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第9話 赤い羽根付き帽子の女-4-
しおりを挟むここで、従者に呼びに行かせていたこの地域の護衛官長が数人の部下を引き連れてやってきた。
伯爵家での殺人事件だけあって気合が入っている。
「ハワード中隊長殿、お待たせして申し訳ありません」
「急を要する。騒ぎを聞いていないか、何か変わったことがなかったか、近隣の住民に聞き込みをして欲しい」
「かしこまりました」
アイザック様が細かい指示を出している間、ちょっと調べたいことがあると断って、私は家の中を探検した。
台所のそばに侍女の部屋を見つけた。
クローゼットとベッドくらいしか家具のない質素な部屋だ。
床には長い髪の毛が落ちていた。色は黒。キャロラン嬢と同じ色だ。
クローゼットを開けると、お仕着せが数枚吊るされていた。
自分の体にあててみる。七分丈のスカートがくるぶしまできてしまう。
私はこの世界での成人女性の平均身長だから、この服の持ち主の女性は長身のようだ。
シューズケースに履き古した黒いパンプスがあったので拝借して広間に戻る。
遺体の履いていた赤いハイヒールとサイズを比べてみる。
パンプスのほうがやや大きい。
「そういうわけか」
赤いハイヒールは身代わりの侍女の足には小さかったのだ。
だから仕方なく自分の靴を履いていった。
アイザック様が下男から話を聞いていた。
おろおろするばかりで要領を得ない。
下男は部屋が離れていて空き巣については気づかなかった、キャロラインがこんなに早く帰ってくるとは知らなかったという。
「この家の使用人は?」
「ええっと、侍女が一人と下男は私一人だけでございます、はい」
「侍女はどこにいるんだ?」
「いや、あの、郷里の家族に不幸があって急遽里帰りすることになったと聞いております」
「いつ聞いた?」
「そ、それは……」
青ざめたまま黙り込んでしまった。
ちょうど近隣に聞き込みに行った護衛官が戻ってきた。
「夕方、伯爵家の馬車が屋敷に入っていくのを向かいの屋敷の使用人が見ていました。てっきり伯爵かと思ったら、数時間後にまた伯爵家の馬車がきたので不思議に思ったそうです」
「先に来た馬車に乗っていたのは誰かわからないか?」
「はっきり顔は見えなかったので、女性らしいということしかわからないそうです」
「わかった。ありがとう」
応接室で伯爵はひとり涙を流していた。
「テューダー伯爵、舞踏会に来ていたのはキャロライン嬢ではありませんね。遺体の状況からして殺されたのは夕方です」
伯爵は俯いたまま動かない。
アイザック様は続ける。
「キャロライン嬢の身代わりを務めたのは侍女ですね。今、護衛官が貸し馬車屋を当たっています。
背の高い黒髪の女性をこの近くから乗せたという証言も取れました。確保も時間の問題です。
本当のことを話してください。いったい何があったんですか?」
伯爵は観念したように自供を始めた。
キャロラインが浮気をしていると知り、カッとなって置物で殴ってしまった。
なんとか誤魔化せないかと思い、居直り強盗の仕業にみせることを思いついた。
侍女にキャロラインのふりをさせ舞踏会に連れて行った。
先に侍女だけを帰し、来ていたドレスに遺体を着替えさせたら、部屋を荒らすように命令した。
すべてが済んだら郷里に戻るよう、あらかじめ金を渡しておいた。
予想通りの答えだった。
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