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アンリミテッド・スノーマンの情景
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圭吾はその場所で、ひたすら罪の意識に苛まれていた。法的処分が下される案件であれば、いっそもう少し心は軽くなっていたに違いない。けれど現時点で純朴な学生同士の縺れを明確に断罪してくれるような都合の良い法などはこの世になかったし、恭介側に訴えようという揺るぎない決意がある訳でもなかったので、圭吾は裁判員制度を導入して着々と新時代に向かっている裁判所に誂えられた所謂被告人側と呼ばれる場所に立つことを許されもしなかった。
その代わりとして直射日光を何ひとつ遮ってはくれない屋根に一人よじ登り、既に初夏と言うにはあまりにもギラギラした太陽光を全身に浴びながら座禅を組んだ辺りで我に返った。脳裏に浮かんだのは、何がしたいんだ僕は、の一言に尽きた。形ばかりの座禅で反省を試みたところで、圭吾の肩を勇ましく叩きあらゆる邪念を吹き飛ばしてくれる住職もいないし、耐えきれなくなって姿勢を楽に崩しても、咎めるような声は掛からない。それならばこんなおためごかしの制裁など、何の意味もないような気がした。
あの日――恭介が、無事に神社へと戻って来たあの朝。その姿を見るなり、圭吾の中には一気に愛しさが込み上げてどうしようもなくなってしまった。圭吾にだってささやかながら理性は残っていたし、普段の調子を取り乱す程、恭介の安否を気に掛けていたという事実を知られるのも分が悪い。もう二度と同じことをしようだなんて思わなくなるくらいには壮絶な嫌味だって言ってやりたかったし、それこそ鳴海のように、全力で「おかえりなさい」を言って受け止めてもあげたかった。それなのに、その姿を見てしまったらもう、何もかも駄目になってしまった。
身を焼き尽くす程に焦がれて、全力で運命に抗ってまで取り戻したかった人物が、今目の前に居る。予め用意していた言葉など、濁流に飲まれるように、すべてなくなってしまった。残ったのは自分でも恐ろしくなる程の飢餓感と、動物的本能だけだった。乾いた土を潤す山水のように、或いは砂漠に溢した水筒の中身のように、かさかさに乾いた心は嬉々としてその水滴を吸収しながらも、結局のところそれだけの潤いじゃまるで足らなかった。それどころかより一層ひどい乾きを覚えてしまい、残された僅かばかりの理性をも手放すことに何の疑問も抱かなかった。恭介へと伸ばす手は獣のように荒々しく、傍若無人にその体を撫で回してしまった。
最初に、抱き締めてしまったのはまだ良い。映画やドキュメンタリーなどでもよく見られるシーンだ。それこそ恋人相手じゃなくたって、家族や、友達へ、そのような愛情表現で帰宅を歓迎することもある。けれどその後に、着物の中へ手を入れてしまったのは、明らかに常軌を逸していたんじゃないか? 背中に爪を立てたのは? 鎖骨やうなじを噛んだのは? 耳の裏と眦にもナチュラルに口づけてしまったし、恭介の声に遮られていなければ、押し倒したままその唇にまでキスを落としていたかもしれない。
発情期の犬だって、もっとおとなしく主人を迎え入れるだろう。圭吾は、わかりやすく獣に成り下がっていた。ギリギリのところでどうにか踏み止まることには成功したが、恭介がもし、あのタイミングで唇へのキスを許してしまっていたら、完全に我を忘れて、それ以上のことにだって及んでいたかもしれない。本当に――本当に、危ないところだった。
〝マスター、お風呂が沸きました〟
屋根の上で、自身の所業とそれに対する罪の意識に格闘する主の後ろから、遠慮がちに声が掛けられる。爽やかな単音のメロディーが似合う、センサーに搭載されているような抑揚のない声だった。
ここに犬神が居ればお前は白虎に何を命令してンだよなどと呆れられたかもしれないが、当の本人はどんな事柄であれ、圭吾に頼られるのは嬉しいらしい。しずしずとマスターに近づく足の後ろで、感情を隠さずにふわふわと尻尾が揺れているのが見えた。
