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37_悪い状況の中にある
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暫く気絶をしていて、目を覚ますと魔族たちが遠巻きにこちらを見ていた。
その中には魔族会議に出席した際にも会った者たちはいるが、あのときよりも私を不審がっている目をしている。
私が連れて来られたのは、評議会室……人間界で言うところの裁判所のような場所らしい。
私はチェルシーに手を引かれてそこの台に立たされていた。
「皆様、現在私にかけられている疑惑について、真の犯人をお連れしましたわ!」
「真の犯人……!?」
「ということは、あの人間がローヴァイン家の祭壇を壊すように扇動したということか!?」
何の話をしているのか、私は注意深く彼らの言うことを聞くことにした。
どうやら、人間界でローヴァイン家の祭壇が破壊される事案が以前から起きていたらしい。
最近の魔族間では人間との関係の緩和について取り沙汰されているが、ローヴァイン家はその事象をもって、やはり人間に対しては締め付けを進めるべきだと主張しているらしい。
だが、ローヴァイン家の被害は彼らの主張を通すために自作自演でやったのではないかと疑念を抱いている者がいる。
その風評を覆すために、犯人――つまり私――を捕まえてきた。そんな流れらしい。
「何故この人間が生贄として魔族に捧げられたかわかりますか? この人間は人間界にいる頃から問題行動を起こしていた。ローヴァイン家の祭壇を破壊したのもそのひとつです。だから周囲の人間が見放して生贄にした」
「そうだったのか……!?」
「でも、魔族に捧げるなら良き人間を捧げて欲しかったものです。こんな人間をよこすなんて、あまつさえその演技に騙される魔族が出てくるなんて……ああ、情けないですわ……!」
「泣くなチェルシー! お前の主張通りあの人間を処断して、平和を取り戻してみせよう……!」
ローヴァイン家の当主ダズは、さめざめと泣く腹心のチェルシーを庇うように抱きしめている。
(……なんかこの光景、魔族会議のときにも見た気がするわね)
今なら隙をついて逃げ出せないかなと考えてみたけど、私の周りには他の家の魔族たちがいる。一人で逃げてもすぐに捕まってしまうかもしれない。
魔族たちは、私を怪しむ目で見ながら話し合っているようだ。
「やはり、チェルシーちゃんは犯人ではないんじゃないか?」
「な。念の為に行動に悪意が無いか魔術で確かめたけど、引っかからなかったらしいし……」
(それって、私が最初に受けたあれのことなのかな)
受けた当人だからこそわかるが、あの魔術には脆弱性があるのだ。あれで調査しても参考になるとは言いがたい。
それに、チェルシーの言い分にはおかしい点が色々ある。私がローヴァイン家の祭壇を壊したという嫌疑がかけられてるけど、それならアドラー家に生贄として捧げられたのは妙だ。ローヴァイン家に捧げられる方が自然ではないか。
(でも、そういう細かいことは気にされてないんだろうな。魔族たちは雰囲気に飲まれやすいみたい。今はチェルシーを庇おうという場になっている……)
私の前で喧々諤々と話し合う魔族たちを見つめながら、私は内心で考える。
魔族会議のときはここから哀れみを誘ってなんとか乗り切れたけど、今回は厳しそうだ。
私自身に嫌疑がかけられているからである。
チェルシーの言い分がそのまま通る訳ではないかもしれない。私が魔族たちにすぐに殺されるようなことにはならないと思う。
でも、元みたいに人間界で平和に暮らせるかどうかはわからない……。
(魔族会議から生還出来たとき、うまくやれたって思ってたけど、あの一件で私は目を付けられたんだろうな。もともとローヴァイン家は人間否定派なこともあって、私がレヴィウスと時々交流するような生活は良しとしたくなかったのかも……)
あと、レヴィウスがローヴァイン家について色々調べていると言っていた。
何か後ろ暗いことがあって、アドラー家に対しても嫌がらせをするつもりで、私を誘拐したのかもしれない。
(…………)
魔族会議の頃は私にまだ緊張感があったというか、『人間界に帰りたい』という強い気持ちがあった。そうすれば穏やかに暮らせると思っていたから。
実際に数ヶ月暮らしてみたところ、今の私は附抜けてしまったというか、かつてのような張り詰めた気持ちが無くなってしまった。
具体的にどうすればこの局面を乗り切れるのか、頭が回らない……。
自分なりに可愛がっていたティラミスがあんなことになってしまって、頭がぼーっとしているのもある。
(どうしようかな……)
それに、ここを乗り切ったとして、チェルシーたちに私の自宅の場所はバレている訳だ。
自宅だけじゃなくて、魔族は特定の人間の魔力痕を辿って居場所を調べることも出来るらしい。
彼女たちがその気になれば、事故を装って私を始末するようなことも出来るのではないだろうか。
私が平穏に暮らせる生活なんて、実はもう無いんじゃないか?
