14 / 30
14.ラーンードールーフー、貴様のせいかあ! え?わしも?
しおりを挟む
「はい、ほとんどと申しますか旦那様からは一通も届いておりません。代理の⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯様からは何度かお手紙をいただきました」
「アンジー・ケレイブか?」
チラッとケイン達の顔を伺ったセドリックが小さく頷いてから頭を下げた。
「どんな内容じゃった?」
アンジーの手紙によるとライルは各地を回り特産品の調査や新しい販路の開拓に忙しくまだ当分帰る予定はないと書かれていた。
「領地の差配は代官に任せてあり、会社の運営については⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯なので大丈夫。その為に⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯」
「はっきりと話さんか! 誰も怒りゃせん」
ランドルフの大きな声で腹を括ったセドリックが大きく息を吸って説明しはじめた。
「⋯⋯かい、会社の運営はローゼンタール家に任せてあるので大丈夫! その為に一時的に社長職を譲ってあげたのだから、ほんの数ヶ月くらいは真面目に給料分働いてもらう予定だと仰っておられたと書いてありました!」
「いやはや、本人の意見なのかケレイブ殿の意見なのか分からんが非常に興味深い話で⋯⋯デイビッドがあのようなことをしたり言ったりするのは当然の結果と言うことですなあ」
「やはりケレイブの女狐と再婚するつもりなのかもしれんな。それについては聞いておらんのか?」
「ハッキリしたことは何も仰いませんでした。この関係をローゼンタール家にはまだ知らせたくないからと仰ったのと、旦那様がお帰りになられるまでキャサリン様が不安にならないようデイビッド様とふたりでお世話をするように申しつけられただけでございます」
「なんとなんと⋯⋯デイビッドは世話をしすぎておるようじゃな」
「なんと! 大旦那様はそれもご存知でしたか。何度も注意させていただきましたが聞き入れていただけず⋯⋯旦那様がお戻りになられる前に助産婦を探すハメになりはしないかとハラハラし⋯⋯」
「ま、待て待て! つまりデイビッドはその娘とそう言う関係になっておると言うのじゃな!」
「ええ! ご存知なかったのですか!? では、先ほどのお話は⋯⋯あぁ、なんてこった! 散財の件だけだったのですね。デイビッド様は旦那様から当主代理に任命されたと仰って何ひとつお話を聞いてくださらないので、ローゼンタール家に請求を回す以外にも予算額を大幅に超えた散財をしておられるのです」
キャンストル伯爵家にはデイビッドの指示でキャサリンの部屋が準備され、床板から天井まで全面改装し高級家具がなどが揃えられている。
「それに合わせてデイビッド様のお部屋も改装されましたし、家具もキャサリン様のお見立てで一新されました。クローゼットに入りきらないキャサリン様のドレスや小物は衣装部屋に変更した客室に納められています」
「奴はバカなのか?」
「バカだからそこまでできるんじゃろうなあ。突出したバカ⋯⋯ある意味大物かもしれんな」
ランドルフの呟きを拾ったエマーソンが情け容赦なく断言した。
「ライルの元妻について何か聞いて⋯⋯はおらんじゃろうな」
「サリナ様の事でしょうか? 見習いでお屋敷に上がった頃にはまだいらっしゃいましたから少しなら存じております」
「浮気相手が誰なのかとか子供の話とかは噂になっておらんかったのか?」
「お相手の方は複数で貴族から平民まで色々だったとメイド達が言っておりました。あと、デイビッド様を置いていかれたのは酷すぎると」
元妻のサリナが出て行った後しばらくの間デイビッドは離れに移され、ザッカリーが離れで一緒に暮らすと言ってライルと喧嘩をしていたと聞いたランドルフが頭を抱えた。
「ザックとライルの不仲はそれが原因か」
「ザッカリー様がアーシェ様と結婚したかったからではないのですか?」
「まあ、それもあったかもしれんが⋯⋯その前から揉めておったと言う事じゃろうな」
「ちと尋ねるんじゃがのう⋯⋯ キャンストル家の借金について家で話は出ておらんかったのか?」
エマーソンが身を乗り出してセドリックに問いただした。
「キャンストル家には借入等はないと認識しております⋯⋯そう言えば古くからいる使用人の中には『長い間キャンストル家はローゼンタール家に多額の支援をしていた』と言う者がおりまして⋯⋯旦那様もそのように思っておられるようでしたので気になって古い帳簿を調べさせていただいたことがございます」
「なんでそんな間違った認識が⋯⋯」
「大旦那様が『ローゼンタールに金は送ったか?』とか『ローゼンタールに早く金を送ってやれ』と仰っておられたせいでは? 使用人達に間違いを正すと全員からそのように言い返されました」
「ラーンードールーフー、貴様のせいかあ! 長年のローゼンタール家の醜聞は貴様の無責任な言葉遣いのせいかあぁぁぁ!」
エマーソンがランドルフの頭を思いっきり叩いた。
「マジかぁ! これもワシのせいじゃとは思わなんだ」
「父上も人前で『早く金をよこせ』とか怪しげな言葉を吐いておられたと聞いていますからお互い様ですね。あれほど仲が良いと借金する時も遠慮しないのですなあと揶揄われました」
