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39_俺を好きだと言ってくれた人間について④(レヴィウス視点)
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現行のアドラー家の当主としての仕事に加えて、ローヴァイン家がかつて主張していた人間からの被害に怪しいものが見つかって、諸々調査しないといけなくなった。
それに集中するため、俺は人間界のもとへ降りる時間を捻出するのが難しくなった。
シルフィアにそう伝えると、彼女は笑顔で了承してくれた。
(それはそれとして、シルフィアが危険な目に遭っていないかは把握していたいものだ……)
シルフィアの安全を守るため、俺は彼女のもとに使い魔を残していた。
使い魔は「ティラミス」と名付けられ、シルフィアにいたく可愛がられているようだ。俺から言わせてもらえば、使い魔を愛でるシルフィアの方がよほど可愛いと思う。
シルフィアに愛でられている使い魔のことも、ひっそりと羨ましいと思っていた。使い魔は俺から生まれたもので、俺の分身みたいなものだから、それを羨むというのも奇妙なことであるが。
そう、使い魔とは俺の分身のようなものだ。
だから、ティラミスに充分に魔力を与えれば、少しの時間だが俺の目や耳として働くことも出来る。
シルフィアのもとへ行く度に、俺はティラミスに魔力を与えるようにしていた。
しばらく人間界に来れなくなるとわかったとき、今まで以上に大量の魔力を与えた。
シルフィアが言うには、普段の生活で以前客に襲われたときのような危ないことは起きていないらしい。
だが、彼女の認識と俺の認識は違う可能性がある。シルフィアに自覚がないだけで、既に危険な目に遭っていてもおかしくはない。
シルフィアは、家から仕事場に行く間など、一人で出歩いているときはティラミスを外に出している。
が、仕事場ではティラミスを荷物の中にしまって待機させているようだ。
俺はティラミスに密かに命令を与えることにした。
――シルフィアに気付かれることなく、彼女を監視すること。
命令に従って、ティラミスは密かに荷物から脱出した。
俺は自室の鏡で、シルフィアの映像を見つめていた。
人間界でシルフィアが今何をしているか、ティラミスを通して姿と音を確認出来た。
シルフィアは開店前のカフェで、男と話している。
会話の流れからすると、男はシルフィアが働いているカフェのオーナーらしい。
――シルフィアと男は、親密そうに話している……。
俺が人間界に行ってシルフィアと再会したとき、迷惑客に絡まれたシルフィアはもっと困った顔をしていた。
今のシルフィアは、笑みを浮かべて楽しそうにしている。
これは俺の使い魔に攻撃させるような場面には値しないのだろう。
それはそれとして、俺は男が気に入らなかった。
男の方は嬉々としてシルフィアに自分の話をしているようだが、自惚れだ。
どう考えてもシルフィアは男の自慢話に合わせているだけだ。
仕事上の付き合いなのに本気で気に入られていると考えるなんて――滑稽だ。
いつもの俺ならば、男の振るまいを見て一笑に付していたかもしれない。
だが、今の俺はそう出来なかった。
シルフィアの様子を見ていて、あることに気付いてしまったから。
(何故だ。何故シルフィアは、俺にしていたのと同じようにその男に笑いかけているんだ……)
シルフィアがオーナーの男に見せる笑顔も、相手を賞賛する声色も、俺には馴染みがあった。
城にいた頃のシルフィアが、いつも俺に向けていたものと同じだ。
動揺で魔術の維持を出来なくなったからか、いつしか鏡には映像が映らなくなった。
気持ちを落ち着けたくて、俺は目を閉じる。
だが、先程の映像が脳裏に浮かんで離れなかった。
ミロワールに言われて生まれた疑念を、俺は見ないようにして心の底に沈めていた。そうすればそのうち消えてくれるものだろうと思っていた。
でも、シルフィアと再会して、彼女と接した上で、その疑念が完全に消えることはなかった。
再会したシルフィアは、依然としてとても愛らしくて、俺を快く迎えてくれて……
その上で、アドラー家の城に戻りたがることは無かったし、忙しいなら来ないほうがいいと何度も言っていた。
(――シルフィアは保身のために俺の機嫌を取っているだけで、俺のことは好きでも何でも無かったのでは?)
その疑念を消してしまいたいとずっと考えていた。シルフィアが俺にくれた言葉を疑いたくなんてなかった。
でも、先程の様子を見て、疑惑は確信に変わった。
シルフィアが俺を慕う態度を見せていたのは、俺がアドラー家の最高責任者だからだ。
俺の機嫌を取れば他の使用人たちにも害されることは無いだろうと踏んだからだ。
シルフィアがオーナーの男と話を合わせるのと、俺を家で迎えてくれるのと……そこに何の違いがあるのだろう?
