大好きな学園の王子様のあとをつけていたら、捕獲されてしまいました。

ねむたん

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せめてもの配慮

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イベントはつつがなく進行し、お昼の時間となりました。私は出番を終えた紫藤様と合流し、木陰でお弁当を広げます。

まだ息を弾ませている紫藤様にお茶を注いで手渡すと、彼女はぐーっと一息に飲み干し、小さく「ぷは」と音を立てました。その姿はいつも上品な彼女からは想像できないほど無防備で、体育祭ならではの非日常を感じます。

「お疲れさまです。騎馬戦、白熱していましたものね。」
「ええ、総合得点で勝っているチームに水を差すわけにはいきませんから。とってもがんばりましたわ。」

涼しげに微笑む彼女に感心しながら、私は先ほどの競技を思い返しました。

「最後の、馬から崩すところが意外でした。」

紫藤様は馬上で相手と組み合うようなそぶりを見せた後、とつぜん相手の馬の肩に手を掛け、あっという間に崩してしまったのです。そのあざやかな手腕に拍手が上がったほどです。

「力では勝ち目がないですから、少し頭を使いましたのよ。」

照れたように微笑む紫藤様が、とても輝いて見えました。そのとき、くぅ、と控えめなお腹の音が聞こえ、私はそっとサンドイッチを差し出しました。

「おいしい……。」
「よかった。せっかくなので料理長に教わってサンドイッチだけ作ってみたんです。」
「まあ、夢見様の手作り?大事に味わいますわ。もしかして、この中のお肉も作れるのですか?」
「ローストビーフですね。時間はかかりましたけど、そう難しいものではありません。」
「すごい……おいしい……。」

無心でサンドイッチを頬張る紫藤様の姿が微笑ましく、私は他のおかずも取り分けて差し上げました。こんなに美味しそうに食べていただけると、作った甲斐があったと嬉しくなります。

食事を終え、最後にデザートを取り出したところで実行委員の仕事の呼び出しが入りました。伝言を伝えに来た先輩にお礼を言い、私は立ち上がります。

「紫藤様、よかったら私の分も食べてくださいね。」
「いただきますわ。お仕事、がんばって。」

ひらりと手を振る紫藤様に背を向け、私は体育倉庫へ向かいました。その途中、日下部様がくずかごへ何かを捨てるところを発見してしまい、思わず足を止めてしまいます。ひと気のないことを確認して近づき、綺麗な袋に入った紙パックをこっそり回収しました。

近ごろ、日下部様は小さな袋を持ち歩き、ごみをそれに入れて捨てていらっしゃるようです。この配慮が、こっそり拾い歩く私にとっては非常にありがたい状況です。ただ、紙パックはかさばりますし、中に残った飲み物が傷む可能性もあるので、今回はストローだけをいただくことにしました。

「ひなー、そんなとこに突っ立って何してるんだ?早く来いよ。」

遠くからたけるくんの声が響き、私は慌てて返事をしました。

「あ、ごめんなさい!」

体育倉庫に入ると、たけるくんが待っていました。私たちは高跳び用のマットを運び出し、リレーの準備を整えます。

「高跳びの次はリレーか。」
「私も出番があります。」
「じゃあ急がないとな。でも、ひなって足遅くなかったか?」

そうです。私は走るのが苦手です。せめて足を引っ張らないようにと気合を入れましたが――結果的には、他のチームに抜かれてしまいました。やっぱり、走るのは苦手だと改めて実感します。

でも、体育祭の高揚感に包まれていると、その悔しささえも悪くないと思えるのです。
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