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アルスター侯爵家
120.ジョージの活躍に期待
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「ふーん、ここが奴の? しけた場所だこと」
宿の前に立った2人は腕を組んで顔を見合わせて口元を歪めた。
「あたしなら絶対無理。こーんなジョボくれた宿、1日だって耐えられない」
「ああ、役立たずには似合いだろう? たいして役にも立てず部屋に篭ってるだけだしな」
侯爵が女性の肩を抱きニヤリと笑った。
「初めからレヴィアタンと組めばばこんな手間は要らなかったのにな。役立たずの話に惑わされるとは私の目は曇っていたらしい」
侯爵がふんっと鼻を鳴らし宿を睨みつけた。
「ふふっ、アイツはただの役立たず。あのお方もご存じよ」
「レヴィ・・君のお陰で手に入れた種馬を是非見て欲しい。あれ程の馬は見たことがないはず」
侯爵が両手を広げて屋敷の方を振り返った。
「美味しそうなら・・食べちゃうかも。ふふっ」
屋敷に向かって歩き出した2人を宿の中から黒いマントの男が睨んでいた。
「本当にこれで上手くいくのでしょうか?」
ペリが幻術をかけた侯爵が肩を怒らせ大きな歩幅で歩いている。左手に持っているステッキは陞爵の際にダーハル王国の国王から下賜された家宝の一つ。繊細な馬の彫刻が彫られたグリップにはダイヤモンドが埋め込まれている。
侯爵の隣には紫のグラデーションに染めたデイドレスを纏った背の高い女性が並んでいる。髪を高く結い上げアメジストのついた髪飾りをつけ繊細なレースのショールとこの辺りでは誰も見かけたことのない開閉式の日傘をさしている。
「うーん、宿の中からフェニックスが覗いて会話を聞いていたのは確かだけど、上手く釣られてくれるか・・それにしても背が高いと景色ってこんなに違って見えるのね。ルカさんとか背の高い人が羨ましい。今度変身薬作ってみようかなあ」
ジョージと同じくペリに幻術をかけてもらったミリアはご機嫌で緊張した様子はかけらもない。
「不信がられているとか、ミリア様は不安ではないのですか?」
「私は大丈夫。聞いた話ではレヴィアタンはしょっちゅう姿を変えていて共通してるのは背の高い女性でとってもオシャレって事だけだもの」
高慢で勝気なレヴィアタンはいつでも自身の好きなように振る舞い性に奔放。好みのタイプは筋肉質な逞しい男らしい。
人間の姿に変化した時は長身で颯爽とした印象の美しい女性になる。流行の服装を好み美に関する情報収集に余念がない。
戦いを避ける愚鈍な夫ベヒモスを鬱陶しく思いながらも常に気にかけている節がある。
「侯爵様にはお会いしたことがないんだけどあんな・・感じの方なの?」
「左様ですね。お相手やご気分にもよりますがあのような方で合っていると思います」
ジョージが真似た侯爵は傲慢・尊大ないかにもな貴族。馬鹿にしたように口元を歪め権力を誇示するような大きな身振り。
「お若い頃はもっと違った振る舞いをされる方でしたがいつしかあのようになられて・・」
最近の侯爵の言動を真似るのは執事として最も近くにいるジョージが最適だった。宿から出てこないベルフェゴールを誘き出す為には侯爵の裏切りをフェニックスに信じさせベルフェゴールに報告させるしかない。
屋敷の手前まで来た頃に、黒マントの男が早足で追いかけて来たのに気が付いた。
「あっ、良い感じかも。ジョージさんの演技上手く行ったみたいです」
「えっ?」
「黒マントがついて来てるから前向いてて下さい。尊大な侯爵が好色なレヴィアタンと歩いてるんですからね、ここで疑われたら作戦失敗ですから」
レヴィアタンが侯爵の腕にしなだれかかりヒソヒソと話しながら屋敷の脇を通り過ぎて裏の馬場に向けて歩き続けた。
「くそ、ジョージの野郎。デレデレしやがって。後で覚えとけよ」
窓から覗いていたルカが帰って来た二人を睨んで呟いた。
「ヤキモチか? みっともない」
「はあ? ちげえし。おっ、ついて来てるじゃねえか。あんな尊大なオヤジが歩くなんておかしいと思わないのかねえ。しかもあんなマント着てちゃバレバレだし」
裏に回った2人を追いかけて黒マントが敷地内に忍び込んできた。ニヤつくヘルメースを放置したルカが少し離れた場所から黒マントを追いかけた。
(さて、人間のお手並み拝見だな)
厩舎に入って行った2人を黒マントがこっそりと覗いていた。厩舎の中は薄暗く黒マントには2人の話し声しか聞こえない。
「レヴィアタン殿、馬はこの一番奥にいる。決して危害を加えないでもらいたい。馬と言うのはとても繊細な生き物でね、悪魔の気配で怯えてしまうかもしれん」
中にいるのが侯爵とレヴィアタンだと確信した黒マントは変身を解き鮮やかなオレンジ色に輝くフェニックスになった。
「キュイーン」
甲高く鳴き窓をぶち破ろうとしたその瞬間、ルカが結界でフェニックスを閉じ込めた。
厩舎のドアが勢いよく開きワンドを手にしたミリアが飛び出して来た。
「結界ごと移動できる?」
「やってみる! だが結界を維持しながら移動させるのはほんのちょっとしか出来ねえ」
「うん。ジョージさん!」
ジョージが厩舎の中から車輪の付いた台座に乗せた大きな木箱を持ち出して来た。
ミリアはワンドをフェニックスに向けたまま左手に結界の護符を準備しルカに合わせて少しずつ移動していった。ルカの額には汗が流れ木箱がフェニックスのすぐ下に運ばれるのをじっと待っていた。
