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巡回聖女ガラテア3

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「魔女からもらった、このケダモノの体……
ガラテア、お前さんみてぇな美人を踏みにじって犯すのに最高だぁ!ぐへぇぐへぇ」

 人ならざる異形の姿となった男。その身体から生えた二股の蛇がガラテアの身体を締め付ける。

「俺の蛇が疼いて仕方ねぇんだ……
お前が修行の末に得た魔力がたっぷりつまった聖女の肉体……
今のお前は羽化したての一番柔らかな時期の蝶だ!たまんねぇ!
聖槍の力が身体に馴染む前にやっちまわないとなあ、聖女様!」

 男は長い舌でガラテアの美しい顔を舐める。

「離れろっ……ケダモノ!」

「……いいねぇ、その目……ガラテアさんよぅ、最高にいい女だな、
さすが高級娼婦の娘だ……いや、母親以上じゃないか……この白くて柔らかな肌、ブロンドの髪……ひひっ、たまんねぇぜ」

 男はガラテアのブロンドの髪をかきあげた。

「……魔性には人の秘めたる獣性を刺激し、惑わせる力がある
人間の場合はよう、女より男のほうが獣性が強く、男より女のほうが魔性をもっている割合が高いのさ、んでよう、ときどき美人なのに男から性的な目で見られない奴がいる……魔性をもっていない奴さ
俺はお前が魔性をもたない人間だと思い込んでいた……
でも、ガラテア、お前さん、こんな魔性を隠してたんだなぁ……
娼婦だった母親のようになりたくない……その一心で魔性を隠していたのかなぁ?
聖槍には理想と欲望を体現する力がある、その綺麗な体……男を誘惑したいっていうお前の欲望そのものだぜぇ!!ウヒャヒャァ!」

 男は彼女の身体を更に強く締め付ける。白く柔らかな肌に蛇の鱗がくいこんでいく。

「うっ、ぐっ、あああああっ」

「いい悲鳴をあげるじゃないか……興奮しちまうよ、ガラテア
お前を犯して……じっくり、楽しんで
女神の魔力を取り込んでやるよ
蛇がいきりたっちまうよう……へへへ」

 男の鼻息がガラテアの美しいブロンドの髪を揺るがせた。

「怯える女の汗のにおい……いいねぇ、いいねぇ!
……ん?ああ?」

 男の背中にアンリの一撃が入った、異形の姿に変異した男の体の一部が凍り付く。

「ちっ、丁度今いいとこなのによぉ」

 男は振り向きざまに鋭い爪でアンリの顔をめがけ薙ぐ。
 その一撃を回避するアンリ。

「おいガラテア!平気か!?」
 アンリはガラテアへ呼びかける。

「足止めも出来ねぇとは……使えねぇ女だ」

 怪物に変異した男はアンリに減速術式で手足を凍らされ、倒れこんだアマゾネスを一瞥する。

「……いや、こういう使い方もあるなぁ」

 一本の蛇をガラテアから解き、倒れこんだアマゾネスの傭兵の方へと向けた。
男の蛇が手足が凍りついて身動きがとれない女の顔を舐める。

「……さて」

「いやっぁ!やめて!助けて!」

 ……アマゾネスの傭兵の顔が恐怖に歪む。

「使えねぇお前が悪いのさ」

 男の身体から生えた大蛇の顎が大きく開き、倒れた女を飲み込んでいく。

 アンリは男の蛇の腹部に拳を叩き込む。

「おっと、やるじゃねぇか……」

「くそ、大して凍り付かないか……」

 ……異形の姿に変異した男はガラテアの肩に鋭い牙を突き立てる。
彼女の白く柔らかな肌を男の牙が貫き、彼女の肩から赤い血が流れ落ちる
美しい体が赤く染まっていく。

「ぐ、うっああああ」

 ガラテアは悲鳴をあげながらも結界を展開し、自身の身体を締め付ける鎖と蛇を払いのけた。

「神聖結界か、やるじゃないか、ガラテア、大した魔力だ……だが」

 蛇に飲み込まれたアマゾネスの傭兵の肉体が男の身体へと取り込まれていく……

「ふう、吸収完了だ……おっ来たぜぇ!きた!きた!
みなぎってきたぜえええ!!ぐへぐへええええ!!!!
最高に気持ちいいいいい!!!!いいぜぇ、たぎっちまうよ!」

 女傭兵の身体を飲み込んだ男の更に筋肉が膨れ上がっていく。
男は丸太のような両腕で周囲を薙ぎ払い、アンリを軽々と吹き飛ばす。

「また、逞しくなっちまったなぁ、っくく!」

「ルークスジャベリン!!」

 蛇の束縛から逃れたガラテアの放った光の槍が男の身体に深々と突き刺ささった。

「っぐ、痛てぇ、熱い!くそ!!」

 続いて放たれたガラテアの炎弾が男の身体を捉える。

「くそ、この!」

 獣毛と獣皮が焼ける臭いが洞窟内に広がった。

「……この女神の魔力をとりこみさえすれば……不老の肉体が……」

 男はその巨体からは想像しがたいスピードで間合いを詰め、ガラテアに拳を振り下ろす。彼女を包み込む神聖結界にひびが入る。
更に男はその両腕を叩きつける。

「黒の衝撃!」

 男の身体から放たれた淵術の奔流がガラテアを襲う。

「くそっ!俺の攻撃が」

 彼女は淵術の直撃を受けたが、白霊布で形成された純白のドレスをまとい何事もなかったかのように佇んでいる。
 ……ガラテアのしなやかな足が男の顔を蹴り飛ばす。
 男は彼女の前で膝をつき、そのまま顔を地につけた。

「……肉体強化」

 彼女の肩の傷がふさがっていく……ガラテアの肉体を聖槍の魔力が駆け巡り、より美しさと強さを兼ね備えた身体へ変化させる。
 彼女の美しい足が男の顔を踏みつけた。

「この俺が、こんな……」

 男は吐血する。
 ……ガラテアは更に強力な力で男の頭を押さえつける。

「……わたしを犯して力を奪うんじゃなかったのか?」

「ぐぞ、ぐぞ」

「……お前の見よう見まねだが……黒の衝撃」

 ……彼女から放たれた黒い波動が男を襲う。

「ぐああああ」

「光剣の疾走……」

 ガラテアの魔力で形成された浄化の力をもった輝く剣が倒れこんだ男の身体に幾本も突き刺さる。

「……最高にいい女を目の前にして……
もう少しで不老の体と強大な魔力が手に入るってい……う…………」

 ……瘴気を吐き出しながら異形に変異した男の肉体が溶けていく……
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