか自室に戻ってベッドに倒れ込んだのが明け方のことだった。
 いま何時くらいだろうと窓を見つめて、シルヴィオは気付いた。

「……え?」

 眩しくない。カーテンの隙間から差し込む光が顔にかかっているのに。
 飛びつくようにシルヴィオはカーテンを開けた。
 もう見ることは叶わないと諦めた、グラシエラ山脈の荘厳な雪景色が広がっていた。

「は……」

 ベッドにつまずきながら姿見の前に行き、震える手でシャツのボタンを外す。魔障の証である黒い痣は、腹の下まで後退していた。
 浄化が効いたのだ。
 裸足のまま、シルヴィオは部屋を飛び出した。

「おはよう、ボゥ! 母上たちはどこ!?」

 廊下ですれ違った執事の横を通り抜け、驚いて振り返った彼が「食堂です!」と叫んだのに手を振ってシルヴィオは走った。
 礼儀も何もかもかなぐり捨てて、寝間着で裸足のまま、シルヴィオは食堂へ飛び込んだ。

「おはようございます! 母上、父上、兄上……っ」

 食事をしていた三人が驚いてシルヴィオを見る。最初は乱入に驚いていた彼らの顔が、別の驚きに変わるのをシルヴィオはつぶさに見た。ああ自分は彼らに愛されていると、何よりもはっきりと感じた。

「ヴィオ……!」

 母に泣いて抱きしめられる。

「よく顔を見せて。浄化が効いたのね? 私の可愛い悪戯っ子ちゃん……!」

 横から兄にシャツをめくられた。

「一晩でこんなに効くなんて。どんな浄化を受けたんだ」
「それは死んでも言えません、兄上」

 真顔で否定すると何か察したのか、兄ユーシスは泣き笑いのような顔になってシルヴィオの肩を抱いた。

「よかったなぁ……!!」

 兄の背中を叩いて応え、シルヴィオは後ろで涙ぐんでいる父に両手を広げた。

「ご心配おかけしました、父上。この通り、俺は元気です」
「心配などしてなかった。お前は強い子だ。どんなにきつい訓練でも音を上げなかった。最後は必ず打ち勝つと信じていたよ」

 だがよかった――と侯爵はシルヴィオを抱きしめた。

「セラフィナさんは? お礼が言いたいわ」
「俺もまだ会えてないんです。探してくるのでお待ち下さい」

 遅れて食堂にやってきたボゥに、シルヴィオは笑顔で言った。

「ボゥ、俺ガーラントのミートパイが食べたい! 腹が減って、城の壁でも食べだしそうだよ」

 ガーラントは氷蔦城のコックだ。シルヴィオが幼い頃から、美味しいものをたくさん作ってくれた。

「今すぐ作るように伝えます。100個でも喜んで作るでしょうとも」

 そう言って彼は目を拭った。長く城で働いてきた使用人たちは、みんな家族も同然だ。

「セラフィナを見なかった? 食事に呼びに行くよ」
「温室を見たいと。……食事はマナーを知らないので遠慮すると仰られました」
「わかった、行ってくる!」

 落ち着きなく、シルヴィオは食堂を飛び出した。昔はよく叱られたが、今日は咎める人は誰もいなかった。
 すれ違う使用人たちみんなの名前を呼んで、「おはよう!」とシルヴィオは声をかけた。体が軽くて、グラシエラ山脈の山頂まで走って行けそうな気がした。



 温室に飛び込んでシルヴィオはセラフィナを探した。
 侯爵家自慢の広い温室は温泉の熱で冬の長い北部でも植物を育てるためのもので、野菜や夫人の好きな花が育てられている。
 背の高いホリホックの花の向こうにセラフィナを見つけた。色とりどりの花を楽しそうに見て回っている。

(綺麗な人だな……)

 兜越しでは輪郭しか見えず、儀式のときはずっと目隠しをしていたから、初めてまともにシルヴィオは彼女の姿を見た。
 波打つ美しいブルネットに、細い腰、理知的な瞳。甘えたところのない、一人で生きて来た強さを持つ女性に見えた。

(この人に、俺は……)