「タイミング合わせるぞ」
「うん」
宿の前に立った2人は腕を組んで顔を見合わせて口元を歪めた。
「あたしなら絶対無理。こーんなジョボくれた宿、1日だって耐えられない」
「ああ、役立たずには似合いだろう? たいして役にも立てず部屋に篭ってるだけだしな」
侯爵が女性の肩を抱きニヤリと笑った。
「初めからレヴィアタンと組めばばこんな手間は要らなかったのにな。役立たずの話に惑わされるとは私の目は曇っていたらしい」
侯爵がふんっと鼻を鳴らし宿を睨みつけた。
「ふふっ、アイツはただの役立たず。あのお方もご存じよ」
「レヴィ・・君のお陰で手に入れた種馬を是非見て欲しい。あれ程の馬は見たことがないはず」
侯爵が両手を広げて屋敷の方を振り返った。
「美味しそうなら・・食べちゃうかも。ふふっ」
屋敷に向かって歩き出した2人を宿の中から黒いマントの男が睨んでいた。
「本当にこれで上手くいくのでしょうか?」
ペリが幻術をかけた侯爵が肩を怒らせ大きな歩幅で歩いている。左手に持っているステッキは陞爵の際にダーハル王国の国王から下賜された家宝の一つ。繊細な馬の彫刻が彫られたグリップにはダイヤモンドが埋め込まれている。
侯爵の隣には紫のグラデーションに染めたデイドレスを纏った背の高い女性が並んでいる。髪を高く結い上げアメジストのついた髪飾りをつけ繊細なレースのショールとこの辺りでは誰も見かけたことのない開閉式の日傘をさしている。
「うーん、宿の中からフェニックスが覗いて会話を聞いていたのは確かだけど、上手く釣られてくれるか・・それにしても背が高いと景色ってこんなに違って見えるのね。ルカさんとか背の高い人が羨ましい。今度変身薬作ってみようかなあ」
ジョージと同じくペリに幻術をかけてもらったミリアはご機嫌で緊張した様子はかけらもない。
「不信がられているとか、ミリア様は不安ではないのですか?」
「私は大丈夫。聞いた話ではレヴィアタンはしょっちゅう姿を変えていて共通してるのは背の高い女性でとってもオシャレって事だけだもの」
高慢で勝気なレヴィアタンはいつでも自身の好きなように振る舞い性に奔放。好みのタイプは筋肉質な逞しい男らしい。
人間の姿に変化した時は長身で颯爽とした印象の美しい女性になる。流行の服装を好み美に関する情報収集に余念がない。
戦いを避ける愚鈍な夫ベヒモスを鬱陶しく思いながらも常に気にかけている節がある。
「侯爵様にはお会いしたことがないんだけどあんな・・感じの方なの?」
「左様ですね。お相手やご気分にもよりますがあのような方で合っていると思います」
ジョージが真似た侯爵は傲慢・尊大ないかにもな貴族。馬鹿にしたように口元を歪め権力を誇示するような大きな身振り。
「お若い頃はもっと違った振る舞いをされる方でしたがいつしかあのようになられて・・」
最近の侯爵の言動を真似るのは執事として最も近くにいるジョージが最適だった。宿から出てこないベルフェゴールを誘き出す為には侯爵の裏切りをフェニックスに信じさせベルフェゴールに報告させるしかない。
屋敷の手前まで来た頃に、黒マントの男が早足で追いかけて来たのに気が付いた。
「あっ、良い感じかも。ジョージさんの演技上手く行ったみたいです」
「えっ?」
「黒マントがついて来てるから前向いてて下さい。尊大な侯爵が好色なレヴィアタンと歩いてるんですからね、ここで疑われたら作戦失敗ですから」
レヴィアタンが侯爵の腕にしなだれかかりヒソヒソと話しながら屋敷の脇を通り過ぎて裏の馬場に向けて歩き続けた。
「くそ、ジョージの野郎。デレデレしやがって。後で覚えとけよ」
窓から覗いていたルカが帰って来た二人を睨んで呟いた。
「ヤキモチか? みっともない」
「はあ? ちげえし。おっ、ついて来てるじゃねえか。あんな尊大なオヤジが歩くなんておかしいと思わないのかねえ。しかもあんなマント着てちゃバレバレだし」
裏に回った2人を追いかけて黒マントが敷地内に忍び込んできた。ニヤつくヘルメースを放置したルカが少し離れた場所から黒マントを追いかけた。
(さて、人間のお手並み拝見だな)
厩舎に入って行った2人を黒マントがこっそりと覗いていた。厩舎の中は薄暗く黒マントには2人の話し声しか聞こえない。
「レヴィアタン殿、馬はこの一番奥にいる。決して危害を加えないでもらいたい。馬と言うのはとても繊細な生き物でね、悪魔の気配で怯えてしまうかもしれん」
中にいるのが侯爵とレヴィアタンだと確信した黒マントは変身を解き鮮やかなオレンジ色に輝くフェニックスになった。
「キュイーン」
甲高く鳴き窓をぶち破ろうとしたその瞬間、ルカが結界でフェニックスを閉じ込めた。
厩舎のドアが勢いよく開きワンドを手にしたミリアが飛び出して来た。
「結界ごと移動できる?」
「やってみる! だが結界を維持しながら移動させるのはほんのちょっとしか出来ねえ」
「うん。ジョージさん!」
ジョージが厩舎の中から車輪の付いた台座に乗せた大きな木箱を持ち出して来た。
ミリアはワンドをフェニックスに向けたまま左手に結界の護符を準備しルカに合わせて少しずつ移動していった。ルカの額には汗が流れ木箱がフェニックスのすぐ下に運ばれるのをじっと待っていた。
「タイミング合わせるぞ」
「うん」
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