それなら……。
その中には魔族会議に出席した際にも会った者たちはいるが、あのときよりも私を不審がっている目をしている。
私が連れて来られたのは、評議会室……人間界で言うところの裁判所のような場所らしい。
私はチェルシーに手を引かれてそこの台に立たされていた。
「皆様、現在私にかけられている疑惑について、真の犯人をお連れしましたわ!」
「真の犯人……!?」
「ということは、あの人間がローヴァイン家の祭壇を壊すように扇動したということか!?」
何の話をしているのか、私は注意深く彼らの言うことを聞くことにした。
どうやら、人間界でローヴァイン家の祭壇が破壊される事案が以前から起きていたらしい。
最近の魔族間では人間との関係の緩和について取り沙汰されているが、ローヴァイン家はその事象をもって、やはり人間に対しては締め付けを進めるべきだと主張しているらしい。
だが、ローヴァイン家の被害は彼らの主張を通すために自作自演でやったのではないかと疑念を抱いている者がいる。
その風評を覆すために、犯人――つまり私――を捕まえてきた。そんな流れらしい。
「何故この人間が生贄として魔族に捧げられたかわかりますか? この人間は人間界にいる頃から問題行動を起こしていた。ローヴァイン家の祭壇を破壊したのもそのひとつです。だから周囲の人間が見放して生贄にした」
「そうだったのか……!?」
「でも、魔族に捧げるなら良き人間を捧げて欲しかったものです。こんな人間をよこすなんて、あまつさえその演技に騙される魔族が出てくるなんて……ああ、情けないですわ……!」
「泣くなチェルシー! お前の主張通りあの人間を処断して、平和を取り戻してみせよう……!」
ローヴァイン家の当主ダズは、さめざめと泣く腹心のチェルシーを庇うように抱きしめている。
(……なんかこの光景、魔族会議のときにも見た気がするわね)
今なら隙をついて逃げ出せないかなと考えてみたけど、私の周りには他の家の魔族たちがいる。一人で逃げてもすぐに捕まってしまうかもしれない。
魔族たちは、私を怪しむ目で見ながら話し合っているようだ。
「やはり、チェルシーちゃんは犯人ではないんじゃないか?」
「な。念の為に行動に悪意が無いか魔術で確かめたけど、引っかからなかったらしいし……」
(それって、私が最初に受けたあれのことなのかな)
受けた当人だからこそわかるが、あの魔術には脆弱性があるのだ。あれで調査しても参考になるとは言いがたい。
それに、チェルシーの言い分にはおかしい点が色々ある。私がローヴァイン家の祭壇を壊したという嫌疑がかけられてるけど、それならアドラー家に生贄として捧げられたのは妙だ。ローヴァイン家に捧げられる方が自然ではないか。
(でも、そういう細かいことは気にされてないんだろうな。魔族たちは雰囲気に飲まれやすいみたい。今はチェルシーを庇おうという場になっている……)
私の前で喧々諤々と話し合う魔族たちを見つめながら、私は内心で考える。
魔族会議のときはここから哀れみを誘ってなんとか乗り切れたけど、今回は厳しそうだ。
私自身に嫌疑がかけられているからである。
チェルシーの言い分がそのまま通る訳ではないかもしれない。私が魔族たちにすぐに殺されるようなことにはならないと思う。
でも、元みたいに人間界で平和に暮らせるかどうかはわからない……。
(魔族会議から生還出来たとき、うまくやれたって思ってたけど、あの一件で私は目を付けられたんだろうな。もともとローヴァイン家は人間否定派なこともあって、私がレヴィウスと時々交流するような生活は良しとしたくなかったのかも……)
あと、レヴィウスがローヴァイン家について色々調べていると言っていた。
何か後ろ暗いことがあって、アドラー家に対しても嫌がらせをするつもりで、私を誘拐したのかもしれない。
(…………)
魔族会議の頃は私にまだ緊張感があったというか、『人間界に帰りたい』という強い気持ちがあった。そうすれば穏やかに暮らせると思っていたから。
実際に数ヶ月暮らしてみたところ、今の私は附抜けてしまったというか、かつてのような張り詰めた気持ちが無くなってしまった。
具体的にどうすればこの局面を乗り切れるのか、頭が回らない……。
自分なりに可愛がっていたティラミスがあんなことになってしまって、頭がぼーっとしているのもある。
(どうしようかな……)
それに、ここを乗り切ったとして、チェルシーたちに私の自宅の場所はバレている訳だ。
自宅だけじゃなくて、魔族は特定の人間の魔力痕を辿って居場所を調べることも出来るらしい。
彼女たちがその気になれば、事故を装って私を始末するようなことも出来るのではないだろうか。
私が平穏に暮らせる生活なんて、実はもう無いんじゃないか?
それなら……。
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