大好きな学園の王子様のあとをつけていたら、捕獲されてしまいました。

ねむたん

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心配になった

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招待された理由を教えていただき安心した私は、思う存分、大興奮でブロマイドの束を受け取りました。ああ、早くお部屋に帰って、この美しいお写真たちを隅から隅まで眺めたい――そんな気持ちでいっぱいです。

ところが、その瞬間。

「夢見さん、探したよ。」

涼やかな声が、背後から降ってきました。目を細めた日下部様が、会長さんをじとりと見つめながら、落ち葉を踏む音を立ててこちらへ向かってきます。その威風堂々とした姿に思わず見惚れてしまいましたが、すぐに我に返ります。しまった――!
ブロマイドに夢中になっていて、警戒を怠ってしまったのです。不覚。

日下部様に、このいけない取引現場を押さえられてしまった私たち……これから叱られてしまうのでしょうか。それはそれで――なんて甘美な経験だろう、などとあらぬ覚悟を決めかけていると、ふいに肩を包み込むような温かい感触がありました。

「先輩方、彼女を呼び出して何をしていたんです?」

私の肩を抱き寄せた日下部様が、低く静かな声で先輩方に問いかけます。その鋭い視線に、先輩方は一瞬たじろぎました。幸い、ブロマイドはすべてカバンにしまった直後だったので、彼の目には「上級生に囲まれる下級生」の構図しか映らなかったようです。

私は先輩方をかばいたくて慌てて口を開きましたが――。

会長さんが日下部様の死角でそっと唇に指を当てました。小さな「しー」の仕草がとても可愛らしいです。

「布教しておりました。」

静寂を破るように告げられたその一言に、日下部様は驚きで目をまるくしました。私が見たことのない、あのブロマイドのどれにも写っていない、無防備で素直な表情――。

「え?」
「布教していたのですわ。」会長さんは淡々と続けます。「会員ナンバー212番、夢見さんは私たちの仲間です。ファンクラブの掟と特典を教えて差し上げていただけですわ。」
「……そうなの?」

日下部様は、少しばかり戸惑いを浮かべながら私を見下ろしました。その目に込められた穏やかな色合いに、私はつい何も言えず見とれてしまいます。

「ええ、そうですとも。」会長さんが微笑んで言い切ります。「ファンクラブの掟を守りつつ、日下部様の魅力を一緒に分かち合う素敵な仲間が増えて、私たちもとても嬉しいですのよ。」

どう受け取ればいいのか迷ったような表情で、日下部様がまたこちらの顔を伺います。その瞳に気圧されながらも、私はけんめいにこくこくと頷きました。

ファンクラブ活動の一環で集った、という説明は完全な嘘ではありません。それに、彼を傷つけることのないように――会長さんは見事にその場を収めてくださいました。

「忘れ物よ。」

柔らかい声でそう言いながら、会長さんは公式に本人了承のうえで撮影されたという弓道姿のブロマイドをそっと私の手に押し付けます。その行動には一瞬、目を丸くしてしまいましたが、すぐに微笑んだ会長さんは優雅に手を振りました。

「それでは、ごきげんよう。夢見さん、またね。」

会長さんはほかの参加者たちを引き連れ、庭園からさっと去っていきました。その後ろ姿を見送りながら、私は理解します。これはきっとカムフラージュです。素晴らしいフォローです。

「……本当にファンクラブの活動だったんだね。」

日下部様が、少しだけほっとしたように呟きます。その声に、私は曖昧に微笑み返すことしかできませんでした。

先ほど渡されたブロマイドをそっと見下ろすと、真剣な眼差しで弓を構える日下部様の姿が映っています。その凛々しさに目を奪われそうになりながらも、私はなんとか気を引き締めました。この場を無事に乗り切れたのは、会長さんのおかげです――感謝しかありません。

日下部様が少し不思議そうに私を見ている気配を感じつつ、私はそっとそのブロマイドを大切に胸に抱えました。
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