「ありがとう。すぐ戻るよ」
〝……マスター〟
圭吾には、その感情をもて余している様子こそあれ、助けを求めるような空気は感じられなかった。普段であれば白虎もそこまで踏み込むことはなかったし、主に望まれた時にだけ、必要な回答を差し出すのが自分の役目だと思っていたから、その日に限って、どうしてそんなことを聞いてしまったのか、後に振り返って考えてもまるでわからない。
理由のない好奇心が頭を擡げたせいかもしれないし、単純に魔が差しただけなのかもしれない。
〝もしかしたら、マスターは……恭介のことを〟
「……言わないよ」
答えは、明瞭だった。
「先輩には、言わない」
〝何故ですか!?〟
白虎は、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。喉が乾いているだろうからと差し出したお茶を、喉が乾いているので要りませんと言われた時のような気持ちだった。
「これから暫くは、一緒に盟約解除の方法を探さなきゃならないんだ。気まずくなる訳にいかないだろ」
白虎は、くらくらと目眩がしたのでその場にしゃがみこんだ。圭吾のことは心底尊敬しているし一生ついていくと心に決めた主人ではあるけれど、さすがにまったく的外れなこの発言には突っ込みどころが満載だった。
〝絶対に両想いです〟
きっぱりと、白虎が言った。当て推量でもヤマ勘でもなく、それは世界の理に近かった。
「お前は僕が好きだからね。逆に、あてにならないよ」
〝……〟
「……ごめん。意地悪だったかも、今のは」
片目を細めて、圭吾が笑った。白虎はその場でひっくり返ってしまいたいくらいのじれったさを感じたが、どうにか耐えた。
〝私のことは良いのです。今は、マスターの恋について話しているんです〟
「お前、ストレートな物言いを一切躊躇わないタイプだな」
〝恐れながら申し上げます。伝えないと、心に決めてしまわれた理由がわかりません〟
「何故?」
圭吾は眉をあげて、含みのある顔で問い掛けた。
〝マスターが、好きだから付き合ってくれと一言口にさえすれば、恭介は必ず頷きます〟
「或いは、そうかも知れないな」
〝……?〟
――わかっているなら、何故?
今度は、白虎が首を傾げる番だった。
「僕が、お前と盟約を交わしたから……そうさせたっていうことへの罪滅ぼしで、僕の望むように頷くかもしれない。あの人は、そういうところがあるんだ」
白虎は、ついにひっくり返った。本当は三回転くらいひっくり返ってしまいたかったが、どうにか一回転で堪えることに成功した。
「どうしたんだ白虎」
〝……確かに恭介は、そういうところがあります。ですがこの件に関して言えば、そういうところはありません〟
「……お前は何を言っているの?」
我ながら、動揺のあまりろくな言葉が出てこなかった。案の定圭吾は、その意味を丸ごと頭から再確認するように聞いてくる。
〝重ねて言います。そういうところはないんです〟
「お前は僕の味方だからね」
〝もどかしい!〟
白虎は、ビターンと尻尾を屋根に叩きつけた。それはかつてないストレスだった。
「……まるで、先輩に原因があるみたいな言い方をしちゃったけど。どちらかというと、信じられないのは僕の方だ」
胡座をかいたまま、その膝に腕を置き頬杖を付く。午後の陽が、圭吾の頬を容赦なく照らして、濃い影を作っていた。
「もし頷いてくれても、僕へ引け目を感じているからかもしれないなんて……そんなひどいことを不安に思う今の僕じゃ、先輩には釣り合わないよ――だから」
すう、と小さく息を吸って、圭吾はひとつの決意を口にした。
「盟約をきっちり解除して、すべての問題を片付けて、先輩との関係がフラットになれたら……ちゃんと僕から言うつもり」
〝もどかしい……!〟
白虎はバタンと真横に倒れた。この世にあるじれったさと歯がゆさをシェイクして、一気飲みしたような気持ちだった。
「それは僕もだよ」
〝恐れながら申し上げます。マスターは、恭介がこの神社に戻ってからずっと、恭介のうなじや鎖骨を見ないようにしています〟
