大好きな学園の王子様のあとをつけていたら、捕獲されてしまいました。

ねむたん

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なかなか会えない

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私は、日下部様の生活がより快適になるよう、そして何より日下部様の邪魔にならないよう、目につかない形でお仕事をすることを心掛けています。

まずは、日下部様が愛飲されるトマトジュースの常備。冷蔵庫にはいつでも最適な温度で楽しめるよう、数本をストックし、消費量に応じて補充します。ラベルが少しでも傷んでいるものは避けて、完璧な状態のものだけを揃えるのがポイントです。

さらに、学園での生活をサポートするため、私にはもう一つの強みがあります。それは、日下部様と同じ学園に通っていること。時間割を把握しているので、翌日の授業に必要な教科書やノートを整えたり、部活用のスポーツカバンを準備することもできます。これにより、日下部様が身支度に気を取られる時間を減らし、より有意義な時間を過ごしていただけるはずです。

「日下部様が快適に、そしてストレスなくお過ごしいただけるように。」

その一心で、私は目立たない場所からお手伝いを続けています。それが、私にできる唯一のささやかな貢献です。


隠密にお仕事を続けていたある日のこと。日下部様が風邪をひかれてしまいました。

最近、弓道部の強化練習が続いていると聞いていたので、遅いご帰宅が続いていたこともあり、無理をされていたのでしょう。体調を崩されるのも無理はありません。

「これは大変……!」

急いで冷蔵庫から冷えたスポーツドリンクを取り出し、必要なものを揃えます。お部屋をそっと覗くと、ベッドに横たわる日下部様の顔がほんのり赤くなっていて、苦しそうな表情が浮かんでいました。

私は静かにそばへ座り、額に手を当てます。熱い――明らかに高熱です。タオルを冷やし、そっと額に乗せ、様子を見守りました。

「日下部様、少しでも楽になりますように……。」

声を掛けることはできませんが、心の中で祈りながら、氷枕やスポーツドリンク、ゼリーを枕元に準備し、ベッド脇でかいがいしく看病します。

そのとき、日下部様がぼんやりと目を開けました。少し霞んだ瞳が、私を捉えます。

「やっと、顔がみれた……。」

低く、掠れた声が静かに響きました。

私は驚きとともに胸が詰まりました。目が合った瞬間、彼の言葉が信じられなくて、一瞬だけ時間が止まったように感じます。

「日下部様……?」

何かを言おうとしても、言葉がうまく出てきません。彼はまた目を閉じ、穏やかな表情を浮かべながら深い眠りへと戻っていきました。その寝顔が、少しだけ安堵の色を浮かべているように見えました。

「やっと顔が見れた」とは、いったいどういう意味だったのでしょうか――。

胸の奥で何かが温かく広がるのを感じながら、私はそっと濡れたタオルを交換しました。何かの勘違いかもしれません。でも、彼の言葉が心に深く残ってしまうのを止められませんでした。
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