「わしが⋯⋯わしが噂を補強しとった?」
「はい、間違いないですねえ」
エマーソンを睨んでいたケインがリリベルと顔を見合わせて頷いた。
「おおよその見当はついたようなので女狐親子と親玉を誘き出しましょう。恐らく全体の台本を書いたのはケレイブ子爵か親女狐との合作のどちらかで、実際に舞台に上がったのが女狐親子」
「アンジー・ケレイブか?」
チラッとケイン達の顔を伺ったセドリックが小さく頷いてから頭を下げた。
「どんな内容じゃった?」
アンジーの手紙によるとライルは各地を回り特産品の調査や新しい販路の開拓に忙しくまだ当分帰る予定はないと書かれていた。
「領地の差配は代官に任せてあり、会社の運営については⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯なので大丈夫。その為に⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯」
「はっきりと話さんか! 誰も怒りゃせん」
ランドルフの大きな声で腹を括ったセドリックが大きく息を吸って説明しはじめた。
「⋯⋯かい、会社の運営はローゼンタール家に任せてあるので大丈夫! その為に一時的に社長職を譲ってあげたのだから、ほんの数ヶ月くらいは真面目に給料分働いてもらう予定だと仰っておられたと書いてありました!」
「いやはや、本人の意見なのかケレイブ殿の意見なのか分からんが非常に興味深い話で⋯⋯デイビッドがあのようなことをしたり言ったりするのは当然の結果と言うことですなあ」
「やはりケレイブの女狐と再婚するつもりなのかもしれんな。それについては聞いておらんのか?」
「ハッキリしたことは何も仰いませんでした。この関係をローゼンタール家にはまだ知らせたくないからと仰ったのと、旦那様がお帰りになられるまでキャサリン様が不安にならないようデイビッド様とふたりでお世話をするように申しつけられただけでございます」
「なんとなんと⋯⋯デイビッドは世話をしすぎておるようじゃな」
「なんと! 大旦那様はそれもご存知でしたか。何度も注意させていただきましたが聞き入れていただけず⋯⋯旦那様がお戻りになられる前に助産婦を探すハメになりはしないかとハラハラし⋯⋯」
「ま、待て待て! つまりデイビッドはその娘とそう言う関係になっておると言うのじゃな!」
「ええ! ご存知なかったのですか!? では、先ほどのお話は⋯⋯あぁ、なんてこった! 散財の件だけだったのですね。デイビッド様は旦那様から当主代理に任命されたと仰って何ひとつお話を聞いてくださらないので、ローゼンタール家に請求を回す以外にも予算額を大幅に超えた散財をしておられるのです」
キャンストル伯爵家にはデイビッドの指示でキャサリンの部屋が準備され、床板から天井まで全面改装し高級家具がなどが揃えられている。
「それに合わせてデイビッド様のお部屋も改装されましたし、家具もキャサリン様のお見立てで一新されました。クローゼットに入りきらないキャサリン様のドレスや小物は衣装部屋に変更した客室に納められています」
「奴はバカなのか?」
「バカだからそこまでできるんじゃろうなあ。突出したバカ⋯⋯ある意味大物かもしれんな」
ランドルフの呟きを拾ったエマーソンが情け容赦なく断言した。
「ライルの元妻について何か聞いて⋯⋯はおらんじゃろうな」
「サリナ様の事でしょうか? 見習いでお屋敷に上がった頃にはまだいらっしゃいましたから少しなら存じております」
「浮気相手が誰なのかとか子供の話とかは噂になっておらんかったのか?」
「お相手の方は複数で貴族から平民まで色々だったとメイド達が言っておりました。あと、デイビッド様を置いていかれたのは酷すぎると」
元妻のサリナが出て行った後しばらくの間デイビッドは離れに移され、ザッカリーが離れで一緒に暮らすと言ってライルと喧嘩をしていたと聞いたランドルフが頭を抱えた。
「ザックとライルの不仲はそれが原因か」
「ザッカリー様がアーシェ様と結婚したかったからではないのですか?」
「まあ、それもあったかもしれんが⋯⋯その前から揉めておったと言う事じゃろうな」
「ちと尋ねるんじゃがのう⋯⋯ キャンストル家の借金について家で話は出ておらんかったのか?」
エマーソンが身を乗り出してセドリックに問いただした。
「キャンストル家には借入等はないと認識しております⋯⋯そう言えば古くからいる使用人の中には『長い間キャンストル家はローゼンタール家に多額の支援をしていた』と言う者がおりまして⋯⋯旦那様もそのように思っておられるようでしたので気になって古い帳簿を調べさせていただいたことがございます」
「なんでそんな間違った認識が⋯⋯」
「大旦那様が『ローゼンタールに金は送ったか?』とか『ローゼンタールに早く金を送ってやれ』と仰っておられたせいでは? 使用人達に間違いを正すと全員からそのように言い返されました」
「ラーンードールーフー、貴様のせいかあ! 長年のローゼンタール家の醜聞は貴様の無責任な言葉遣いのせいかあぁぁぁ!」
エマーソンがランドルフの頭を思いっきり叩いた。
「マジかぁ! これもワシのせいじゃとは思わなんだ」