「お前、そんなことにまで気づいてるのか」
〝自覚があったんですね〟
「……見ていたら噛みたくなるし、仕方ないだろ」
気まずそうにプイッと視線を避けて、圭吾が答える。それは前科二犯どころか三犯は犯している者の言い分として、ひどく説得力のある理由だった。
〝恭介は、和服を好んで着ています〟
「そうだな」
〝マスター、恐れながら申し上げます〟
「お前はもう何も恐れなくて良いよ」
〝そういう訳には参りません!〟
白虎が高らかに叫んだ。それは途方に暮れたような声だった。
「……悪かった。何?」
〝実は、今回自覚をなされる前からずっとマスターは、恭介のうなじや鎖骨をよく盗み見していらっしゃいました。落ち着いて聞いていただきたいのですが、マスターは多分、和服が性癖です〟
「……」
圭吾は、遠くを見るような目で空を仰いだ。雲こそあるものの、抜けるようなスカイブルーは存外目に痛い。
〝失礼しました。正確には、和服独特の、首元がよく見えるデザインの服装が性癖です〟
「正確に言わなくていいよ……」
〝再三言います。恭介は、その和服を好んで着ています。恭介はもう最初から、既にマスターの性癖どストライクだったのです〟
ひどく真剣な声で、白虎が言った。圭吾はいよいよ頭を抱えてその場に沈み込んでしまった。
「丁寧に説明をありがとう」
〝これからも、その性癖の塊のような恭介と共に生活を過ごされるおつもりであれば、何かの切欠でまた衝動に襲われ、昨日のようなことが起こらないとも限りません〟
「……善処する」
〝告白さえしていただければ、善処しなくて良いんです!〟
白虎はついに叫んだ。叫んででも説得しなければならない局面に立っているのだと思案しての行動だった。
「どのみち善処は必要だろ」
〝何故!?〟
「僕が中学生のうちは、さすがに抱くのはまだ駄目だろうし」
〝抱……?〟
「すまん、忘れてくれ」
〝抱……〟
「忘れてくれ頼む」
白虎は、認識の甘さに今更気がついた。両想いにさえなれば、唇へのキスをいくらでもできるようになるんですよなどとアドバイスするつもりだったが、事態はもっと深刻であり生々しいことになっている。
〝マスター、はっきり申し上げます。隠したままでいるのは無理です……〟
白虎は、泣きそうな声でそう言った。そこまで先の関係を具体的に想像できてしまっているのに、今更言わないもへったくれもないと心から思った。
「うるさいな、わかってるよ」
〝恐れながら申し上げます。これから先、恭介を衝動で抱く恐れがあるのなら、尚のことです。気持ちを伝える前に抱くより、絶対に言ってから抱いた方が良いです〟
「抱くってそんなに何度も言わないでくれないか?」
〝マスター〟
「だから、これはもう僕の問題なんだっては」
〝圭吾……!? お前何してンだそんなとこで!?〟
足元から、驚いたような声が聞こえた。白虎と圭吾は、お互い視線を合わせた後、釣られるようにして屋根の下を覗き込む。
「いち君」
〝いち君ゆうな〟
唐紅の着物を着崩した男が、隆々とした筋肉の載る腕を胸の前で組んでいるのが見える。その左横で、鳴海が朗らかに手を振り、反対側にいた拓真が頭を下げた。
「虎ちゃんと何話してるのか知らないけど、そろそろパンケーキパーティーやるから降りて来て~! 危ないでしょ」
木の枝のところまで勢い登ったがその結果降りられなくなった猫相手にでもするかのように、鳴海が優しく声を掛けてくる。
「……この話は終わり」
ぼそりと白虎に言い置いて、圭吾は屋根の端まで歩いた。
「そう言えば、一之進さんはどうして現世に戻って来られたんです?」
「それがね! 聞いてよ! いち君、たっ君の新しい守護霊になったんだって!」
ふいに聞きそびれていたことを思い出したので質問したら、本人よりも早く明朗快活な回答が返ってきた。
「もともと守護霊って、人間一人に対して五人くらいいるんだけど」
「多いな」