 儀式を思い出すと、散々犯された腹の奥がうずいた。羞恥が込み上がって思わず口を覆う。恥ずかしさで叫びだしそうだった。

「……お加減はいかがですか」

 いつの間にかセラフィナがすぐ近くに来ていて、シルヴィオは飛び上がった。

「いえっ、あの! と、とてもいいです……っ」

 恥ずかしい。こんなに綺麗な人の前で昨夜、あらゆる体液を漏らして何度も何度も果てたのだと思うと顔も見れない。
 セラフィナはさらに一歩シルヴィオに近づいて耳元に囁いた。

「後ろは平気ですか?」

 昨夜何度も自分を犯した人の声だ。耳元でささやかれながらおかしくなるほど後ろの穴を犯されて、シルヴィオは射精を伴わない絶頂を何十回もした。

「平気じゃないです……まだ、あなたに犯された感覚が消えません」

 消え入りたくなるような羞恥を感じながらシルヴィオは正直に告白した。
 セラフィナの細い指が丹田をなぞり、「んっ」とシルヴィオは思わず声を漏らした。

「あなたのここは、狭くて、温かくて、犯しがいがありましたよ」

 ぞくぞくぞくっ。快感に似たものが背中を駆け上った。まだ奥に残ったものがドロリと体内で動き、彼女に出された時のように体は震えた。

「す、みませ――」

 真っ赤になってシルヴィオは自分の身体を抱きしめた。余韻でイってしまったのだ。
 羞恥で死にそうになりながら、シルヴィオは求めた。

「せ、責任を取ってください」
「責任?」
「浄化をしていただいて、感謝しています。ですが俺は、あなたの浄化のせいで普通の体じゃなくなりました。その責任を取ってください」

 得心したようにセラフィナは美しく笑った。

(この人が、自分の妻だなんて信じられない……)

 こんなに美しくて、あんなに人を淫らにする人が――。夢を見てるみたいだ。
 つつつ、とセラフィナの指が丹田から下にかけてシルヴィオの肌をシャツ腰になぞった。

「また犯してほしいということですね? 尊厳もプライドも壊されて、私のような女に喘がされるのがそんなに気に入りましたか」

 顔から火が出そうだった。とても同意なんて出来ないのに、すべてがその通りだった。
 白い指をセラフィナは自分の唇の前に立てた。

「旦那様からキスしてくれたら、妻としてあなたを一生犯し尽くしてあげますよ」

 震えながら、シルヴィオは身をかがめた。彼女が悪魔だったとしてもそうしただろう。
 それはまるで、自分の人生を捧げる誓いのキスだった。


***


 セラフィナもまた、初めてまともにシルヴィオの顔を見た。
 色素の薄い銀髪に、深い青色の瞳。顔立ちの整った美しい青年だった。北部の人間らしく抜けるように肌が白い。
 そしてまだ、少年の雰囲気を残している。

 このあどけなさを残す少年を、自分は容赦なく一晩中犯したのだと思うと――背徳感と優越感がセラフィナに湧き上がった。
 下世話な話だが、この美しい青年を犯せると言われたら金貨を何百枚と積む変態はたくさんいるだろう。それを自分は儀式の名目でやりたい放題、その上、公子の妻という立場までついてくる。

(いいのかしら。こんな美味しい仕事、私なんかがもらって……)

 もちろん、代われと言われたところで誰にも譲る気なんてないが。

「せ、責任を取ってください」

 真っ赤になって言い出す姿が可愛かった。
 前妻が二人いるとはいえ、ろくに交合できなかった少年にはセラフィナの浄化はさぞ刺激が強かっただろう。体はすっかりとろけきっているのに、心は受け止め切れなくて「責任」だなんて言い出すのがおかしい。

「旦那様からキスしてくれたら、妻としてあなたを一生犯し尽くしてあげますよ」

 可愛い夫をからかうのがセラフィナは楽しくて仕方なかった。
 震えながらセラフィナにキスしたシルヴィオは、

「つ、次の浄化はいつするんですか」

 赤くなって尋ねた。基本的にセラフィナの顔を直視できないようで、耳まで真っ赤にしながらずっと横を向いている。

「いつがいいですか?」

 シルヴィオの臍の下を指先でさすりながらセラフィナは尋ね返した。

「昨夜は無理をしましたし、体にも負担がかかったでしょう。少し間を空けたほうがいいと思います」

 セラフィナの指の動きを咎めることもできずに、シルヴィオは横を向いて耐えている。ぐっと押し込むと「んんっ」と甘い息をもらした。

(可愛すぎないかしら、この人……)

