魔族への生贄にされたので媚びまくって生き残ります

白峰暁

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41_エピローグ①_皆さんに大事なお話があります

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 チェルシーの一件が何だかんだ終わって、人間界に戻ったのは夜の時間だった。
 私は、カフェ・キャンドルに向かうことにした。
 今日は本来休みの日だったが、同僚たちに謝罪したいことがあったのだ。


(誘拐されて不可抗力だったとはいえ、仕事を無断で休んでしまった……!)


 家に戻ると、郵便受けに職場からの手紙が届いていて、私は肝を冷やす。
 詫びの土産を買った上で、私は仕事場に向かうことにした。


 店の営業時間が終わったタイミングで入ると、中にいた人たちがばっと私を見た。
 アリアさんと店長、それにオーナーがいたようだ。


「シルフィア!」
「あ、アリアさん……!」
「あなたが無断欠勤なんて絶対何かあったって話をしてたの。大丈夫? 何かあった? もし店の仕事が嫌になったなら、私……!」
「あ、アリアさん、落ち着いてください。仕事に嫌気がさしたとかではないので」


 抱き締めてくるアリアさんからひとまず離れて、私は三人に説明した。


 ……といっても、私に魔族と繋がりがあることは他の人には秘密にしている。
 故に、理由は濁さざるを得なかった。
 私は急に体調を崩してしまい、無断欠勤になってしまったのだ――そう説明した。



「店長、やっぱりシルフィアは働き過ぎだったんですよ……! 休ませましょう。その方がこの店のためです」
「ああ、そうだ。シフトを見直してシルフィアくんの負担を減らすようにするよ。数週間休みを取ってくれてもいい」
「ゴッフェくん、シルフィアくんが抜けたスタッフの当てはあるのか? 無いなら、僕のオーナーの威信をかけて探すことにしよう。なんなら、僕が直接働いたっていい。料理の腕には自信があるんだ」


(あれ……みんな、意外と団結してくれてる……)


 主にオーナーの影響で、この三人がいるときは微妙に言い争うことが多かった。
 だが、今はみんな協力しようとしてくれている。
 私がオーナーの雑談に付き合った日々で、彼も丸くなったのかもしれない。


 みんなが申し出てくれることはとてもありがたい。
 が――私は、頭を下げて言った。



「皆さん、ありがとうございます。ですが……私は、遠くないうちにこの店を辞めようと思っています」
「えーっ!? シルフィアくん、ほんと!?」
「ご、ゴッフェくん、何とかしてくれよ。彼女の給料をしこたま上げろ! オーナーの僕が許可するぞ!」
「……シルフィア、仕事が続けられないくらい体調が悪いの? それとも……何かやりたいことがあったりする?」


 アリアさんの質問に、私は頷いた。


「私、自分の店を持ちたいと思っていたんです。それで、仕事後も家で勉強していました。私の体調管理が甘かったのか、それで倒れてしまって……。なので、すぐにではなくても、じきにこの店は辞めたいんです」
「そ、そうだったのか。だから僕に経営のことを聞いたりしてたんだね……」
「店長、言えなくてすみません。今のカフェで働くのが居心地よくて、つい先延ばしにしてたけど……今回のことで思ったんです。はっきりやりたいことを伝えるべきだって」


 アリアさんと店長は、私のことを思案げに見つめる。


「シルフィア、仕事外でやることがあるって言ってたけど、そういう事情があったのね。言ってくれれば良かったのに……」
「すみません。まだ力が足りないかもって思うと、ちょっと勇気が出なくて」
「……いや、シルフィアくん、その気持ちはわかるよ! 僕も店長になるとき、不安が大きかった。でも、色んな人のサポートでやってこれた。今までシルフィアくんに世話になったから、僕も恩返しさせてくれ。気になる資料があったらいくらでも見せてあげるから」
「店長……!」
「私の知り合いに、店を経営してる人も何人かいるんだ。良かったらシルフィアも一緒にお茶に行かない? そこで今後に役に立つ話を聞けるかもしれないわ」
「アリアさん、ありがとうございます……!」


 私が店長とアリアさんに感謝していると、オーナーが不満げな表情で割り込んでくる。


「ちょっとちょっと、なんかシルフィアくんを辞めさせる方向で話が進んでないか? 僕としてはなんとでも引き止めたほうがいいと思うね。シルフィアくんがいなくなったらこの店は……」
「オーナー! シルフィアが抜けるのは確かに痛手ですけど、オーナーはシルフィアが話に付き合ってくれるから手放したくないだけでしょ!?」
「そうです! あなたがお話したいなら僕が徹底的に付き合いますから! それでいいでしょう!?」
「ぐぬぬ……」



 アリアさん、そして珍しく毅然とした態度の店長に押され、オーナーはたじたじになっていた。
 暫く説得されて、オーナーはやがて私を店に残すことを諦めたらしい。



「シルフィアくん……仮にだよ、仮に店を開くことになったら、そのときは開店の知らせをくれるかい? 君は我がキャンドルのライバルになる訳で……敵情視察をするのはオーナーとしての 僕の義務な訳で……」
「オーナーはただシルフィアの同行が気になるだけでしょうが! 素直になったほうがいいですよ!」
「くっ……! そ、そうだな。僕はオーナーとして実績がありますからね。シルフィアくんがそう望むなら、宣伝を手伝ってやってもいいよ。そういう伝手は持ってるんだ」
「本当ですか!? オーナー、ありがとうございます。アリアさん、店長も。店が開店出来る日が来たら連絡します。ご意見等、色々言ってもらえたら嬉しいです」



 私は笑みを浮かべながら、三人にそう言った。
 ――当初は同僚に何も言わずに開店準備を進める予定だったけど、いざ伝えてみると、みんな前向きに受け取ってくれたみたいだ。
 意を決して自分の気持ちを伝えることにして、良かったと思った。
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