「勿論、全員がおんなじ仕事してる訳じゃないよ。メインにいる守護霊は、遥か遠くの冥界から見守る役目があって、必要があれば現世に居る守護霊四人に指示を出したりするの。今回その四人のうちの一人が交代の時期で、代わりにいち君が着任することになったんだって!」
まるで一之進専属のマネージャーのように、詳細でわかりやすい説明だった。
〝恭介が拐われた時、ちょうど引き継ぎでこっちに降りて来たんだよ。拓真が巻き込まれている現状を知らされる前だったから、うまくフォローできなくて悪かったな〟
「いえ、僕が一番悪いんです……その節は、本当に申し訳ありませんでした」
「もー! そんなの全然良いったら~!」
頭を掻きながら詫びる一之進と、その横で彼以上に真っ青になりながら頭を下げる拓真の背中をまとめて馬鹿力で叩きながら、鳴海がけらけらと笑っている。粉砕骨折直前の拓真の肩が気になりつつ、圭吾は呆れたようにはしゃぐその友人に声を投げた。
「……で、城脇は何でそんなに浮かれてるんだ?」
「だって! もういち君が、俺に黙ってあの世に戻っちゃうこと、当分ないんだよ? 会いたくなったら、たっ君のところに行けば、いつでも会えるだなんて……! 夢みたい……っ!」
うっとりと、鳴海が頬に手を当てながら言った。圭吾は、未だに肩の痛みを散らそうとしている拓真を横目に考える。どうやら最近告白まで済ませたらしい鳴海が、件の一之進と両想いになっても振られても、一番気まずいのは拓真なんじゃないかとは圭吾の感想であった。
「鳴海は何で、この急な階段をスキップしながら登れるんだ……」
どき、と圭吾の心臓が跳ねる。屋根から地面に、飛び降りようとしていた足が竦んだ。それは高さが原因などではなかった。白虎の言葉を借りればどうやら最初から圭吾の好みどストライクだったらしい上司が、息も絶え絶え階段を登ってくるのが見えたから。
「恭ちゃん、遅いよー!」
右手に持ったエコバッグから、パンケーキパーティーだというのに、何故か長ネギが顔を覗かせている。屋根に居る圭吾に一瞬ぎょっとしてから、首を傾げながらまじまじと確かめるようにこちらを見つめて来た。圭吾は上から見下ろしているので、綺麗な線を描くうなじも、水の溜まりそうなほどくっきりと浮いた鎖骨も、心臓破りの階段を登ってきた直後のせいかこめかみから顎に伝い落ちている汗も、しっとりとした短い黒髪が貼り付いた形の良いおでこも、圭吾を見上げる無防備な上目遣いも、何から何まで丸見えで――成程、それは確かにどストライクだった。
「おかえりなさい」
「えっ……しの、そんなとこで何してんの?」
「ふふ。猫みたいだよね」
漸くその影を圭吾だと認識したらしい恭介が、のろのろと問い掛けた。依然ご機嫌なままの鳴海が、歌うような声でそれに答える。
「土屋先輩」
頑張ったら乳首が見えないだろうかなどという邪念を振り払いつつ、圭吾はその場で立ち上がった。降りるのをやめ、恭介が視線を合わせてくれるのをおとなしく待つ。
「そろそろ謹慎、解いてもらえませんか?」
「……それ、お前から言っちゃうの?」
「すみません、でも」
自ら提案する時点で反省が足りないと指摘されているような気がして、素直に謝る。恭介の近くでおさんどんのようなことばかりして、彼に尽くしてさまざまな面倒を見る日々も存外楽しかったし、自身を見つめ直す時間もできた。改めて考えてみても、きっとそれは、必要な期間だったのだと思う――けれど。
「やっぱり僕は、公私共に、あんたの傍にいたいんです」
ざあ、と、気まぐれな風が圭吾の足元を過ぎ去った。恭介は、眉間にシワを寄せたまま何かを考えている。
「……次にまた、依頼人を危険に巻き込むような真似したら、もう絶対に許せないからな」
「わかってます」
きっぱりと、圭吾が言った。今度こそ、間違えない。間違えたくはない――その覚悟は、既にできていた。
訪れた沈黙は、不安になる程長いようにも思えたし、ほんの二、三度、瞬きをする程度の時間だったようにも思う。顰めっ面だった相貌をふっと崩して、恭介がいたずらを詰め込んだおもちゃ箱のように笑った。
「……降りてこい、しの。鳴海のホットケーキ食べたら、次の依頼の打ち合わせするぞ」
「……っ!」
