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 王都マリエスブールの市街をアンリとリンアルド族の男ディアスが歩いてる。

「アンリ、お前も色々と大変だな」

「ああ」

「魔術の実験体にでもなってるのかと思ったぜ」

「王都魔術学校に通ってた頃にそういう経験はあるな……結構金になる仕事だった」

 ディアスは女に変異したアンリの顔をじっと見つめる。

「なんだよ……ディアス?」

「いやぁ……だいぶ変わるもんだなと思ってよ……まあ、変異しても魔力波長は同じか」

「この至近距離で魔力波長を偽装できる奴はそうそういないだろ」

「お前の魔力波長はちょっと変わってるから人混みの中でわかりやすいんだよ、人間は減速術式の資質持ちは加速術式より少ないんだったか?」

「……そういえば、ディアス、今日の仕事は何なんだ?」

「ああ、そうだった、そうだった……マリエスブール周辺で行方不明になってる傭兵やチンピラや魔術師がいるらしいんだよ、そいつの調査だな」

「二人でいいのか?他に仲間を集めるか?この前みたいにヤバい魔女が絡んでいるかもしれない」

「そうだなぁ……二人だけでも……」

 ディアスが口に手をあて思案している。
 
「あっ!」

 アンリが何かに気づいた。

「どうしたんだ?」

「オクタヴィアがいるな」

 ……アンリは運河を挟んだ通りの向こう側でオクタヴィアらしき背の高い黒髪のシェイマを見つけた。彼女は一緒にいる何者かと言葉を交わしているようだった。

「一緒にいるのは……オークの女か?……なあアンリ、誰だかわかるか?」

「いや、わからないな」

 オークの女は路地へと姿を消していく。

「オクタヴィアも呼ぶか?」

「……それがいいと思うぜ、ヤバい事態になったとき戦力は多いほうがいい、報酬の取り分が減るとか気にしてる場合じゃねぇ、命が一番大事だ」

「わかった」

 アンリは運河に架かる橋を渡り、彼女に近づいていく。

「おーい、オクタヴィア」

「瘴気の臭いがする……誰だ?」

 ……彼女は突然、やって来た瘴気の臭いのする見知らぬ顔の女に少々身構える。

「瘴気の臭いが気になるか?この姿じゃわからないかもしれないが、オレだよアンリだよ」

「……アンリ?」

「この前の仕事でルーネと一緒だったんだが、その時に使った融合術式の余波で体内にルーネの魔力が残っていて、暫く元の姿に戻れないんだ……瘴気の臭いがするのは淵術の魔力の残滓とマリエスブール廃坑の奥の瘴気の濃い場所に行ったせいだな」

 オクタヴィアは顔を近づけ、アンリの顔を見つめる。

「……魔力波長は……減速術式か……」

 彼女はアンリの顔を見つめながら呟いた。

「よう、オクタヴィア、どうだい景気は?これからアンリと行方不明者の調査に行くんだがアンタも来ないか?アンタみたいな実力者がいると助かるんだが」

 ディアスがオクタヴィアに問いかける。

「いいよ、わかった面白そうだし、私も行くよ、ちょうど用事も済んだところだったし」

「じゃあ、早速調査にむかうか」
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