大好きな学園の王子様のあとをつけていたら、捕獲されてしまいました。

ねむたん

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まちぶせ

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「夢見様、このまま帰りましょう。」
「あ、ごめんなさい。教室に鞄を置いたままでしたわ。」
「あら、それならお付き合いします。」

紫藤様と連れ立ってクラスへ向かいました。教室をのぞくと、日下部様がひとり佇んでいました。しかも、手をついているのは私の机。そこには、置きっぱなしにしていた私の鞄があります。

日下部様はひとつため息をついて、手にしていた紙パックの飲み物を飲み干すと、空になったそれをくずかごへ放り込みました。その後、こちらには気付くことなく、反対側の扉から静かに教室を出て行かれました。

「なにをされていたのでしょう……。」

呆然と立ち尽くす私に、紫藤様がそっと声をかけますが、言葉を返すこともできません。彼の姿が完全に消えた後、私たちは教室へ足を踏み入れました。そして、自然と私の視線はくずかごへ吸い寄せられます。そこには――。

「トマトジュース……。」

紙パックに書かれた文字を見つめ、胸が高鳴ります。ファンクラブの共有プロフィールにも、日下部様のお好きなものは「トマトジュース」と記されていました。健康的で素敵な嗜好だと、以前から思っていましたが……。

「私、ビニール袋を持ち合わせていますわ。」

隣で私の様子を見ていた紫藤様が、小さく手を打つようにして鞄を探り始めました。その仕草を目にしながら、私はふと思いました。以前まではブロマイドや校内新聞のインタビュー記事に満足していたのに、近頃は日下部様にお会いできず、寂しいと思うことが増えたのです。それだけでなく――。

あのとき触れた日下部様の体温や大きな手の感触。それを知ってしまってから、心の奥底に眠っていた欲が募ってしまったのです。そんな私の目の前に、彼が飲み干したトマトジュースの紙パックが……。

「あ、ほら、ありましたわ。よろしかったらどうぞお使いになって。」

紫藤様が差し出してくれた袋を目にして、私はおそるおそる身をかがめました。意を決してくずかごへ手を伸ばし、その「ご神体」を丁寧に袋へ包みます。

その瞬間、ふと背後に視線を感じ、素早く教室の外へ駆け寄って確認しました。しかし、廊下には誰の姿もありません。

「夢見様、どうされたの?」
「いえ……なんでもありませんわ。」

胸にこみ上げる何かを抑え込みながら紫藤様に微笑むと、彼女は優雅に手を伸ばし、私の手を取って「帰りましょう」と言いました。

鞄の中には、袋に包まれた紙パックがそっと収まっています。少しちくちくする罪悪感と、不思議な昂揚感――。これが、日下部様の使用済みのものを入手した初めての瞬間なのです。

お部屋に帰ったら、グッズを飾っている棚の一番いい場所に、このご神体を加えよう。そう心に決めながら、私は紫藤様とともに教室を後にしました。
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