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94.大団円
今日で俺達の担当は終わりだと宣言したルーカスは『いいか! メリッサとケニスも利用不可だからな』としつこく繰り返した。
(もっと早くミゲルの事故を調べてりゃ、メリッサを巻き込まずに済んだかもな⋯⋯この数ヶ月、生きた心地がしなかったぜ)
腕を組んで窓の外を見るルーカスの顔には疲れよりも後悔が滲んでいた。
その後、レオン王子殿下の快進撃に国内だけでなく近隣諸国までが大騒ぎになった。
毎日のように王都には号外が配られた。多い日は日に2回3回と配られる号外は『今回は××の情報だよ~!』と言う少年の掛け声と共に街中で売り捌かれ、貴族も平民もこぞって購入。
『教会寄りの新聞よりこっちの方がいいな』
『何より嘘がない』
教会寄りだったモーニング・グロー新聞社を筆頭に既存の新聞社の購買者数が激減していった。
号外の内容は捜査の進捗状況から妨害の詳細までが、微に入り細に入り実名入りで掲載されている。しかも、末尾にはネタ元としてレオン王子殿下のサインが入っているという念の入れよう。
メイルーン達の逮捕のきっかけとなった『デスゲーム』からはじまり、過去の犯罪も時系列で掲載されていった。
当初は隠蔽工作や妨害をしてきた者もいたが、名前入りで公表されると判明してからは激減。その代わりに、隠蔽され続けてきた犯罪の情報が続出していく。それは、罪が暴かれては隠蔽工作に走る者が出るという無限ループがはじまりになった。
メイルーンと愉快な仲間達の犯行だけでなく貴族や王族の罪も暴露されはじめると逮捕者続出で、国の機能が停止寸前となる有様。『満杯の牢と人気のない貴族街』の対比が笑い話になる程だった。
国中の教会と議員会館には民衆が詰めかけ、暴動やデモが起き騎士団が出動する騒ぎは勿論、王宮広場には長年の被害者やその家族がバリケードを張って、王宮への立ち入りを遮り座り込みを行い、終日音を鳴らし大声を上げ続ける。
号外に取り上げられた貴族の家だけでなく、教会や国の保護を受けて横暴な行為を繰り返していた商会が焼き討ちされる。
その度に騎士団や自警団が出張っていたが、沈静化するまで長い時間がかかったのは致し方ない事だったのだろう。
メイルーン司教を早々に切り捨てたサマネス枢機卿は、教会の宝物庫や金庫から金目の物を奪い夜の闇に紛れて逃走を図ったが、教会の隠し通路を出た時点で拘束された。内部分裂か、サマネス枢機卿が借金をしていた商会からのリークだったのかと噂されている。
教会内部の粛清は聖王国から赴任した枢機卿達が行い破門・禁錮に処したが、予想以上に多い不正の発覚に頭を悩ませている。
ワッツ公爵は嫡男ピーターの犯罪が公になる前に自殺。公爵家は取り潰しになり年齢や性別に関わらず3代まで連座、断頭台へ送られた。財産等は全て被害者に分配された。
代々『ワッツ公爵家の悪魔』の隠蔽に携わってきたランクル子爵領の執事も、同時に断頭台に並んだ。子爵領では新しく任命された司教が定期的に鎮魂祭を行っている。
モブ三人衆⋯⋯ チャールズ・ソーン、ジャック・マートン、ネイサン・グルーヴ⋯⋯の各家も爵位を剥奪と財産没収。家族共々断頭台へ。
あまりにも多い犯罪者で強制労働所は満杯、その中には勿論窶れ果てたローガン元司法長官やポンフリー団長の姿もあった。
国王の退位と同時に民主共和制国家への移行が発表された後、国王と王妃は蟄居先で病死。その他の王族は皆、財産等の権利を放棄して小さな所領を得て細々と暮らすことになった。
