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11.憔悴したタイラー⋯⋯頑張れ!
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「ふーん、お前は中々素直でいいな。ローゼン商会にもこんな真面な奴がいたとはな」
「で、ケータリングを⋯⋯ご希望とか?」
この一ヶ月、サラから特訓を受けたタイラーは短い言葉をゆっくりと話すよう心がけた。
『ゆっくりで大丈夫。タイラーは短い言葉で気持ちを伝えるのが上手なんだから、息をゆっくり吸って吐いてからきっぱり言えばいいの。見た目もいいから背を伸ばして堂々として、相手の意識を向けさせてから一言』
「そう、そのケータリングだ。珍しい食材を使った豪華な料理とケーキだな。勿論、給仕とかも全部込みでやってもらう」
「それは⋯⋯当店では⋯⋯出来かねます」
『言葉に詰まりそうになったら意味深な笑みを浮かべておけば、相手は思案してるとかって勝手に解釈するから。
それでも不安になったらライリーお得意の意味のわかんない自信満々の笑みとか小馬鹿にした笑みを真似しといて』
「出来んからこそやるんだよ。ボクス公爵家の為に新しい事をやれば仕事が増えるだろ? 仕事も利益も増える⋯⋯その為の出費でタダにしてもらうのもアリだな。
まあ、それ以外にも謝礼くらいは届けてもらうがな」
「お、断り致します」
いつの間にかカウンターのところにやって来ていたサラにイーサンが気付いて鼻の下を伸ばした。
「あの女、この間の⋯⋯え、えっと⋯⋯そうか、俺の提案を自分の手柄にするつもりか」
「バカバカしい⋯⋯僕達は外道な真似はしない」
タイラーが少し見下すように口角を上げて笑うとアリーシャが頬を染めた。
「かっこい~、アタシあなたみたいな人に結婚式の大切なお料理を任せたいわぁ。色々相談とかして⋯⋯時間をかけて、ねぇ」
「お断り致します。お帰り下さい」
身を乗り出して誘いかけるアリーシャに冷たい目を向けたタイラーを睨んだイーサンが検討はずれな文句を言い出した。
「おい、俺の女に色目なんか使いやがって! どう言うつもりだ!?」
「色目? 僕はそんなに悪趣味じゃない」
商会員達から『ぷふっ!』と笑い声が聞こえてきた。
「兎に角俺の言うことを聞け! 結婚式までにメニューを決めて⋯⋯公爵家だぞ!? そのくらいの融通をきかせるくらい出来るよな!」
(ギルティ3個目⋯⋯集まるの早~い)
「断る! 上から目線の貴族の指示なんかには従わない⋯⋯さっさと出ていけ!」
「おお~!」
「その通り!」
普段穏やかなタイラーの厳しい口調に商会員達の歓声が上がった。
「お、大人しく話をしてやってたら⋯⋯」
「無料のケータリング⋯⋯謝礼の強要⋯⋯公爵家の者が『ゆすりたかり』をするなんて⋯⋯ナッシュ、騎士団に連絡して下さい」
斜め後ろに立っていたナッシュにタイラーが声をかけると、ガバッと立ち上がったイーサンが捨て台詞を吐いた。
「覚えてろよ! こんな店潰してやるからな!!」
「ナッシュ、これって脅迫になりませんか?」
「間違い無くなりますね。高位貴族による恐喝罪は罪の重さに加えて社交界での評判に関わるでしょう。
ローゼン商会は平民の方から貴族の方々まで、多くの方にお取引いただいておりますから。その方達から見放されたとしたら⋯⋯今後のボクス公爵家のご苦労が忍ばれます」
「まあ、僕達には関係ないけどね」
「ぷふっ」
「タイラー様、すげえ!」
「くそっ! 覚えてろ!」
逃げ出しかけたイーサンはソファに座ったままタイラーを見つめて陶然としているアリーシャを見つけて腕を引っ張り上げた。
「おい、アリーシャさっさと来い!!」
「えー、イーサンもうちょっとお話ししようよぉ~。もっといっぱいお話ししたら仲良くなれるって。
貴方もそう思うでしょう? お名前なんだったっけ⋯⋯もう一度教えてくれるかしら⋯⋯」
「断る。さっさと帰って二人とも風呂に入ったほうがいい。香水臭くて耐えられない⋯⋯腐り切った心根から漂う悪臭ならどうにもならないけどね」
「な、なによ! あんたなんて大っ嫌い」
「良かった、同感だよ」
イーサンとアリーシャが事務所を出ていくと商会員達が指笛を吹いたり歓声を上げたりと大騒ぎしはじめた。
「タイラー様、やるじゃないですか」
