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24.楽しかった初夜の報告と今更な発言
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リチャードの部屋から帰ってくるとシエナが険しい顔で手から血を流していた。
「シエナ、どうしたの!?」
「申し訳ありません、カップを割ってしまいました」
「それはいいの、何かあったんでしょう?」
「イーサンのクソ野郎がサラ様をお呼びで、居間におられるそうです」
サラを呼びに来たイーサンは相変わらずの傍若無人な態度だった。サラの顔など見たら父親の体調が益々悪くなると言い、持参金以外に何の役にも立たない年増だと笑った。
あまりに腹が立ったシエナは力を入れすぎてカップを割ってしまった。
「そんなに凄かったなんて。今回は手加減するつもりだけど、その次がイーサンの最後よ。
シエナが嫌な思いをした分も合わせてボコボコにしてやるわ」
サラはシエナとフィスト・バンプ⋯⋯握り拳を打ち合わせてから部屋を出た。
2階の南側にある居間に入るとソファの背にもたれ足を高く組んだイーサンが腕を組んでニヤリと笑った。
「ようやくお出ましになったか、父上の見舞いをして点数稼ぎでもしようとしてたのか?」
「いいえ、特にそんな事は考えておりませんわ」
「それより、少し心配していたんだが昨夜は楽しかったかな?」
「え? とても楽しく過ごしました」
意外なセリフを聞いて驚いたサラだったがシエナとの白熱したトランプ大会を思い出して笑顔を浮かべた。
「は! 負け惜しみか!? 初夜に一人で放っておかれたくせに楽しかっただと?」
「はい、美味しい料理をいただいて夜は⋯⋯ふふっ、とても楽しかったですわ」
「⋯⋯お、俺がどこにいたか気になってたくせに、よくそんな嘘がつけるな」
「まあ、嘘をつく必要がありましたの!? 知りませんでしたわ」
一人ぼっちで夜を過ごし落ち込んでいる筈のサラを甚振ってやろうと、張り切って帰ってきたイーサンは当然のように『楽しかった』と笑顔を浮かべるサラに益々腹が立った。
「ローゼン商会での不当な扱いはお前のせいだろう! だがな、この国にはあんなチンケな店よりもよっぽど融通のきく真面な店があるんだ。貴様のような奴を雇う店なんかすぐに潰れてしまうに決まってる! いや、その前に俺様が潰してやるからな」
「そう言えばローゼン商会に不埒で無能な輩が入り込んだと聞きましたの。世間の常識も知らず、ルールも守れないような方だったとか⋯⋯そのお話、ご存知でしたかしら?」
「はあ!? 巫山戯るな!」
「それとは別件だと思うのですけれど、モーガン侯爵家にあちこちから請求書が届いてるそうですの。荷物の届け先はボクス公爵家のタウンハウスか領地の別邸だそうです。
侯爵家から相談の手紙が届いたのですけれど、サインは特定のお2人のお名前だそうですからその方達に払っていただくよう返事をしておきましたわ」
「き、貴様のせいか!! ちゃんと払え、貴様なんかを貰ってやる手数料のようなもんだ、そのくらい『払わせて下さい』と頭を下げて俺様にお願いしろ!!」
立ち上がって真っ赤な顔で怒鳴るイーサンはサラに指を突きつけた。
「1週間以内に払ってこい!」
各店から来ている期限が1週間なのだろうと当たりをつけたサラはにっこりと笑顔を浮かべた。
「お断りいたします。婚姻前契約書で生活費は別会計だと決めましたもの。例え金銭の余裕があったとしても、わたくしには払う義務がありません。
持参金を使ってお支払いになられても構いませんけれど、契約違反があれば全額返金ですからお気をつけ下さいませ」
怒り狂うイーサンにもう一度笑顔を向けたサラはゆっくり会釈して踵を返した。
「おい! 貴様とは永遠に寝屋を共にすることはない。貴様のような誰からも見向きもされないような女なんかとは『白い結婚』だ!!」
チラッと振り返ると鼻息を荒くしたイーサンがドヤ顔で仁王立ちしていた。
「ふふっ、今更仰るなんて⋯⋯笑いが止まらなくなりそうですわ」
シエナに合図をして悠々と部屋を出たサラの後ろでイーサンの怒鳴り声が響いた。
「くそお!! 覚えてろよお!!」
部屋に戻ったサラとシエナは顔を見合わせて大爆笑した。お腹を抑えてしゃがみ込んで笑うシエナと、ソファに横になって笑うサラの2人の目には涙が浮かんでいる。
「もー、予想通りの発言すぎて超ウケる⋯⋯あー、お腹が⋯⋯笑いすぎてお腹が痛い」
「予想以上の『ざまぁ』で、もう最高でした。サラ様に一生ついていこうと心に決めました! 前も思ってたけど、再認識です~」
「やだ、あんなのはまだ『ざまぁ』なんかじゃないわよ? 本番はこの次だもの」