俺は目を閉じたまま、暫くソファに座り込んで動けなかった。
それに集中するため、俺は人間界のもとへ降りる時間を捻出するのが難しくなった。
シルフィアにそう伝えると、彼女は笑顔で了承してくれた。
(それはそれとして、シルフィアが危険な目に遭っていないかは把握していたいものだ……)
シルフィアの安全を守るため、俺は彼女のもとに使い魔を残していた。
使い魔は「ティラミス」と名付けられ、シルフィアにいたく可愛がられているようだ。俺から言わせてもらえば、使い魔を愛でるシルフィアの方がよほど可愛いと思う。
シルフィアに愛でられている使い魔のことも、ひっそりと羨ましいと思っていた。使い魔は俺から生まれたもので、俺の分身みたいなものだから、それを羨むというのも奇妙なことであるが。
そう、使い魔とは俺の分身のようなものだ。
だから、ティラミスに充分に魔力を与えれば、少しの時間だが俺の目や耳として働くことも出来る。
シルフィアのもとへ行く度に、俺はティラミスに魔力を与えるようにしていた。
しばらく人間界に来れなくなるとわかったとき、今まで以上に大量の魔力を与えた。
シルフィアが言うには、普段の生活で以前客に襲われたときのような危ないことは起きていないらしい。
だが、彼女の認識と俺の認識は違う可能性がある。シルフィアに自覚がないだけで、既に危険な目に遭っていてもおかしくはない。
シルフィアは、家から仕事場に行く間など、一人で出歩いているときはティラミスを外に出している。
が、仕事場ではティラミスを荷物の中にしまって待機させているようだ。
俺はティラミスに密かに命令を与えることにした。
――シルフィアに気付かれることなく、彼女を監視すること。
命令に従って、ティラミスは密かに荷物から脱出した。
俺は自室の鏡で、シルフィアの映像を見つめていた。
人間界でシルフィアが今何をしているか、ティラミスを通して姿と音を確認出来た。
シルフィアは開店前のカフェで、男と話している。
会話の流れからすると、男はシルフィアが働いているカフェのオーナーらしい。
――シルフィアと男は、親密そうに話している……。
俺が人間界に行ってシルフィアと再会したとき、迷惑客に絡まれたシルフィアはもっと困った顔をしていた。
今のシルフィアは、笑みを浮かべて楽しそうにしている。
これは俺の使い魔に攻撃させるような場面には値しないのだろう。
それはそれとして、俺は男が気に入らなかった。
男の方は嬉々としてシルフィアに自分の話をしているようだが、自惚れだ。
どう考えてもシルフィアは男の自慢話に合わせているだけだ。
仕事上の付き合いなのに本気で気に入られていると考えるなんて――滑稽だ。
いつもの俺ならば、男の振るまいを見て一笑に付していたかもしれない。
だが、今の俺はそう出来なかった。
シルフィアの様子を見ていて、あることに気付いてしまったから。
(何故だ。何故シルフィアは、俺にしていたのと同じようにその男に笑いかけているんだ……)
シルフィアがオーナーの男に見せる笑顔も、相手を賞賛する声色も、俺には馴染みがあった。
城にいた頃のシルフィアが、いつも俺に向けていたものと同じだ。
動揺で魔術の維持を出来なくなったからか、いつしか鏡には映像が映らなくなった。
気持ちを落ち着けたくて、俺は目を閉じる。
だが、先程の映像が脳裏に浮かんで離れなかった。
ミロワールに言われて生まれた疑念を、俺は見ないようにして心の底に沈めていた。そうすればそのうち消えてくれるものだろうと思っていた。
でも、シルフィアと再会して、彼女と接した上で、その疑念が完全に消えることはなかった。
再会したシルフィアは、依然としてとても愛らしくて、俺を快く迎えてくれて……
その上で、アドラー家の城に戻りたがることは無かったし、忙しいなら来ないほうがいいと何度も言っていた。
(――シルフィアは保身のために俺の機嫌を取っているだけで、俺のことは好きでも何でも無かったのでは?)
その疑念を消してしまいたいとずっと考えていた。シルフィアが俺にくれた言葉を疑いたくなんてなかった。
でも、先程の様子を見て、疑惑は確信に変わった。
シルフィアが俺を慕う態度を見せていたのは、俺がアドラー家の最高責任者だからだ。
俺の機嫌を取れば他の使用人たちにも害されることは無いだろうと踏んだからだ。
シルフィアがオーナーの男と話を合わせるのと、俺を家で迎えてくれるのと……そこに何の違いがあるのだろう?
俺は目を閉じたまま、暫くソファに座り込んで動けなかった。
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