【完結】結婚した途端記憶喪失を装いはじめた夫と離婚します

との

文字の大きさ
96 / 97

94.大団円

しおりを挟む
 今日で俺達の担当は終わりだと宣言したルーカスは『いいか! メリッサとケニスも利用不可だからな』としつこく繰り返した。

(もっと早くミゲルの事故を調べてりゃ、メリッサを巻き込まずに済んだかもな⋯⋯この数ヶ月、生きた心地がしなかったぜ)

 腕を組んで窓の外を見るルーカスの顔には疲れよりも後悔が滲んでいた。







 その後、レオン王子殿下の快進撃に国内だけでなく近隣諸国までが大騒ぎになった。

 毎日のように王都には号外が配られた。多い日は日に2回3回と配られる号外は『今回は××の情報だよ~!』と言う少年の掛け声と共に街中で売り捌かれ、貴族も平民もこぞって購入。

『教会寄りの新聞よりこっちの方がいいな』

『何より嘘がない』

 教会寄りだったモーニング・グロー新聞社を筆頭に既存の新聞社の購買者数が激減していった。

 号外の内容は捜査の進捗状況から妨害の詳細までが、微に入り細に入り実名入りで掲載されている。しかも、末尾にはネタ元としてレオン王子殿下のサインが入っているという念の入れよう。

 メイルーン達の逮捕のきっかけとなった『デスゲーム』からはじまり、過去の犯罪も時系列で掲載されていった。

 当初は隠蔽工作や妨害をしてきた者もいたが、名前入りで公表されると判明してからは激減。その代わりに、隠蔽され続けてきた犯罪の情報が続出していく。それは、罪が暴かれては隠蔽工作に走る者が出るという無限ループがはじまりになった。

 メイルーンと愉快な仲間達の犯行だけでなく貴族や王族の罪も暴露されはじめると逮捕者続出で、国の機能が停止寸前となる有様。『満杯の牢と人気のない貴族街』の対比が笑い話になる程だった。

 国中の教会と議員会館には民衆が詰めかけ、暴動やデモが起き騎士団が出動する騒ぎは勿論、王宮広場には長年の被害者やその家族がバリケードを張って、王宮への立ち入りを遮り座り込みを行い、終日音を鳴らし大声を上げ続ける。

 号外に取り上げられた貴族の家だけでなく、教会や国の保護を受けて横暴な行為を繰り返していた商会が焼き討ちされる。

 その度に騎士団や自警団が出張っていたが、沈静化するまで長い時間がかかったのは致し方ない事だったのだろう。



 メイルーン司教を早々に切り捨てたサマネス枢機卿は、教会の宝物庫や金庫から金目の物を奪い夜の闇に紛れて逃走を図ったが、教会の隠し通路を出た時点で拘束された。内部分裂か、サマネス枢機卿が借金をしていた商会からのリークだったのかと噂されている。

 教会内部の粛清は聖王国から赴任した枢機卿達が行い破門・禁錮に処したが、予想以上に多い不正の発覚に頭を悩ませている。


 ワッツ公爵は嫡男ピーターの犯罪が公になる前に自殺。公爵家は取り潰しになり年齢や性別に関わらず3代まで連座、断頭台へ送られた。財産等は全て被害者に分配された。

 代々『ワッツ公爵家の悪魔』の隠蔽に携わってきたランクル子爵領の執事も、同時に断頭台に並んだ。子爵領では新しく任命された司教が定期的に鎮魂祭を行っている。


 モブ三人衆⋯⋯ チャールズ・ソーン、ジャック・マートン、ネイサン・グルーヴ⋯⋯の各家も爵位を剥奪と財産没収。家族共々断頭台へ。

 あまりにも多い犯罪者で強制労働所は満杯、その中には勿論窶れ果てたローガン元司法長官やポンフリー団長の姿もあった。



 国王の退位と同時に民主共和制国家への移行が発表された後、国王と王妃は蟄居先で病死。その他の王族は皆、財産等の権利を放棄して小さな所領を得て細々と暮らすことになった。

 執行府の長官である首相は民主的に選出された議会から選出される議院内閣制が採用され、議会が首相を罷免することも可能である。



 機能がほぼ停止していた国が他国に占領されず済んだのは運が良かったのか、レオン元王子の長年の根回しが功を奏したのかは不明だが、王政を廃止し十数年をかけて立て直した国ではレオン元王子の胸像がかつての王宮広場に建造された。

 胸像のお披露目ではテープカットから逃げ回るレオン元王子が笑いを誘い、華やかなパレードで馬車に乗っていたのは等身大の絵画だったと言う。

『もう、マジで無理だから! ボロボロのヨレヨレすぎて人前になんて出られないから!』

 これらの記事は全て、国内王手の新聞社モーニング・グローに辞表を叩きつけたマシュー・ホッグス記者の手によるもの。『くそっ、新聞社にいた頃よりハードワークじゃねえか!』とボヤきながら走り回っていたらしい。

 因みに、ホッグス記者は騒ぎが落ち着きはじめた頃に、中堅の新聞社ペニー・メール社に入社し代表取締役となる。それから数年後には国内最大規模の新聞社にのしあがるのはまだ先の話。