執行府の長官である首相は民主的に選出された議会から選出される議院内閣制が採用され、議会が首相を罷免することも可能である。
機能がほぼ停止していた国が他国に占領されず済んだのは運が良かったのか、レオン元王子の長年の根回しが功を奏したのかは不明だが、王政を廃止し十数年をかけて立て直した国ではレオン元王子の胸像がかつての王宮広場に建造された。
胸像のお披露目ではテープカットから逃げ回るレオン元王子が笑いを誘い、華やかなパレードで馬車に乗っていたのは等身大の絵画だったと言う。
『もう、マジで無理だから! ボロボロのヨレヨレすぎて人前になんて出られないから!』
これらの記事は全て、国内王手の新聞社モーニング・グローに辞表を叩きつけたマシュー・ホッグス記者の手によるもの。『くそっ、新聞社にいた頃よりハードワークじゃねえか!』とボヤきながら走り回っていたらしい。
因みに、ホッグス記者は騒ぎが落ち着きはじめた頃に、中堅の新聞社ペニー・メール社に入社し代表取締役となる。それから数年後には国内最大規模の新聞社にのしあがるのはまだ先の話。
国内王手だったモーニング・グロー社は勿論、倒産してペニー・メール社に吸収されている。
『昔の上司を使うとか、罰ゲームかよ!?』
ホッグスの叫び声が日々聞こえてくるのも街の風物詩の一つになっている。
ミゲルが乗った馬車の御者ヒューゴは強制労働所送り、妻のサリナも逃亡を幇助した罪で強制労働所に連行された。
サリナの両親⋯⋯カーターとエミリーは、孫のジェイミーとアイラを連れてコルマードへ戻り、以前と同じく畑を耕している。
老夫婦が亡くなった後、ジェイミーとアイラはモートン商会で働き幸せに暮らしたと言う。
ミゲルとサリナが強制労働所送りになる前⋯⋯。
『父ちゃんや母ちゃんの事は顔も覚えてないんだ。だから、俺達の親はじいちゃんとばあちゃん。頑張って罪を償ってねって⋯⋯それしか言えない』
ドーソン弁護士の予想通り、ハリーは保護観察処分となった。監察官にはフレッド・カーマイン団長が手を上げ、第ニ騎士団に入団。
『家族を守る為にワッツの下で耐え抜いた根性と、島での戦い方が気に入った。俺が鍛えてやるからな!』
騎士団一ガタイのでかい脳筋フレッドに、バンバンと背中を叩かれたハリーが吹っ飛んだのはご愛嬌。島で顔見知りになった団員達も多く、誠実で生真面目な性格で可愛がられているそう。
保護観察決定後に、ハリーはリリアナを引き取りたいとフレッドに申し出たが却下され、寮生活をしている。
『今の状況で同居したら共倒れになる。リリアナは兄ちゃんに依存せず自立する事を覚えんとな』
セオドアは薬物中毒専門の病院で治療を続けているが、いまだ回復の見込みが立たたない。見舞いにきたハリーの顔もわからないままで、ぼうっと外を眺めてばかりいる。
リリアナは仕事先では同僚や客と揉め事を起こしクビになるのを繰り返した。
『あたしはもう直ぐ王子様が迎えにきて貴族になるの! アンタ達とは違うんだからね』
離婚や夫からの暴力から逃げ出した女性専門の修道院へ入り、心のケアと自立を目指すことになった。
断頭台へ送られるはずのステファン・コークは⋯⋯多額の借金返済の為に、他国の女領主が抱えるハーレムへ売られた。嗜虐思考の女領主の元を出た後は断頭台が待っているが、本人には知らされておらず必死で女主人に尽くしている。
ステファンの愛人だったアマンダは娼館送り、母のイライザは強制労働所の飯場で飯炊と掃除。癇癪を起こしながら借金返済に勤しんでいる。
因みに、強制労働所で感動の(?)再会を果たしたステファンの父ロナルドとイライザがつかみ合いの喧嘩をはじめ、鞭打ちの刑が加算された。