「⋯⋯マジですか!? ああ、もう待ちきれなくて尻尾も耳もウズウズしますぅ」
「シエナ、どうしたの!?」
「申し訳ありません、カップを割ってしまいました」
「それはいいの、何かあったんでしょう?」
「イーサンのクソ野郎がサラ様をお呼びで、居間におられるそうです」
サラを呼びに来たイーサンは相変わらずの傍若無人な態度だった。サラの顔など見たら父親の体調が益々悪くなると言い、持参金以外に何の役にも立たない年増だと笑った。
あまりに腹が立ったシエナは力を入れすぎてカップを割ってしまった。
「そんなに凄かったなんて。今回は手加減するつもりだけど、その次がイーサンの最後よ。
シエナが嫌な思いをした分も合わせてボコボコにしてやるわ」
サラはシエナとフィスト・バンプ⋯⋯握り拳を打ち合わせてから部屋を出た。
2階の南側にある居間に入るとソファの背にもたれ足を高く組んだイーサンが腕を組んでニヤリと笑った。
「ようやくお出ましになったか、父上の見舞いをして点数稼ぎでもしようとしてたのか?」
「いいえ、特にそんな事は考えておりませんわ」
「それより、少し心配していたんだが昨夜は楽しかったかな?」
「え? とても楽しく過ごしました」
意外なセリフを聞いて驚いたサラだったがシエナとの白熱したトランプ大会を思い出して笑顔を浮かべた。
「は! 負け惜しみか!? 初夜に一人で放っておかれたくせに楽しかっただと?」
「はい、美味しい料理をいただいて夜は⋯⋯ふふっ、とても楽しかったですわ」
「⋯⋯お、俺がどこにいたか気になってたくせに、よくそんな嘘がつけるな」
「まあ、嘘をつく必要がありましたの!? 知りませんでしたわ」
一人ぼっちで夜を過ごし落ち込んでいる筈のサラを甚振ってやろうと、張り切って帰ってきたイーサンは当然のように『楽しかった』と笑顔を浮かべるサラに益々腹が立った。
「ローゼン商会での不当な扱いはお前のせいだろう! だがな、この国にはあんなチンケな店よりもよっぽど融通のきく真面な店があるんだ。貴様のような奴を雇う店なんかすぐに潰れてしまうに決まってる! いや、その前に俺様が潰してやるからな」
「そう言えばローゼン商会に不埒で無能な輩が入り込んだと聞きましたの。世間の常識も知らず、ルールも守れないような方だったとか⋯⋯そのお話、ご存知でしたかしら?」
「はあ!? 巫山戯るな!」
「それとは別件だと思うのですけれど、モーガン侯爵家にあちこちから請求書が届いてるそうですの。荷物の届け先はボクス公爵家のタウンハウスか領地の別邸だそうです。
侯爵家から相談の手紙が届いたのですけれど、サインは特定のお2人のお名前だそうですからその方達に払っていただくよう返事をしておきましたわ」
「き、貴様のせいか!! ちゃんと払え、貴様なんかを貰ってやる手数料のようなもんだ、そのくらい『払わせて下さい』と頭を下げて俺様にお願いしろ!!」
立ち上がって真っ赤な顔で怒鳴るイーサンはサラに指を突きつけた。
「1週間以内に払ってこい!」
各店から来ている期限が1週間なのだろうと当たりをつけたサラはにっこりと笑顔を浮かべた。
「お断りいたします。婚姻前契約書で生活費は別会計だと決めましたもの。例え金銭の余裕があったとしても、わたくしには払う義務がありません。
持参金を使ってお支払いになられても構いませんけれど、契約違反があれば全額返金ですからお気をつけ下さいませ」
怒り狂うイーサンにもう一度笑顔を向けたサラはゆっくり会釈して踵を返した。
「おい! 貴様とは永遠に寝屋を共にすることはない。貴様のような誰からも見向きもされないような女なんかとは『白い結婚』だ!!」
チラッと振り返ると鼻息を荒くしたイーサンがドヤ顔で仁王立ちしていた。
「ふふっ、今更仰るなんて⋯⋯笑いが止まらなくなりそうですわ」
シエナに合図をして悠々と部屋を出たサラの後ろでイーサンの怒鳴り声が響いた。
「くそお!! 覚えてろよお!!」
部屋に戻ったサラとシエナは顔を見合わせて大爆笑した。お腹を抑えてしゃがみ込んで笑うシエナと、ソファに横になって笑うサラの2人の目には涙が浮かんでいる。
「もー、予想通りの発言すぎて超ウケる⋯⋯あー、お腹が⋯⋯笑いすぎてお腹が痛い」
「予想以上の『ざまぁ』で、もう最高でした。サラ様に一生ついていこうと心に決めました! 前も思ってたけど、再認識です~」
「やだ、あんなのはまだ『ざまぁ』なんかじゃないわよ? 本番はこの次だもの」
「⋯⋯マジですか!? ああ、もう待ちきれなくて尻尾も耳もウズウズしますぅ」
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