「わぁ! やったね圭吾! お祝いに俺、天井埋め尽くすまで焼いちゃう!」
鳴海が手を叩いて喜んだ。はしゃぐ声は、水飴のようにキラキラと輝いている。
「それは焼きすぎだと思います」
その隣で拓真が、ひどく冷静な声で突っ込んだ。
「あーあ、ほんとはいち君にも食べて欲しいんだけどなぁ……たっ君、俺に飲ませた魂を抜く薬まだ余ってない?」
「その節は誠に申し訳ありませんでした……」
〝鳴海、やめろ。拓真の傷口をえぐるな〟
秒で腰を九十度に近い角度まで折り曲げて謝る拓真を宥めながら、一之進が静かに鳴海を嗜めた。
「……あ」
「どうしたの恭ちゃん」
「メープルシロップ、買うの忘れちゃった。師匠にメールして、買ってきてもらおう」
〝……おい。メール送るなら、鳴海からってことにしておけよ。恭介がねだるものは全部、業者単位で買いかねないからな烏丸は〟
ゆらり。恭介の周りの影が揺れる。彼曰く毎度呼び出した訳でもないのに勝手に出てくる犬神が今回もいつものごとく自由気ままに現れて、やれやれと首を振りながら恐ろしいことを忠告した。
〝容易く想像できるな……〟
しみじみと、一之進が言った。それは、思い描くには簡単すぎる情景だった。
「あっ! ねーねー、烏丸さんにメールする時にさぁ、メープルシロップのついでに魂を抜く薬、追加で持って来れないか聞いてもらってもいいかな?」
「その節は誠に」
〝いいから、拓真。鳴海も俺に、容易く体を明け渡そうとすんな〟
膝の上に肘を載せて、ぼんやりと屋根の下を眺める。いままでと同じ日常が戻ってきたようで、けれど目の前で繰り広げられるそれは、全く同じものではなかった。一之進と拓真が新たに増えているし、どうやら告白済みらしい鳴海の一之進に対する距離も、以前と比べてとても近い。
(……それに、僕だって)
基本的に、感情が表に出ない質であることに感謝する。白虎の言うように、どこまで隠しておけるのかは分からない。あの上司はとにかく無防備なところがあるし、本当に無理だと思う瞬間は、この先にきっとやってくる。
「――しの!」
それでも、恭介へと向かうこの歪な執着心の正体が、はっきりと分かったことで圭吾の心は少しだけ穏やかになっていた。
「今行きますよ、先輩」
瓦を蹴りあげて、空へ飛び出す。
圭吾の革靴に反射したスカイブルーの青が、刹那、強い光を放った。
その代わりとして直射日光を何ひとつ遮ってはくれない屋根に一人よじ登り、既に初夏と言うにはあまりにもギラギラした太陽光を全身に浴びながら座禅を組んだ辺りで我に返った。脳裏に浮かんだのは、何がしたいんだ僕は、の一言に尽きた。形ばかりの座禅で反省を試みたところで、圭吾の肩を勇ましく叩きあらゆる邪念を吹き飛ばしてくれる住職もいないし、耐えきれなくなって姿勢を楽に崩しても、咎めるような声は掛からない。それならばこんなおためごかしの制裁など、何の意味もないような気がした。
あの日――恭介が、無事に神社へと戻って来たあの朝。その姿を見るなり、圭吾の中には一気に愛しさが込み上げてどうしようもなくなってしまった。圭吾にだってささやかながら理性は残っていたし、普段の調子を取り乱す程、恭介の安否を気に掛けていたという事実を知られるのも分が悪い。もう二度と同じことをしようだなんて思わなくなるくらいには壮絶な嫌味だって言ってやりたかったし、それこそ鳴海のように、全力で「おかえりなさい」を言って受け止めてもあげたかった。それなのに、その姿を見てしまったらもう、何もかも駄目になってしまった。
身を焼き尽くす程に焦がれて、全力で運命に抗ってまで取り戻したかった人物が、今目の前に居る。予め用意していた言葉など、濁流に飲まれるように、すべてなくなってしまった。残ったのは自分でも恐ろしくなる程の飢餓感と、動物的本能だけだった。乾いた土を潤す山水のように、或いは砂漠に溢した水筒の中身のように、かさかさに乾いた心は嬉々としてその水滴を吸収しながらも、結局のところそれだけの潤いじゃまるで足らなかった。それどころかより一層ひどい乾きを覚えてしまい、残された僅かばかりの理性をも手放すことに何の疑問も抱かなかった。恭介へと伸ばす手は獣のように荒々しく、傍若無人にその体を撫で回してしまった。
