脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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はちみつくまさん

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黄色い浮島に降り立ったリディアたちは、マイペースなくまさんと共に、のどかな時間を過ごしていた。ミツバチたちが花の間を行き交い、甘い香りが島全体を包み込んでいる中、くまさんは相変わらずのんびりと蜂蜜を舐めている。

リディアはそんな様子を見て思いついたように言った。
「せっかくだから、この蜂蜜を持ち帰ろう! タフィーちゃんのチョコ作りにも使えるし、ポーションの材料にもなりそう!」

メリーちゃんが「メェ!」と賛成の声を上げ、タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と楽しげに弾んだ。リディアはメリーちゃんの綿菓子毛からいくつかの壺を取り出し、蜂蜜の滴る巣の下にそっと並べた。

「これでしばらく待てば、蜂蜜が溜まるはず!」
リディアは蜂蜜の壺を設置し終えると、島を後にして他の浮島を探索しに出かけた。

雲海を巡りながらいくつもの島を見て回ったリディアたちは、夕方になって再び蜂蜜の島に戻ってきた。

「蜂蜜、どれくらい溜まったかな?」
期待に胸を膨らませながら壺の方へ駆け寄ると、リディアは思わず足を止めた。そして、驚きと可笑しさが混じった声を上げた。

「えっ!? くまさん、どうしたの!?」

そこには、壺の中に頭を突っ込んだまま、くまさんがもがいている姿があった。壺は蜂蜜でいっぱいになっているらしく、くまさんはその甘い誘惑に耐えきれず頭を突っ込んだのだろう。しかし、壺から頭が抜けなくなり、もがきながら小さな「うー」という声を漏らしている。

「ちょ、ちょっと待ってて! 今、助けるから!」
リディアは急いでくまさんのそばに駆け寄り、壺をそっと掴んだ。

「メリーちゃん、手伝って!」
メリーちゃんがふわふわの毛を使って壺を押さえ、リディアが優しくくまさんの体を引っ張る。タフィーちゃんも、ぷるぷると揺れながら壺を支える役に回った。

「せーの! よいしょ!」
リディアが掛け声をかけると、くまさんの頭がスポンと壺から抜けた。くまさんはバランスを崩して転がったが、すぐに体を起こし、何事もなかったかのように蜂蜜を舐め始めた。

「ほんとマイペースだなぁ……」
リディアは呆れつつも微笑みながら、壺に残った蜂蜜を確認した。思った以上にたくさん溜まっており、これで十分持ち帰れそうだった。

「くまさん、蜂蜜はお裾分けするから、また会いに来てもいい?」
リディアが声をかけると、くまさんは小さく「うー」と応え、木のうろに戻って丸くなった。

「ほんと不思議な島だよね。でも、この蜂蜜があるだけでここは宝物みたいな場所だ!」
リディアたちは壺をしっかりとメリーちゃんのふわ毛にしまい、島を後にした。また来ることを約束して振り返ると、くまさんが木のうろから顔を出し、静かに見送ってくれていた。

「メェ!」
メリーちゃんの柔らかな鳴き声を合図に、リディアたちは秘密基地へと帰還した。ダンジョンの隠し通路を抜け、色鮮やかに整えられたリビングに戻ると、疲れが一気にほぐれるようだった。

「ただいまー! 今日の収穫、すごかったよね!」
リディアは笑顔で言いながら、メリーちゃんに声をかけた。すると、メリーちゃんは誇らしげにふわふわの綿菓子毛を揺らし、中から壺を次々と取り出して並べた。

「見て見て! 蜂蜜がこんなにたくさん!」
リディアは目を輝かせながら壺の中身を覗き込む。甘い香りが広がり、秘密基地の空気がさらに心地よく感じられた。

「これ、どうやって楽しもうかな? タフィーちゃん、チョコに使ってみる?」
タフィーちゃんは「ぷるぷるん!」と弾むように体を揺らし、壺のひとつを興味深げに眺めた。新たなチョコレートのアイデアが浮かんだのかもしれない。

「まずはそのまま食べてみようよ!」
リディアはスプーンを手に取り、蜂蜜を一口すくった。それをゆっくりと舐めると、濃厚な甘さとほのかな花の香りが口いっぱいに広がり、思わず目を閉じた。

「うん! やっぱり最高! こんな美味しい蜂蜜、初めてかも!」
リディアの感想に、メリーちゃんが「メェ!」と鳴き、満足そうに毛を揺らした。

次に、蜂蜜をスコーンやパンにかけて楽しむ準備を始めた。メリーちゃんが毛から焼き立てのスコーンを取り出し、リディアが蜂蜜をたっぷりとかける。タフィーちゃんはチョコレートと混ぜ合わせ、新作の試作に取り掛かっていた。

「蜂蜜チョコってどんな味になるんだろう? 絶対美味しいに違いないよね!」
リディアはタフィーちゃんを見守りながら、自分もスコーンを頬張った。

秘密基地のリビングは、蜂蜜の甘い香りと笑い声でいっぱいだった。疲れを癒しながら、リディアたちは次の冒険や計画を楽しげに語り合った。

「次はどの島に行こうか? まだまだたくさんの浮島が待ってるよね!」
リディアの言葉に、メリーちゃんは「メェ!」と元気よく鳴き、タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と弾んで賛同した。こうして、リディアたちの秘密基地では、新しい日常がまた一つ彩られていった。
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