『いや~、落ちるとこまで落ちたな~。クズが多すぎて⋯⋯この国やばくねえか? byルーカス』
(もっと早くミゲルの事故を調べてりゃ、メリッサを巻き込まずに済んだかもな⋯⋯この数ヶ月、生きた心地がしなかったぜ)
腕を組んで窓の外を見るルーカスの顔には疲れよりも後悔が滲んでいた。
その後、レオン王子殿下の快進撃に国内だけでなく近隣諸国までが大騒ぎになった。
毎日のように王都には号外が配られた。多い日は日に2回3回と配られる号外は『今回は××の情報だよ~!』と言う少年の掛け声と共に街中で売り捌かれ、貴族も平民もこぞって購入。
『教会寄りの新聞よりこっちの方がいいな』
『何より嘘がない』
教会寄りだったモーニング・グロー新聞社を筆頭に既存の新聞社の購買者数が激減していった。
号外の内容は捜査の進捗状況から妨害の詳細までが、微に入り細に入り実名入りで掲載されている。しかも、末尾にはネタ元としてレオン王子殿下のサインが入っているという念の入れよう。
メイルーン達の逮捕のきっかけとなった『デスゲーム』からはじまり、過去の犯罪も時系列で掲載されていった。
当初は隠蔽工作や妨害をしてきた者もいたが、名前入りで公表されると判明してからは激減。その代わりに、隠蔽され続けてきた犯罪の情報が続出していく。それは、罪が暴かれては隠蔽工作に走る者が出るという無限ループがはじまりになった。
メイルーンと愉快な仲間達の犯行だけでなく貴族や王族の罪も暴露されはじめると逮捕者続出で、国の機能が停止寸前となる有様。『満杯の牢と人気のない貴族街』の対比が笑い話になる程だった。
国中の教会と議員会館には民衆が詰めかけ、暴動やデモが起き騎士団が出動する騒ぎは勿論、王宮広場には長年の被害者やその家族がバリケードを張って、王宮への立ち入りを遮り座り込みを行い、終日音を鳴らし大声を上げ続ける。
号外に取り上げられた貴族の家だけでなく、教会や国の保護を受けて横暴な行為を繰り返していた商会が焼き討ちされる。
その度に騎士団や自警団が出張っていたが、沈静化するまで長い時間がかかったのは致し方ない事だったのだろう。
メイルーン司教を早々に切り捨てたサマネス枢機卿は、教会の宝物庫や金庫から金目の物を奪い夜の闇に紛れて逃走を図ったが、教会の隠し通路を出た時点で拘束された。内部分裂か、サマネス枢機卿が借金をしていた商会からのリークだったのかと噂されている。
教会内部の粛清は聖王国から赴任した枢機卿達が行い破門・禁錮に処したが、予想以上に多い不正の発覚に頭を悩ませている。
ワッツ公爵は嫡男ピーターの犯罪が公になる前に自殺。公爵家は取り潰しになり年齢や性別に関わらず3代まで連座、断頭台へ送られた。財産等は全て被害者に分配された。
代々『ワッツ公爵家の悪魔』の隠蔽に携わってきたランクル子爵領の執事も、同時に断頭台に並んだ。子爵領では新しく任命された司教が定期的に鎮魂祭を行っている。
モブ三人衆⋯⋯ チャールズ・ソーン、ジャック・マートン、ネイサン・グルーヴ⋯⋯の各家も爵位を剥奪と財産没収。家族共々断頭台へ。
あまりにも多い犯罪者で強制労働所は満杯、その中には勿論窶れ果てたローガン元司法長官やポンフリー団長の姿もあった。
国王の退位と同時に民主共和制国家への移行が発表された後、国王と王妃は蟄居先で病死。その他の王族は皆、財産等の権利を放棄して小さな所領を得て細々と暮らすことになった。
執行府の長官である首相は民主的に選出された議会から選出される議院内閣制が採用され、議会が首相を罷免することも可能である。