 つい意地悪したくなる。

「間を空けるというのは、んっ、どれくらい……?」
「そうですね、二ヶ月とか?」
「二ヶ月!?」

 驚愕してシルヴィオはセラフィナを見た。そんなに待つなんて耐えられないと顔に書いてある。すぐ顔に出るところが本当に可愛い。

「半年にします?」

 意地悪してセラフィナは期間を伸ばした。シルヴィオが「犯してください」と懇願するまで我慢させるのも楽しそうで、想像が止まらない。

「……っ、魔障はだいぶ引きましたが、まだ腹部に残っているんです。そんなには……待てないです」

 シルヴィオの魔障がどれくらい残っているか、セラフィナはよく理解している。痣は表面的なものに過ぎないが、魔核から伸びた瘴気がどれほどシルヴィオの体に根を張っているか、聖女であるセラフィナは正確に視ることができるからだ。
 だがすっとぼけて「それは大変。見せてください」とシルヴィオに求めた。

「こ、ここでですか!?」
「すぐ確認しないとまずいのでしょう?」

 温室の中には自分たち以外、人はいない。誰か来るかもしれないが、魔障の確認をしていたと言えば言い訳は立つ。
 それよりセラフィナは、この今にも誰か来るかもしれない場所で、シルヴィオを脱がせたかった。

 温室内のベンチにセラフィナはシルヴィオを座らせた。

「さあ、見せてください」

 真っ赤になりながらシルヴィオはシャツをめくり上げた。
 黒痣は丹田から、血管模様のように伸びていた。上は臍の上辺りまで。シルヴィオを侵して魔物にするのを諦めていないとばかりに、支配の印を伸ばそうとしている。

「下は? 見せてください」
「下は……部屋でなら」

 セラフィナはシルヴィオの両手に嵌められていた銀環に神聖力を通した。彼の両手首は銀環によって後ろに回され、拘束される。

「せ、セラフィナ……!」
「フィーと呼んでください」

 縛られて身動きの取れないシルヴィオの下着《ボレー》の紐をほどいて、セラフィナは前をくつろげた。
 半勃ちになったシルヴィオのものが、ボロンとこぼれ出る。陰茎と睾丸、そして太ももの付け根まで血管状の黒い痣が広がっていた。

「フィー、やめてください。誰か来たら……っ」
「なら収めてください」

 根本をぎゅっとにぎって、セラフィナは半勃ちの男根の先からこぼれる雫をぬるぬると先端に塗り込めた。手のひらでこするとシルヴィオは身をよじって腰を引いた。

「フィー! っ、ダメです、そんな……!」

 逃げようとするシルヴィオの両足首に嵌められた銀環に神聖力を通して、セラフィナは彼の両足をそれぞれベンチの脚にくくりつけた。
 両手を後ろで縛られ、両足は開かされたシルヴィオは逃げられない。
 彼は泣きじゃくって強い刺激に体をのけぞらせた。

「や、あ……ぁ……もう出ないのに、……っあ!」

 びくびくびくっと体を震わせてシルヴィオはすぐに達した。
 精液は出ない。出たのは透明な体液が少しだけだ。昨晩すべて搾り取ったので当然だろう。

「可哀想に。空撃ちしちゃいましたね」

 泣きじゃくってトロトロになった顔でシルヴィオはセラフィナを見た。何をされたのかよくわかっておらず、ぼんやりと不安そうにセラフィナを見ている。

(可愛い……)

 キスして頭を抱きしめると、シルヴィオはしゃくりあげて「ごめんなさい。フィー。許してください」とセラフィナに頭をすり寄せた。
 セラフィナは胸の奥がぞくぞくした。このまま無垢な子供を犯してしまいたい衝動に駆られる。
 ぐっと我慢して、セラフィナはハンカチを噴水の水で濡らすと、シルヴィオの汚れた股間を拭いてやり、衣服を着せ直して拘束を解いた。

(まだ目がトロトロだわ……)

 幸福の余韻にひたるように、口元に手を当てて「ん……」とシルヴィオは甘い息を吐いている。

「フィー、キス……したいです」

 うるんだ目で見上げられて、断れるわけがなかった。
 セラフィナを膝の上に乗せて、ためらいがちにシルヴィオは唇を重ねた。セラフィナの手を取って、自分の下腹部に触らせる。

「ここに……早くまた、あなたの神聖力がほしいです」

 セラフィナは微笑んで、「なるべく早く、またしましょうね。旦那さま」とささやいた。

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