脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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雲海の中の無数の浮島

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耕した浮島での作業を終えたリディアは、満足げに手を腰に当てて空を見上げた。澄み切った青空と、その下に広がる雲海がどこまでも続いている。そよ風が芝生を撫で、土の香りがふわりと漂う中、リディアは深呼吸をした。

「ふぅ……いい感じだね。これからこの島がどう変わっていくか楽しみだな。」
リディアは足元の苗木と種を見下ろしながら微笑んだ。

ふと目を凝らすと、雲海の中にぼんやりと別の浮島がいくつも見えた。それらは雲に隠れながらも、時折日の光を反射してきらめいている。

「わあ……あそこにも島がある! あっちにも!」
リディアは指を差しながら声を上げた。メリーちゃんが「メェ!」と鳴いて彼女の隣に駆け寄り、タフィーちゃんもぷるぷると弾んで同じ方向を見つめる。

「雲海の中にこんなにたくさん浮島があるなんて……まるで宝探しみたいだね!」
リディアは目を輝かせながら、地平線の向こうに連なる浮島の影をじっと見つめた。

「次はどの島に行こうかな?」
魔法の絨毯が彼女の足元でふわりと浮き上がり、リディアを待っているかのように揺れている。その姿に、リディアは小さく笑って言った。

「よし、ちょっと探検してみよう! 他にも素敵な場所が見つかるかも!」

リディアたちは魔法の絨毯に乗り、雲海を進んでいた。見渡す限り広がる白い波の中で、ひときわ目立つ黄色い島が浮かんでいるのを見つけた。

「なんだろう、あの島。すごく目立つね!」
リディアが目を輝かせると、メリーちゃんが「メェ!」と応え、タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と小さく弾んだ。

絨毯がその島へ近づこうとした時、突然大きな鳥の影が頭上をかすめた。黒く鋭い翼を持つ鳥の魔物が、リディアたちの行く手を邪魔するように旋回しながら低い唸り声を上げた。

「うわっ、邪魔しないでよ!」
リディアは身を屈めながら叫んだが、鳥の魔物は攻撃的な姿勢を崩さない。すると、タフィーちゃんが体をぷるぷると震わせ、甘いチョコレート液を勢いよく噴射した。

「ナイス、タフィーちゃん!」
魔物はチョコレート液に絡め取られて翼が動かなくなり、その隙にメリーちゃんが毛を膨らませて突進。驚いた魔物は慌てて空へと逃げ去った。

「ふぅ、助かったね。ありがとう、二人とも!」
リディアは息を整えながら笑顔を浮かべ、絨毯を再び黄色い島へと向かわせた。

島に降り立った瞬間、リディアは足元に視線を落として驚いた。地面は柔らかな黄色で、ほんのり甘い香りが漂っている。それに加えて、少しべたついた感触が靴越しに伝わってきた。

「これ……地面がコムハニーでできてる! 蜂の巣の蜜蝋みたいだね!」
リディアは興味深げに地面を見つめ、そっと膝をついて指先で触れてみた。ほんのり温かく、触るたびに甘い香りが広がる。

周囲にはお花が咲く木が立ち並び、枝にはいくつもの蜂の巣がぶら下がっている。その巣からはトロトロと蜂蜜が垂れ落ち、足元には小さな水たまりのような蜂蜜の溜まりができていた。

「すごい……こんな島があるなんて!」
リディアは見上げながら感嘆の声を上げた。蜂蜜の香りに誘われるように、ミツバチたちが忙しそうに飛び交い、花々の間を行き来している。

その時、木のうろの中から何かが動いたのが目に入った。リディアが目を凝らすと、そこには丸みを帯びた黄色い毛玉のような存在が顔を覗かせていた。

「えっ……くまさん?」
リディアが声を漏らすと、その黄色いくまさんはのんびりと木のうろから這い出してきた。ふわふわの毛並みと、ぬいぐるみのような可愛らしい見た目に、リディアは思わず微笑んだ。

「こんにちは! あなたがこの島の住人なの?」
くまさんは首を傾げながらリディアを見上げた後、のんびりと「うー」と可愛い声を漏らした。そして、足元の蜂蜜を舐めると、満足げに座り込んだ。

「なんて可愛いんだろう……!」
リディアは思わずその場にしゃがみ込み、くまさんを観察し始めた。メリーちゃんも「メェ!」と興味津々にくまさんに近づき、タフィーちゃんもぷるぷると弾んで様子を伺っている。

「ここ、本当に夢みたいな島だね。くまさんも蜂蜜も全部素敵!」
リディアは辺りを見渡しながら、黄色い浮島での新たな冒険に胸を躍らせていた。
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