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9.キャンベル伯爵の言い分
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シエナは裁判所からの呼び出しに従い、法廷に準備された席に一人で着席していた。
相対する側にはジョージ・キャンベル伯爵と、恐らくはオスカー・キャンベルと思われる若者が座り、シエナを蔑んだ目で見ている。
伯爵の反対隣には、使い込んだ鞄を机の上に置いた中年男性も座っている。
傍聴席には15人程度の人が座っており、その中にはクロエとルカの姿も見えた。
「えーっ、今回の離婚裁判は双方から離婚の申し立てがなされております。
まず、オスカー・キャンベルからの離婚理由は貴賤結婚であると言う事。次にシエナ・ウォーカー・キャンベル、こちらは白い結婚による離婚の申し立て。双方それぞれ離婚理由として認められるだけの条件は揃っておるようです。
では、判決を「お待ちください、判事殿!」」
「貴殿は?」
「オスカー・キャンベルの父君、ジョージ・キャンベル伯爵様の弁護士をしておりますギルバート・スミスと申します。この離婚にあたり⋯⋯オスカー・キャンベル様はシエナ・ウォーカーに対し、慰謝料並びに弁償金の請求を致します」
「その理由を話していただけますかな?」
「元々この結婚は、シエナ・ウォーカーの亡くなった父親サイラス・ウォーカーがキャンベル伯爵様の好意に付け込みねじ込んできたもの。その所為でオスカー様は、12年もの間平民に縛り付けられ不遇の時を過ごされました。
よって、慰謝料を請求いたします」
「弁償金というのは?」
「判事殿もご存知の通り、キャンベル伯爵様のウォーカー商会は紳士の方々のコートやウエストコートなどを商っておられます。
ウォーカー商会は仕立ての良さに加えて、刺繍などの装飾の美しさから多くの顧客の方々にご愛顧頂いておりますが、シエナ・ウォーカーは刺繍デザイナーの存在を隠匿し、不正に利益を搾取しております。
刺繍デザイナーは、今後のウォーカー商会経営にとって非常に重要な人材であり、故意に隠匿する所業はキャンベル伯爵家の利益を大きく損ない、商会存続の危機とも成りうべき重大な犯罪行為と言えるでしょう」
弁護士が滔々と演説したが、判事は別の部分に注目した。
「ほう、ではこのままだとウォーカー商会の商品に、あの見事な刺繍はなくなるのですかな?」
傍聴席でルカがクロエに小声で囁いた。
「あの判事殿もうちの顧客の一人だからな」
「それよか、キャンベル伯爵の商会だの、シエナのお父さんのゴリ押しだのって⋯⋯超ムカつくんだけど」
弁護士がまた話し始めた。
「判事殿の仰る通りでございます。このままではデザイナーのいないウォーカー商会は、今までのような商品をお客様に提供できなくなってしまうのです」
「ふむ、それは困りましたな。実は私自身もウォーカー商会と懇意にしておりましてな」
「そこで提案がございます。シエナ・ウォーカーがデザイナーの所在を明らかにするならば、心優しいキャンベル伯爵様は今までの不正を不問にし、弁償金の請求は行わないと申されております」
シエナが立ち上がり、判事に向けにっこりと微笑んだ。
「判事様におかれましては、当商会をご愛顧頂き誠にありがとうございます。
キャンベル伯爵様からの申し立てがこれで全てという事であれば、次はこちらから反論させていただきますが如何でしょうか?」
「馬鹿馬鹿しい、愚かで下賤な平民の話など聞くだけ無駄! 判事殿の貴重なお時間をお前如きのために使うなどあり得んわ」
「では、キャンベル伯爵様の答弁は、以上ということで宜しいですかな?」
「まさか、判事殿はこんな平民の話を聞かれると言うのか!?」
「双方の言い分を聞くからこその法廷ですからなあ」
次回、プレーリードッグの反撃。
相対する側にはジョージ・キャンベル伯爵と、恐らくはオスカー・キャンベルと思われる若者が座り、シエナを蔑んだ目で見ている。
伯爵の反対隣には、使い込んだ鞄を机の上に置いた中年男性も座っている。
傍聴席には15人程度の人が座っており、その中にはクロエとルカの姿も見えた。
「えーっ、今回の離婚裁判は双方から離婚の申し立てがなされております。
まず、オスカー・キャンベルからの離婚理由は貴賤結婚であると言う事。次にシエナ・ウォーカー・キャンベル、こちらは白い結婚による離婚の申し立て。双方それぞれ離婚理由として認められるだけの条件は揃っておるようです。
では、判決を「お待ちください、判事殿!」」
「貴殿は?」
「オスカー・キャンベルの父君、ジョージ・キャンベル伯爵様の弁護士をしておりますギルバート・スミスと申します。この離婚にあたり⋯⋯オスカー・キャンベル様はシエナ・ウォーカーに対し、慰謝料並びに弁償金の請求を致します」
「その理由を話していただけますかな?」
「元々この結婚は、シエナ・ウォーカーの亡くなった父親サイラス・ウォーカーがキャンベル伯爵様の好意に付け込みねじ込んできたもの。その所為でオスカー様は、12年もの間平民に縛り付けられ不遇の時を過ごされました。
よって、慰謝料を請求いたします」
「弁償金というのは?」
「判事殿もご存知の通り、キャンベル伯爵様のウォーカー商会は紳士の方々のコートやウエストコートなどを商っておられます。
ウォーカー商会は仕立ての良さに加えて、刺繍などの装飾の美しさから多くの顧客の方々にご愛顧頂いておりますが、シエナ・ウォーカーは刺繍デザイナーの存在を隠匿し、不正に利益を搾取しております。
刺繍デザイナーは、今後のウォーカー商会経営にとって非常に重要な人材であり、故意に隠匿する所業はキャンベル伯爵家の利益を大きく損ない、商会存続の危機とも成りうべき重大な犯罪行為と言えるでしょう」
弁護士が滔々と演説したが、判事は別の部分に注目した。
「ほう、ではこのままだとウォーカー商会の商品に、あの見事な刺繍はなくなるのですかな?」
傍聴席でルカがクロエに小声で囁いた。
「あの判事殿もうちの顧客の一人だからな」
「それよか、キャンベル伯爵の商会だの、シエナのお父さんのゴリ押しだのって⋯⋯超ムカつくんだけど」
弁護士がまた話し始めた。
「判事殿の仰る通りでございます。このままではデザイナーのいないウォーカー商会は、今までのような商品をお客様に提供できなくなってしまうのです」
「ふむ、それは困りましたな。実は私自身もウォーカー商会と懇意にしておりましてな」
「そこで提案がございます。シエナ・ウォーカーがデザイナーの所在を明らかにするならば、心優しいキャンベル伯爵様は今までの不正を不問にし、弁償金の請求は行わないと申されております」
シエナが立ち上がり、判事に向けにっこりと微笑んだ。
「判事様におかれましては、当商会をご愛顧頂き誠にありがとうございます。
キャンベル伯爵様からの申し立てがこれで全てという事であれば、次はこちらから反論させていただきますが如何でしょうか?」
「馬鹿馬鹿しい、愚かで下賤な平民の話など聞くだけ無駄! 判事殿の貴重なお時間をお前如きのために使うなどあり得んわ」
「では、キャンベル伯爵様の答弁は、以上ということで宜しいですかな?」
「まさか、判事殿はこんな平民の話を聞かれると言うのか!?」
「双方の言い分を聞くからこその法廷ですからなあ」
次回、プレーリードッグの反撃。
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