【完結】チャンス到来! 返品不可だから義妹予定の方は最後までお世話宜しく

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18. 天高く、宇宙まで舞い上がる⋯⋯クズ勢揃い

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「会社の提携を知らせてこないなんてライルは何を考えてるのかしらねえ。役員会で話でも出てるのかしら」

「ライル殿は一気にカタをつけるおつもりのようですから知っておるのはライル殿と我が家の者くらいでしょうな」

「それをわざわざ話にこられたんですか?」

「ええ、その通り! 今日ローゼンタール卿⋯⋯ケイン殿がわしに会えたのは神の采配かもしれませんぞ? ケイン殿をわしが救って差し上げますからここからは大人同士、別室で話しましょうかのう」

 返事を待たずに腰をあげたケレイブ子爵だったがケインが動かないのを見て首を傾げた。

「お話があるならここで構いませんが? リリベルはあの会社の役員ですしアーシェも次期にそうなりますからね。会社の大幅な方向転換なら聞いておいた方がいいでしょう」

「ケイン殿が恥を⋯⋯まあ、いいでしょう。ライル殿は両社の提携と同時にケイン殿や夫人の解雇を言い渡す予定でしてなあ。その前にローゼンタール家の所有する株をわしが買い取って差し上げようと思っておりますのじゃよ。
いくらかは残したいと思われるなら相談に乗りますが⋯⋯ライル殿は会社を食い物にしてきたローゼンタールを徹底的に追い出すつもりのようですから『背任行為』だのと騒がれる前に手を引かれれば傷を最小限にして資産を残せますぞ」

「背任行為⋯⋯う~ん、身に覚えがないなあ。これでも清廉潔白に職務を果たしてきたつもりなんだけど」

 ケインが首を傾げて『だよね』とリリベルに同意を求めると、ケレイブ子爵がテーブルに覆い被さるように身を乗り出してリリベルに指を突きつけた。

「それそれ、それです! 長年夫人を役員に据えておられるでしょう? 仕事をしない夫人に高給を払い社内に専用の部屋まで準備しておるのは間違いなく『会社の利益の搾取』ですぞ。元々キャンストル伯爵家が支え続けてきた会社へ勝手な行動をとるローゼンタール家に対してかなりお怒りのようで⋯⋯問題が公になる前に身を引かれるのが賢明ですぞ」

「ちょっと不思議なんですが⋯⋯ 今までお会いした事さえないケレイブ子爵が何故当家の心配を? もうすぐライルの義父になられるのならライルの願いを叶えたいと思われるのが普通ではありませんか?」

「いやはや、今後は視野を広く持たれた方が良いですな。わしがこのように手間をかけて差し上げておるのはデイビッドの為に決まっておるではないですか。このままではデイビッドがローゼンタール伯爵家を継いだ時に苦労するのが目に見えておりますからのう」

 したり顔で何度も頷いたデイビッドがキャサリンと繋いでいる手はいつの間にか指を絡める恋人繋ぎになっていた。

「正直に申し上げて⋯⋯ローゼンタールが父親の代からキャンストル伯爵家に寄生してこられたのは社交界でも有名な話ですし、かなり困窮⋯⋯高位貴族としての体面を維持するのに苦労されておられるそうではありませんか」

「仮にそれが真実だったならデイビッドがローゼンタールと縁を結ばなければ良いだけでは? うちは一向に構いませんし」

「お父上が必死でキャンストル伯爵家との縁を繋いでこられたのに、なんという傲慢な考えをお持ちなのじゃ! 呆れ果てましたぞ、そのような考えだからのうのうと寄生してこれたのじゃな。
ローゼンタールの株を市場価格で買い取って差し上げる代わりに伯爵位をデイビッドに譲っていただきますぞ。何しろ現金を手に入れればケイン殿のような方は豪遊されるでしょうからな。その金はデイビッド達の将来の為にある!
ケイン殿と夫人はそれなりの金を持って早々に領地にでも引き篭もられるが良い。そうすれば犯罪者として牢に繋がれる事も社交界で後ろ指を刺されることもなく暮らせますぞ」

「デイビッドはローゼンタールと血の繋がりもないのにどうやって爵位を譲渡させるつもりですか? ローゼンタールには直系のアーシェがおります」

「流石にデイビッドもアーシェも準成人したのは分かっておられますな。で、学生であっても婚姻はできるからその際にケイン殿は爵位をデイビッドに譲ればよろしい。その後はわしが後見人として領地経営でも会社の経営でも教えてやるのでなんの問題もないというわけじゃ」

 幼い子に言って聞かせるように話を区切りながら説明したケレイブ子爵はどうだと言わんばかりに鼻を膨らませてふんぞり返った。

「つまり、ライル達は私達を犯罪者として告発し会社から不正に搾取したと考えている財産を差し出させる予定と言う事ですか。で、それを回避したいなら株をケレイブ子爵に売ってデイビッドに爵位を渡せと。
手に入れる為にアーシェを利用する⋯⋯爵位を手に入れたら用無しになったアーシェは離縁されるか修道院にでも入れますか? デイビッドは貧窮院に入れると言ったこともあったしなあ。
で、身綺麗になったところでそこのお嬢さんと結婚といった感じの台本ですかな。なんともゲスなストーリーを考えておられる」

 薄ら笑いを浮かべたケインが淡々と話を纏めるとケレイブ子爵の顔が怒りで赤くなった。

「犯罪者として牢に繋がれた挙句出所後は今まで以上の醜聞に塗れるのが良いとでも言うのかね? 大切なひとり娘は犯罪者の娘としてひとり惨めに暮らす事になるんですぞ。もしかしたら市井で生きることもできず娼館行きになるやもしれませんなあ。キャサリンと違ってその程度の見目では大して稼げますまい。明日の夕刻までお待ちしますがそれ以上は待てませんからな。さて、わしらは帰るとしよう。ケイン達はこの後話し合いをするじゃろうからな⋯⋯無駄な悪あがきでもやらんよりはマシかのう」

 キャサリンとデイビッドがケレイブ子爵に続いて立ち上がった。

「おじさん、よ~く考えた方がいいよ。もし素直に助けてくれって頭を下げるならそれなりの生活は保証してあげるし、アーシェもキャサリンのメイドにしてあげても良いからね」

「おじさま、決して悪い話ではありませんわ。もしよろしければ一緒に住んで今まで通りの生活を楽しんでいただいても構わないと思っていたりもしますの。夫人とアーシェは⋯⋯屋敷には色々な仕事がありますしね」

「え~! キャサリンったらおじさんだけ特別扱いするつもりかよ~。それ、浮気だからな」

「やだぁ、元伯爵の肩書きが役に立つこともあるかもでしょ? 義父としてデイビッドの役に立って貰って⋯⋯私とも仲良くしてくれたら楽しそうじゃない?」

「まあ、おじさんは社交界に知り合いは多そうだから真面目に働くならそれも良いか」

 キャサリンの腰を引き寄せ頬にキスをしたデイビッドがヒラヒラと振りかけた手が⋯⋯⋯⋯ケイン達の大笑いを聞いてピタリと止まった。

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