機能がほぼ停止していた国が他国に占領されず済んだのは運が良かったのか、レオン元王子の長年の根回しが功を奏したのかは不明だが、王政を廃止し十数年をかけて立て直した国ではレオン元王子の胸像がかつての王宮広場に建造された。
胸像のお披露目ではテープカットから逃げ回るレオン元王子が笑いを誘い、華やかなパレードで馬車に乗っていたのは等身大の絵画だったと言う。
『もう、マジで無理だから! ボロボロのヨレヨレすぎて人前になんて出られないから!』
これらの記事は全て、国内王手の新聞社モーニング・グローに辞表を叩きつけたマシュー・ホッグス記者の手によるもの。『くそっ、新聞社にいた頃よりハードワークじゃねえか!』とボヤきながら走り回っていたらしい。
因みに、ホッグス記者は騒ぎが落ち着きはじめた頃に、中堅の新聞社ペニー・メール社に入社し代表取締役となる。それから数年後には国内最大規模の新聞社にのしあがるのはまだ先の話。
国内王手だったモーニング・グロー社は勿論、倒産してペニー・メール社に吸収されている。
『昔の上司を使うとか、罰ゲームかよ!?』
ホッグスの叫び声が日々聞こえてくるのも街の風物詩の一つになっている。
ミゲルが乗った馬車の御者ヒューゴは強制労働所送り、妻のサリナも逃亡を幇助した罪で強制労働所に連行された。
サリナの両親⋯⋯カーターとエミリーは、孫のジェイミーとアイラを連れてコルマードへ戻り、以前と同じく畑を耕している。
老夫婦が亡くなった後、ジェイミーとアイラはモートン商会で働き幸せに暮らしたと言う。
ミゲルとサリナが強制労働所送りになる前⋯⋯。
『父ちゃんや母ちゃんの事は顔も覚えてないんだ。だから、俺達の親はじいちゃんとばあちゃん。頑張って罪を償ってねって⋯⋯それしか言えない』
ドーソン弁護士の予想通り、ハリーは保護観察処分となった。監察官にはフレッド・カーマイン団長が手を上げ、第ニ騎士団に入団。
『家族を守る為にワッツの下で耐え抜いた根性と、島での戦い方が気に入った。俺が鍛えてやるからな!』
騎士団一ガタイのでかい脳筋フレッドに、バンバンと背中を叩かれたハリーが吹っ飛んだのはご愛嬌。島で顔見知りになった団員達も多く、誠実で生真面目な性格で可愛がられているそう。
保護観察決定後に、ハリーはリリアナを引き取りたいとフレッドに申し出たが却下され、寮生活をしている。
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セオドアは薬物中毒専門の病院で治療を続けているが、いまだ回復の見込みが立たたない。見舞いにきたハリーの顔もわからないままで、ぼうっと外を眺めてばかりいる。
リリアナは仕事先では同僚や客と揉め事を起こしクビになるのを繰り返した。
『あたしはもう直ぐ王子様が迎えにきて貴族になるの! アンタ達とは違うんだからね』
離婚や夫からの暴力から逃げ出した女性専門の修道院へ入り、心のケアと自立を目指すことになった。
断頭台へ送られるはずのステファン・コークは⋯⋯多額の借金返済の為に、他国の女領主が抱えるハーレムへ売られた。嗜虐思考の女領主の元を出た後は断頭台が待っているが、本人には知らされておらず必死で女主人に尽くしている。
ステファンの愛人だったアマンダは娼館送り、母のイライザは強制労働所の飯場で飯炊と掃除。癇癪を起こしながら借金返済に勤しんでいる。
因みに、強制労働所で感動の(?)再会を果たしたステファンの父ロナルドとイライザがつかみ合いの喧嘩をはじめ、鞭打ちの刑が加算された。
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