脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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裸のメリーちゃん

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青空の下、街の外に広がる放牧地には、白い羊たちがのんびりと草を食む光景が広がっていた。リディアたちはその中を歩きながら、牧草の甘い香りと穏やかな風を楽しんでいた。

「ねえ、見て! あそこで羊の毛刈りをしてるよ!」
リディアが指さす先では、羊飼いが器用にバリカンを使い、羊のふわふわの毛を刈っている。白い毛がぽろぽろと地面に落ち、すっきりした羊が満足げに歩き去る様子に、リディアは目を輝かせていた。

「メリーちゃん、あれ見て! 毛を刈るとこんなにスッキリするんだね!」
「メェ!」
メリーちゃんは興味津々な様子で、ふわふわの綿菓子のような自分の毛をふるわせた。リディアが「刈ってみたらどうかな?」と軽く提案すると、メリーちゃんは躊躇するどころか楽しそうに鳴いて、羊飼いのところへと駆け寄った。

羊飼いはメリーちゃんのふわふわの毛を見て驚いたが、リディアのお願いを聞き入れて快く引き受けてくれた。
「こんなふわふわの毛は初めて見たよ。でも、大丈夫だ、しっかり綺麗にしてあげるからな。」
羊飼いが笑顔でそう言うと、メリーちゃんは「メェ!」と嬉しそうに鳴き、その場にちょこんと座り込んだ。

バリカンの音が響き、メリーちゃんの柔らかい綿菓子毛が丁寧に刈られていく。その毛はまるで雪のようにふわふわと舞い、リディアたちは目を丸くして見守った。

「すごい……本当に細かくて柔らかい毛なんだね。」
リディアがそう呟く横で、タフィーちゃんは「ぷるぷるん!」と弾みながら落ちていく毛を追いかけていた。

しばらくして毛刈りが終わると、そこには見たこともないほどほっそりとしたメリーちゃんが立っていた。刈られた後のすっきりした姿に、リディアは思わず驚きの声を上げる。

「わぁ……メリーちゃん、別の子みたい!」
「メェ……」
少し恥ずかしそうに鳴きながらも、メリーちゃんは軽やかに動き回り、身軽になった喜びを感じているようだった。

しかし、その直後――。
「ちょっと待って、メリーちゃん! 荷物が……!」
リディアが焦った声を上げる。ふわふわの毛がなくなったことで、いつもメリーちゃんの毛の中に収納していた冒険道具がすべて地面に散らばってしまったのだ。

「これって……ふわもこ毛がないと収納が使えないってこと?」
リディアはメリーちゃんの後ろを追いながら地面に落ちたポーションや小道具を拾い上げる。タフィーちゃんも「ぷるん!」と手伝うように跳ねている。

「これじゃあしばらく不便だね……でも、メリーちゃんがまたふわふわになるまでの辛抱だ!」
リディアは笑顔を浮かべて、メリーちゃんの頭を優しく撫でた。メリーちゃんは少し照れたように「メェ……」と小さく鳴きながらも、嬉しそうにリディアに体を寄せる。

荷物を抱えて放牧地を後にするリディアたち。冒険中の不便さを予感しつつも、しばらくはこのスリムなメリーちゃんを見守る日々が続くのだった。

放牧地から街へ戻る道すがら、リディアは片手にポーションやら小道具やらを抱え込み、もう片方で落ちそうになる袋を必死に支えていた。メリーちゃんのふわもこ毛がないだけで、これほど荷物を持ち歩くのが大変だとは――リディアは改めて気づかされていた。

「うーん、こうなったらリュックが必要だね……でも、せっかくだから可愛いのがいいな!」
リディアはそう言いながら、ふわふわの綿菓子のようだったメリーちゃんの毛を思い出した。

「そうだ、メリーちゃんの刈った毛を使ってリュックを作ったらどうかな? ピンクでふわふわ、絶対可愛いと思う!」
リディアがメリーちゃんに提案すると、メリーちゃんは「メェ!」と嬉しそうに鳴き、賛成の意を示した。タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と体を弾ませて賛成している。

「よし、決まりだね! 街の雑貨屋さんに頼みに行こう!」
リディアは気を取り直し、街の広場に向けて足を速めた。

雑貨屋さんの店内は、ハサミや糸、布地などが整然と並び、手仕事の得意な店主のセンスが光っている。入り口のベルを鳴らして店内に入ると、リディアは早速、カウンターにいた店主のおばあさんに声をかけた。

「こんにちは! 実はお願いがあって来たんですけど……これでリュックを作れますか?」
リディアはメリーちゃんの刈った毛が詰まった袋を取り出し、店主に見せた。

「ほほう、これはまた珍しい毛だねぇ。ふわふわで触り心地が良さそうだ。」
店主は袋の中から毛を少し取り出し、指先で感触を確かめた。「こんなに柔らかい毛なら、リュックどころか色々作れそうだよ。」

「ほんとですか! じゃあ、この毛を使って、背負いやすくてポケットがいっぱい付いたリュックを作ってほしいんです! 冒険に使うので、ちょっと丈夫だとなお嬉しいです!」
リディアは目を輝かせながら、希望を伝えた。

「なるほどね、冒険用のリュックかい。だったら裏地に丈夫な布を仕込んで、肩紐も強めにしておこうかねぇ。サイズはどれくらいがいいんだい?」
「えっと……このくらい!」
リディアは手で形を作りながら、自分のイメージを必死に伝える。店主はそれを見て、楽しそうに頷いた。

「わかったよ。可愛くて丈夫なリュックを作ってあげるよ。少し時間をくれるかい?」
「もちろんです! 楽しみにしてます!」

リディアたちはリュックが完成するのを心待ちにしながら、再び秘密基地へ戻った。ピンクのふわふわリュックを背負った自分を想像して、リディアはウキウキしている。

「ねえメリーちゃん、タフィーちゃん、これでまた冒険がもっと楽しくなるよね!」
「メェ!」
「ぷるぷるん!」

仲間たちの声に元気をもらいながら、リディアは新しいリュックの完成を楽しみにしていた。便利さと可愛さを兼ね備えたそのリュックは、これからの冒険に欠かせない大切な相棒になりそうだ。
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