「父上も人前で『早く金をよこせ』とか怪しげな言葉を吐いておられたと聞いていますからお互い様ですね。あれほど仲が良いと借金する時も遠慮しないのですなあと揶揄われました」
「わしが⋯⋯わしが噂を補強しとった?」
「はい、間違いないですねえ」
エマーソンを睨んでいたケインがリリベルと顔を見合わせて頷いた。
「おおよその見当はついたようなので女狐親子と親玉を誘き出しましょう。恐らく全体の台本を書いたのはケレイブ子爵か親女狐との合作のどちらかで、実際に舞台に上がったのが女狐親子」
47
あなたにおすすめの小説
婚約破棄、ありがとうございます
奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。
【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。
山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。
姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。
そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
【完結】新たな恋愛をしたいそうで、婚約状態の幼馴染と組んだパーティーをクビの上、婚約破棄されました
よどら文鳥
恋愛
「ソフィアの魔法なんてもういらないわよ。離脱していただけないかしら?」
幼馴染で婚約者でもあるダルムと冒険者パーティーを組んでいたところにミーンとマインが加入した。
だが、彼女たちは私の魔法は不要だとクビにさせようとしてきた。
ダルムに助けを求めたが……。
「俺もいつかお前を解雇しようと思っていた」
どうやら彼は、両親同士で決めていた婚約よりも、同じパーティーのミーンとマインに夢中らしい。
更に、私の回復魔法はなくとも、ミーンの回復魔法があれば問題ないという。
だが、ミーンの魔法が使えるようになったのは、私が毎回魔力をミーンに与えているからである。
それが定番化したのでミーンも自分自身で発動できるようになったと思い込んでいるようだ。
ダルムとマインは魔法が使えないのでこのことを理解していない。
一方的にクビにされた上、婚約も勝手に破棄されたので、このパーティーがどうなろうと知りません。
一方、私は婚約者がいなくなったことで、新たな恋をしようかと思っていた。
──冒険者として活動しながら素敵な王子様を探したい。
だが、王子様を探そうとギルドへ行くと、地位的な王子様で尚且つ国の中では伝説の冒険者でもあるライムハルト第3王子殿下からのスカウトがあったのだ。
私は故郷を離れ、王都へと向かう。
そして、ここで人生が大きく変わる。
※当作品では、数字表記は漢数字ではなく半角入力(1234567890)で書いてます。
【完結】順序を守り過ぎる婚約者から、婚約破棄されました。〜幼馴染と先に婚約してたって……五歳のおままごとで誓った婚約も有効なんですか?〜
よどら文鳥
恋愛
「本当に申し訳ないんだが、私はやはり順序は守らなければいけないと思うんだ。婚約破棄してほしい」
いきなり婚約破棄を告げられました。
実は婚約者の幼馴染と昔、私よりも先に婚約をしていたそうです。
ただ、小さい頃に国外へ行ってしまったらしく、婚約も無くなってしまったのだとか。
しかし、最近になって幼馴染さんは婚約の約束を守るために(?)王都へ帰ってきたそうです。
私との婚約は政略的なもので、愛も特に芽生えませんでした。悔しさもなければ後悔もありません。
婚約者をこれで嫌いになったというわけではありませんから、今後の活躍と幸せを期待するとしましょうか。
しかし、後に先に婚約した内容を聞く機会があって、驚いてしまいました。
どうやら私の元婚約者は、五歳のときにおままごとで結婚を誓った約束を、しっかりと守ろうとしているようです。
【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件
よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます
「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」
旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。
彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。
しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。
フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。
だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。
私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。
さて……誰に相談したら良いだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる