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スペンサー商会
4.ヴェンナ
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「商会長!」
ヴェンナの支店に着くと、事務員達が真っ青な顔で集まってきた。
ロバートは事務長の椅子に腰掛け踏ん反り返っているが、よく見ると少しばかり顔が引き攣っている。
ミリアーナの姿は見当たらない。
「これはこれはリディアじゃないか。久しぶりだね、ここには何をしにきたのかな?」
「お久しぶりですロバート様。
ここで何をされているのか存じませんが、お引き取りいただけますでしょうか」
「これからは私がここを、いや商会を管理運営する事になったのでね。
リディアこそ出て行ってもらおうか。ここに来られては迷惑だよ」
「どんな勘違いをされているのか存じませんが、ロバート様はここの運営に関わる資格はお持ちではありません。
勿論ミリアーナにもありませんわ」
「そんなはずはない。私はミリアーナの夫として商会に関わる権利を持っている」
リディアは商会設立に関わる資料をロバートの目の前に置いた。
「この商会は、ポーレット伯爵家とは契約上の繋がりしかありませんの。
伯爵家の地所と賃貸契約をしているだけですから。
その資料、よくお読みになってくださいませ」
リディアは、資料を読み耽るロバートを放置して事務員から話を聞いた。
ロバートは取引の遅延・事務処理の混乱だけでなく、商会の大口の取引先のいくつかから取引停止を言い渡されていた。
ミリアーナが壊したのは、商会の営業担当がムスリム商人と三ヶ月以上かけて交渉し漸く手に入れた、透明度が高く非常に珍しいタイプの琥珀を使ったネックレス。
その琥珀に傷がついていた。
納期は一ヶ月後。琥珀が直ぐに手に入っても間に合うかどうか分からない。
「申し訳ありません。
貴族の方に手を触れるわけにもいかず、返して頂こうとお声をかけ続けていたら床に投げつけてしまわれて」
まずはロバートをここから叩き出して、次にネックレスの問題に手をつけるしかない。
「ロバート様ご納得いただけましたか? 退席願います。
損害については調査の上正式にご連絡いたします」
「損害だと? なんで私が」
「商会はポーレット伯爵家とは関係ないと何度もお伝えしたはずです。
その上での暴挙、黙認するわけには参りません」
「ならば私はリディアと結婚してあげよう。
元々リディアが私の婚約者だったのだから、間違いを正せば良い」
「ミリアーナはどうなりますの?」
「勿論ポーレット伯爵家に帰れば良いだろ?」
「私と結婚しても商会は手にはありませんわ。
持参金に商会は入っておりませんもの」
「馬鹿な、リディアが商会長だと言うのなら結婚したら私の物になるはずだ」
リディアはもう一枚の書類をロバートに差し出した。
「以前ロバート様と婚約していた時に作成した書類ですわ。私の結婚と同時に商会長は私からセオ・ハーバートに代替わりします」
「リディア様!」
セオがびっくりして大声を上げた。
「それから当方は、返品・交換は受け付けておりませんの」
ヴェンナの支店に着くと、事務員達が真っ青な顔で集まってきた。
ロバートは事務長の椅子に腰掛け踏ん反り返っているが、よく見ると少しばかり顔が引き攣っている。
ミリアーナの姿は見当たらない。
「これはこれはリディアじゃないか。久しぶりだね、ここには何をしにきたのかな?」
「お久しぶりですロバート様。
ここで何をされているのか存じませんが、お引き取りいただけますでしょうか」
「これからは私がここを、いや商会を管理運営する事になったのでね。
リディアこそ出て行ってもらおうか。ここに来られては迷惑だよ」
「どんな勘違いをされているのか存じませんが、ロバート様はここの運営に関わる資格はお持ちではありません。
勿論ミリアーナにもありませんわ」
「そんなはずはない。私はミリアーナの夫として商会に関わる権利を持っている」
リディアは商会設立に関わる資料をロバートの目の前に置いた。
「この商会は、ポーレット伯爵家とは契約上の繋がりしかありませんの。
伯爵家の地所と賃貸契約をしているだけですから。
その資料、よくお読みになってくださいませ」
リディアは、資料を読み耽るロバートを放置して事務員から話を聞いた。
ロバートは取引の遅延・事務処理の混乱だけでなく、商会の大口の取引先のいくつかから取引停止を言い渡されていた。
ミリアーナが壊したのは、商会の営業担当がムスリム商人と三ヶ月以上かけて交渉し漸く手に入れた、透明度が高く非常に珍しいタイプの琥珀を使ったネックレス。
その琥珀に傷がついていた。
納期は一ヶ月後。琥珀が直ぐに手に入っても間に合うかどうか分からない。
「申し訳ありません。
貴族の方に手を触れるわけにもいかず、返して頂こうとお声をかけ続けていたら床に投げつけてしまわれて」
まずはロバートをここから叩き出して、次にネックレスの問題に手をつけるしかない。
「ロバート様ご納得いただけましたか? 退席願います。
損害については調査の上正式にご連絡いたします」
「損害だと? なんで私が」
「商会はポーレット伯爵家とは関係ないと何度もお伝えしたはずです。
その上での暴挙、黙認するわけには参りません」
「ならば私はリディアと結婚してあげよう。
元々リディアが私の婚約者だったのだから、間違いを正せば良い」
「ミリアーナはどうなりますの?」
「勿論ポーレット伯爵家に帰れば良いだろ?」
「私と結婚しても商会は手にはありませんわ。
持参金に商会は入っておりませんもの」
「馬鹿な、リディアが商会長だと言うのなら結婚したら私の物になるはずだ」
リディアはもう一枚の書類をロバートに差し出した。
「以前ロバート様と婚約していた時に作成した書類ですわ。私の結婚と同時に商会長は私からセオ・ハーバートに代替わりします」
「リディア様!」
セオがびっくりして大声を上げた。
「それから当方は、返品・交換は受け付けておりませんの」
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