愛とは記憶の鳥籠

きのと

文字の大きさ
21 / 33

ep.20

しおりを挟む
 リリアーナは細い指でラスの頬を包んだ。唇を寄せると、触れ合った瞬間には貪られていた。リリアーナからも舌をだし、積極的に求める。

「んん、ふ、んん、はっ」

 ライアスがいつもしてくれるように、顔の角度を変えながら口内をかき回すと、絡まり合った舌から唾液が溢れ、銀糸のように口の端から垂れていく。

「ラス、愛してる。もっと強く抱きしめて」

 セドリックに触れられた記憶など消し去ってしまいたい。

「このまま抱いてもいいか?」

 熱と情欲を含んだ声で囁かれて、リリアーナの身体の奥に炎が灯る。

「もちろんよ」

 お互いの服の釦を外し合う。脱ぐ時間さえもどかしかった。

 狭い寝台の上でラスの脚の間で膝立ちになる。

 もうセドリックの残した噛み痕は消えていたが、それを上書きするかのようにライアスは首から胸元へ細かくキスを繰り返した。こうして愛撫に身を任せていると、身体が浄化されていく気がする。

「もう二度とリリに触れられないと思っていたのに」

 感極まったように、ライアスは柔らかな胸に顔をうずめた。リリアーナが頭を抱きかかえて、黒髪を梳くように撫でると、おでこをぐりぐりと押し付けてくる。その甘えるような仕草が可愛らしくて、好きだという気持ちが溢れ出して、止まらなくなった。

「ラス、もう来て」

 準備ができているとは言い難かったが、今すぐに愛する人を迎え入れたかった。

 ラスの腰の上に跨り、自ら蜜壺を熱杭に充てる。そっと腰を落とすと、せり出した傘が入り口をぐいと押し広げた。

「うはあっん!」

 先端だけなのに、痺れるような快感が閃光のように走って、リリアーナは気を遣ってしまった。

「まだ、半分も入っていないのに」

 リリアーナの腰を支えるライアスが笑う。

「だってぇ」

「もういいの? 満足した?」

 するわけがない。さらに深くまで腰を下ろし、熱く猛る肉棒をぐっぷりと根元まで飲み込む。

「ああっん……」

 ライアスが自分の中にいる。足りないピースをはめられたように、ようやく求めていたもので身体を満たせた。

 下腹部の圧迫感は新たな快感をもたらし、リリアーナはビクリと全身を震わせた。

「ああ、ラス……またイキそう……」

 膣口がぎゅうっと収縮すると、ライアスは艶っぽい吐息を漏らした。

「リリ、締め付けすぎだ」

 リリアーナが自ら腰を上下させると、柔らかな双丘はふるんふるんと揺れる。ライアスは胸を鷲掴みすると、円を描くように揉みしだく。下から持ち上げるようにして、乳房の形を変えると、先端を咥えて嬲り始めた。ちぅと音を立てて吸い付き、舌先で転がす。もう片方の乳首は指の腹で優しく撫で摩る。

「はあん、あん……はっ……ああん……あん……ああん……」

 これまでもう何度も抱き合い、お互いの好みは知り尽くしている。

 上と下、同時に快楽を与えられ、またも高みに登ってしまう。蜜口は溢れ出た愛液でじゅぶじゅぶと淫猥な音を立てていた。

 ライアスに背中を支えられ、敷布の上にあおむけに寝かされる。繋がったまま態勢を入れ替え、今度はライアスが覆いかぶさる形になった。

 目いっぱい股間を開かされ、ひざが肩につきそうなほどに脚を持ち上げられると、結合部がしっかりと視界に入る。卑猥な光景に頬が熱くなると、またもリリアーナの膣は蠕動し、ライアスの分身にねっとりと絡みつく。

 恥丘めがけて上から叩きつけるような力強い律動は骨盤に響き、再びリリアーナを翻弄する。

「ああっ……ラス、ラス……いやぁ……あはぁ……ラス……」

 キスしたくてたまらなかったが、まともに言葉にならず、名前を呼ぶだけしかできない。それだけでもライアスは気持ちを汲んでくれた。思い切り腰を振りながらも、リリアーナの唇を塞ぎ、喘ぎ声もすべて飲み込む。

「んぐぅ……ん……んんっ……んん……んーーー!!!」

 下腹部に溜まった痺れが一気に弾けた。あまりの快感の強さに身体がぶるりと震える。

「んあああっー!」

 絶頂を迎えたリリアーナは、またも熱杭をぎゅうっと締め上げる。

 愉悦は一度ではおさまらず、快感の波が押し寄せるたびにそれは繰り返された。甘く柔らかで熱い責め苦にライアスも根を上げて、少し遅れて吐精した。



 汗の粒が光る逞しい胸に、リリアーナはちょこんと頬をのせる。港町の狭いアパートの寝台では、営みが終わった後はこうして寄り添いながら眠くなるまでお喋りをしていた。

「ねえ、ラスはいつからわたしを好きになってくれたの? 妹としてではなく」

「一度も妹だと思ったことはないよ。トリスタンに連れられたリリを初めて見たときに、こんなに可愛い子がこの世に存在するなんてと思った」

「全然気が付かなかった」

「一度はプロポーズしたんだけどな」

 ライアスが懐かしそうに喉の奥でクツクツと笑った。

「え、いつ?」

「リリが来て、半年くらい経ったころかな。『大人になったらリリをお嫁さんにしたい』と言ったら『ラス兄さんはずっとお兄さんなの。おむこさんは要らない』ってフラれたよ」

「覚えていないわ」

 半年なら新しくできた『お兄さん』が嬉しくてたまらなかったころだ。お嫁さんになるより妹でいることを望んでいたと思う。

「ねえ、そのプロポーズはまだ有効なのかしら?」

「リリ?」

「ディラン王子殿下が立太子されたら、恩赦でラスを解放してくれると約束したの。すべてが終わったら、わたしをお嫁さんにしてくれる?」

「ああ、改めて結婚を申し込むよ」

「待っているから」

 どちらともなく唇を寄せて、将来を誓い合う口づけを交わした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

王家の血を引いていないと判明した私は、何故か変わらず愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女であるスレリアは、自身が王家の血筋ではないことを知った。 それによって彼女は、家族との関係が終わると思っていた。父や母、兄弟の面々に事実をどう受け止められるのか、彼女は不安だったのだ。 しかしそれは、杞憂に終わった。 スレリアの家族は、彼女を家族として愛しており、排斥するつもりなどはなかったのだ。 ただその愛し方は、それぞれであった。 今まで通りの距離を保つ者、溺愛してくる者、さらには求婚してくる者、そんな家族の様々な対応に、スレリアは少々困惑するのだった。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

側近女性は迷わない

中田カナ
恋愛
第二王子殿下の側近の中でただ1人の女性である私は、思いがけず自分の陰口を耳にしてしまった。 ※ 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...