笑顔を浮かべたナッシュがタイラーにハンカチを差し出した。イーサン達が帰った途端一気に吹き出した汗を拭いていたタイラーがサラに気付いて立ち上がった。
「サ、サラ⋯⋯どうだったかな、結構上手く出来たと思うんだけど?」
「凄くカッコよかった⋯⋯特に、『心根から漂う悪臭』は最高!」
「僕達エルフは匂いに敏感だから⋯⋯途中で気を失うかと思った」
「ねえ、気付いてる? さっきからちっとも吃ってないわよ」
「で、ケータリングを⋯⋯ご希望とか?」
この一ヶ月、サラから特訓を受けたタイラーは短い言葉をゆっくりと話すよう心がけた。
『ゆっくりで大丈夫。タイラーは短い言葉で気持ちを伝えるのが上手なんだから、息をゆっくり吸って吐いてからきっぱり言えばいいの。見た目もいいから背を伸ばして堂々として、相手の意識を向けさせてから一言』
「そう、そのケータリングだ。珍しい食材を使った豪華な料理とケーキだな。勿論、給仕とかも全部込みでやってもらう」
「それは⋯⋯当店では⋯⋯出来かねます」
『言葉に詰まりそうになったら意味深な笑みを浮かべておけば、相手は思案してるとかって勝手に解釈するから。
それでも不安になったらライリーお得意の意味のわかんない自信満々の笑みとか小馬鹿にした笑みを真似しといて』
「出来んからこそやるんだよ。ボクス公爵家の為に新しい事をやれば仕事が増えるだろ? 仕事も利益も増える⋯⋯その為の出費でタダにしてもらうのもアリだな。
まあ、それ以外にも謝礼くらいは届けてもらうがな」
「お、断り致します」
いつの間にかカウンターのところにやって来ていたサラにイーサンが気付いて鼻の下を伸ばした。
「あの女、この間の⋯⋯え、えっと⋯⋯そうか、俺の提案を自分の手柄にするつもりか」
「バカバカしい⋯⋯僕達は外道な真似はしない」
タイラーが少し見下すように口角を上げて笑うとアリーシャが頬を染めた。
「かっこい~、アタシあなたみたいな人に結婚式の大切なお料理を任せたいわぁ。色々相談とかして⋯⋯時間をかけて、ねぇ」
「お断り致します。お帰り下さい」
身を乗り出して誘いかけるアリーシャに冷たい目を向けたタイラーを睨んだイーサンが検討はずれな文句を言い出した。
「おい、俺の女に色目なんか使いやがって! どう言うつもりだ!?」
「色目? 僕はそんなに悪趣味じゃない」
商会員達から『ぷふっ!』と笑い声が聞こえてきた。
「兎に角俺の言うことを聞け! 結婚式までにメニューを決めて⋯⋯公爵家だぞ!? そのくらいの融通をきかせるくらい出来るよな!」
(ギルティ3個目⋯⋯集まるの早~い)
「断る! 上から目線の貴族の指示なんかには従わない⋯⋯さっさと出ていけ!」
「おお~!」
「その通り!」
普段穏やかなタイラーの厳しい口調に商会員達の歓声が上がった。
「お、大人しく話をしてやってたら⋯⋯」
「無料のケータリング⋯⋯謝礼の強要⋯⋯公爵家の者が『ゆすりたかり』をするなんて⋯⋯ナッシュ、騎士団に連絡して下さい」
斜め後ろに立っていたナッシュにタイラーが声をかけると、ガバッと立ち上がったイーサンが捨て台詞を吐いた。
「覚えてろよ! こんな店潰してやるからな!!」
「ナッシュ、これって脅迫になりませんか?」
「間違い無くなりますね。高位貴族による恐喝罪は罪の重さに加えて社交界での評判に関わるでしょう。
ローゼン商会は平民の方から貴族の方々まで、多くの方にお取引いただいておりますから。その方達から見放されたとしたら⋯⋯今後のボクス公爵家のご苦労が忍ばれます」
「まあ、僕達には関係ないけどね」
「ぷふっ」
「タイラー様、すげえ!」
「くそっ! 覚えてろ!」
逃げ出しかけたイーサンはソファに座ったままタイラーを見つめて陶然としているアリーシャを見つけて腕を引っ張り上げた。
「おい、アリーシャさっさと来い!!」
「えー、イーサンもうちょっとお話ししようよぉ~。もっといっぱいお話ししたら仲良くなれるって。
貴方もそう思うでしょう? お名前なんだったっけ⋯⋯もう一度教えてくれるかしら⋯⋯」
「断る。さっさと帰って二人とも風呂に入ったほうがいい。香水臭くて耐えられない⋯⋯腐り切った心根から漂う悪臭ならどうにもならないけどね」
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