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10.トマスの密談
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「仕掛けてくるとしたら、そろそろだと思います」
「アナベルの偽物がいると言う噂は聞いていたんだが、まさかこんな事になっていたなんて、吃驚しすぎて何と言ったらいいのか」
「本当に申し訳ありません」
トマスは頭を下げ、
「他にアナベルを任せられる人がいなくて」
「私を思い出してくれて嬉しいよ。もう一年以上会ってなかったからね、陶石だけの繋がりになってしまったと思っていたんだ」
「自由になる時間が全然なくて、ご挨拶にもいけず」
「新しい事を試しているって言っていたね」
「はい、今度是非お待ちします」
「うん、トマスの作品は見るだけでも感動するからね」
「お礼に一つくれとは仰らないんですか?」
グランビー子爵は苦笑いして、
「そう言う駆け引きは苦手なんだ。性に合わない。
それに私が持っていては、宝の持ち腐れになってしまうよ」
「もうじき、アナベルは独身に戻ります。ラッピングして送りつけたら迷惑ですか?」
「えっ、や・・あの、そういうことは。
わっわあ」
今まで冷静な態度を崩さなかったグランビー子爵が真っ赤な顔になり、カップを落とし掛けた。
その頃アナベルは、カーテンの隙間から外を覗いていた。
(絶対増えてる。何をするつもりかしら)
ここ数日アナベルとトマスの家の周りを、意味もなく通り過ぎる男達が増えているのだ。
授爵したての頃、ハイエナ達に周りを囲まれ続けたアナベルとトマスは周りの気配に敏感になっており、何気ないフリを装っている男達が横目で様子を窺っているのが手にとる様に分かった。
ストマック辺境伯の謁見は3日後で、辺境伯夫妻は既に王都のタウンハウスに到着している。
トマスが知人から聞いてきた話では、訪問客が引きも切らずタウンハウスを訪れているが、夫人は誰とも会わないで部屋に篭っているらしい。
アナベルは一切外出をせず家に閉じ籠り、仕事も休まされている。
外にいる男達が強硬手段に出た時、手元に作品があったらアナベルが逃げ遅れるからと言うのがトマスの考えだ。
(あの人達のせいで、どんどん仕事に遅れが出ちゃうわ)
アナベルが奥の部屋でデッサンをしていると、トマスの声が聞こえてきた。
「アナベル、ちょっと来てくれないか」
「お帰りなさい。
まあ、グランビー子爵様お久しぶりでございます。
ご無沙汰しており申し訳ありません」
「元気にしてたかい? と言っても何だか大変そうだね」
「兄さんったら、子爵様にお話したの?
ご不快な話をお耳に入れるなんて」
「随分と周りが物騒になってきたから、今回も助けていただこうと思ってね」
「駄目よ、前回といいご迷惑ばかり」
「気にしないでくれないか、と言うより声を掛けてもらって喜んでいるんだ」
にっこり笑いながら話すグランビー子爵の後ろには、従者とメイドらしき女性が付き従っていた。
「アナベルの偽物がいると言う噂は聞いていたんだが、まさかこんな事になっていたなんて、吃驚しすぎて何と言ったらいいのか」
「本当に申し訳ありません」
トマスは頭を下げ、
「他にアナベルを任せられる人がいなくて」
「私を思い出してくれて嬉しいよ。もう一年以上会ってなかったからね、陶石だけの繋がりになってしまったと思っていたんだ」
「自由になる時間が全然なくて、ご挨拶にもいけず」
「新しい事を試しているって言っていたね」
「はい、今度是非お待ちします」
「うん、トマスの作品は見るだけでも感動するからね」
「お礼に一つくれとは仰らないんですか?」
グランビー子爵は苦笑いして、
「そう言う駆け引きは苦手なんだ。性に合わない。
それに私が持っていては、宝の持ち腐れになってしまうよ」
「もうじき、アナベルは独身に戻ります。ラッピングして送りつけたら迷惑ですか?」
「えっ、や・・あの、そういうことは。
わっわあ」
今まで冷静な態度を崩さなかったグランビー子爵が真っ赤な顔になり、カップを落とし掛けた。
その頃アナベルは、カーテンの隙間から外を覗いていた。
(絶対増えてる。何をするつもりかしら)
ここ数日アナベルとトマスの家の周りを、意味もなく通り過ぎる男達が増えているのだ。
授爵したての頃、ハイエナ達に周りを囲まれ続けたアナベルとトマスは周りの気配に敏感になっており、何気ないフリを装っている男達が横目で様子を窺っているのが手にとる様に分かった。
ストマック辺境伯の謁見は3日後で、辺境伯夫妻は既に王都のタウンハウスに到着している。
トマスが知人から聞いてきた話では、訪問客が引きも切らずタウンハウスを訪れているが、夫人は誰とも会わないで部屋に篭っているらしい。
アナベルは一切外出をせず家に閉じ籠り、仕事も休まされている。
外にいる男達が強硬手段に出た時、手元に作品があったらアナベルが逃げ遅れるからと言うのがトマスの考えだ。
(あの人達のせいで、どんどん仕事に遅れが出ちゃうわ)
アナベルが奥の部屋でデッサンをしていると、トマスの声が聞こえてきた。
「アナベル、ちょっと来てくれないか」
「お帰りなさい。
まあ、グランビー子爵様お久しぶりでございます。
ご無沙汰しており申し訳ありません」
「元気にしてたかい? と言っても何だか大変そうだね」
「兄さんったら、子爵様にお話したの?
ご不快な話をお耳に入れるなんて」
「随分と周りが物騒になってきたから、今回も助けていただこうと思ってね」
「駄目よ、前回といいご迷惑ばかり」
「気にしないでくれないか、と言うより声を掛けてもらって喜んでいるんだ」
にっこり笑いながら話すグランビー子爵の後ろには、従者とメイドらしき女性が付き従っていた。
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