 国内王手だったモーニング・グロー社は勿論、倒産してペニー・メール社に吸収されている。

『昔の上司を使うとか、罰ゲームかよ!?』

 ホッグスの叫び声が日々聞こえてくるのも街の風物詩の一つになっている。



 ミゲルが乗った馬車の御者ヒューゴは強制労働所送り、妻のサリナも逃亡を幇助した罪で強制労働所に連行された。
 
 サリナの両親⋯⋯カーターとエミリーは、孫のジェイミーとアイラを連れてコルマードへ戻り、以前と同じく畑を耕している。

 老夫婦が亡くなった後、ジェイミーとアイラはモートン商会で働き幸せに暮らしたと言う。

 ミゲルとサリナが強制労働所送りになる前⋯⋯。

『父ちゃんや母ちゃんの事は顔も覚えてないんだ。だから、俺達の親はじいちゃんとばあちゃん。頑張って罪を償ってねって⋯⋯それしか言えない』




 ドーソン弁護士の予想通り、ハリーは保護観察処分となった。監察官にはフレッド・カーマイン団長が手を上げ、第ニ騎士団に入団。

『家族を守る為にワッツの下で耐え抜いた根性と、島での戦い方が気に入った。俺が鍛えてやるからな!』

 騎士団一ガタイのでかい脳筋フレッドに、バンバンと背中を叩かれたハリーが吹っ飛んだのはご愛嬌。島で顔見知りになった団員達も多く、誠実で生真面目な性格で可愛がられているそう。

 保護観察決定後に、ハリーはリリアナを引き取りたいとフレッドに申し出たが却下され、寮生活をしている。

『今の状況で同居したら共倒れになる。リリアナは兄ちゃんに依存せず自立する事を覚えんとな』

 セオドアは薬物中毒専門の病院で治療を続けているが、いまだ回復の見込みが立たたない。見舞いにきたハリーの顔もわからないままで、ぼうっと外を眺めてばかりいる。

 リリアナは仕事先では同僚や客と揉め事を起こしクビになるのを繰り返した。

『あたしはもう直ぐ王子様が迎えにきて貴族になるの! アンタ達とは違うんだからね』

 離婚や夫からの暴力から逃げ出した女性専門の修道院へ入り、心のケアと自立を目指すことになった。




 断頭台へ送られるはずのステファン・コークは⋯⋯多額の借金返済の為に、他国の女領主が抱えるハーレムへ売られた。嗜虐思考の女領主の元を出た後は断頭台が待っているが、本人には知らされておらず必死で女主人に尽くしている。

 ステファンの愛人だったアマンダは娼館送り、母のイライザは強制労働所の飯場で飯炊と掃除。癇癪を起こしながら借金返済に勤しんでいる。

 因みに、強制労働所で感動の(?)再会を果たしたステファンの父ロナルドとイライザがつかみ合いの喧嘩をはじめ、鞭打ちの刑が加算された。
 




『いや~、落ちるとこまで落ちたな~。クズが多すぎて⋯⋯この国やばくねえか? byルーカス』

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

誤解は解きません。悪女で結構です。

砂礫レキ
恋愛
オルソン家の伯爵令嬢エリカ。彼女は亡き母がメイドだった為に異母姉ローズとその母によって長年虐げられていた。 二人から男好きの悪女の噂を流布され、それを真に受けた結婚相手に乱暴に扱われそうになる。 その瞬間エリカは前世の記憶を思い出した。そして今の自分が「一輪の花は氷を溶かす」という漫画のドアマットヒロインに転生していることに気付く。 漫画の内容は氷の公爵ケビン・アベニウスが政略結婚相手のエリカを悪女と思い込み冷遇するが、優しさに徐々に惹かれていくという長編ストーリーだ。 しかし記憶を取り戻した彼女は呟く。「そんな噂を鵜呑みにするアホ男なんてどうでもいいわ」 夫からの愛を求めない新生エリカは悪女と呼ばれようと自分らしく生きることを決意するのだった。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す

MIRICO
恋愛
オレリアは幼馴染に失恋したのを機に、薬学魔法士になるため、都の学院に通うことにした。 卒院の単位取得のために王宮の薬学研究所で働くことになったが、幼馴染が騎士として働いていた。しかも、幼馴染の恋人も侍女として王宮にいる。 二人が一緒にいるのを見るのはつらい。しかし、幼馴染はオレリアをやたら構ってくる。そのせいか、恋人同士を邪魔する嫌な女と噂された。その上、オレリアが案内した植物園で、相手の子が怪我をしてしまい、殺そうとしたまで言われてしまう。 私は何もしていないのに。 そんなオレリアを助けてくれたのは、ボサボサ頭と髭面の、薬学研究所の局長。実は王の甥で、第二継承権を持った、美丈夫で、女性たちから大人気と言われる人だった。 ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。 お返事ネタバレになりそうなので、申し訳ありませんが控えさせていただきます。 ちゃんと読んでおります。ありがとうございます。

処理中です...