最初に、抱き締めてしまったのはまだ良い。映画やドキュメンタリーなどでもよく見られるシーンだ。それこそ恋人相手じゃなくたって、家族や、友達へ、そのような愛情表現で帰宅を歓迎することもある。けれどその後に、着物の中へ手を入れてしまったのは、明らかに常軌を逸していたんじゃないか? 背中に爪を立てたのは? 鎖骨やうなじを噛んだのは? 耳の裏と眦にもナチュラルに口づけてしまったし、恭介の声に遮られていなければ、押し倒したままその唇にまでキスを落としていたかもしれない。
発情期の犬だって、もっとおとなしく主人を迎え入れるだろう。圭吾は、わかりやすく獣に成り下がっていた。ギリギリのところでどうにか踏み止まることには成功したが、恭介がもし、あのタイミングで唇へのキスを許してしまっていたら、完全に我を忘れて、それ以上のことにだって及んでいたかもしれない。本当に――本当に、危ないところだった。
〝マスター、お風呂が沸きました〟
屋根の上で、自身の所業とそれに対する罪の意識に格闘する主の後ろから、遠慮がちに声が掛けられる。爽やかな単音のメロディーが似合う、センサーに搭載されているような抑揚のない声だった。
ここに犬神が居ればお前は白虎に何を命令してンだよなどと呆れられたかもしれないが、当の本人はどんな事柄であれ、圭吾に頼られるのは嬉しいらしい。しずしずとマスターに近づく足の後ろで、感情を隠さずにふわふわと尻尾が揺れているのが見えた。
「ありがとう。すぐ戻るよ」
〝……マスター〟
圭吾には、その感情をもて余している様子こそあれ、助けを求めるような空気は感じられなかった。普段であれば白虎もそこまで踏み込むことはなかったし、主に望まれた時にだけ、必要な回答を差し出すのが自分の役目だと思っていたから、その日に限って、どうしてそんなことを聞いてしまったのか、後に振り返って考えてもまるでわからない。
理由のない好奇心が頭を擡げたせいかもしれないし、単純に魔が差しただけなのかもしれない。
〝もしかしたら、マスターは……恭介のことを〟
「……言わないよ」
答えは、明瞭だった。
「先輩には、言わない」
〝何故ですか!?〟
白虎は、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。喉が乾いているだろうからと差し出したお茶を、喉が乾いているので要りませんと言われた時のような気持ちだった。
「これから暫くは、一緒に盟約解除の方法を探さなきゃならないんだ。気まずくなる訳にいかないだろ」
白虎は、くらくらと目眩がしたのでその場にしゃがみこんだ。圭吾のことは心底尊敬しているし一生ついていくと心に決めた主人ではあるけれど、さすがにまったく的外れなこの発言には突っ込みどころが満載だった。
〝絶対に両想いです〟
きっぱりと、白虎が言った。当て推量でもヤマ勘でもなく、それは世界の理に近かった。
「お前は僕が好きだからね。逆に、あてにならないよ」
〝……〟
「……ごめん。意地悪だったかも、今のは」
片目を細めて、圭吾が笑った。白虎はその場でひっくり返ってしまいたいくらいのじれったさを感じたが、どうにか耐えた。
〝私のことは良いのです。今は、マスターの恋について話しているんです〟
「お前、ストレートな物言いを一切躊躇わないタイプだな」
〝恐れながら申し上げます。伝えないと、心に決めてしまわれた理由がわかりません〟
「何故?」
圭吾は眉をあげて、含みのある顔で問い掛けた。
〝マスターが、好きだから付き合ってくれと一言口にさえすれば、恭介は必ず頷きます〟
「或いは、そうかも知れないな」
〝……?〟
――わかっているなら、何故?
今度は、白虎が首を傾げる番だった。
「僕が、お前と盟約を交わしたから……そうさせたっていうことへの罪滅ぼしで、僕の望むように頷くかもしれない。あの人は、そういうところがあるんだ」
白虎は、ついにひっくり返った。本当は三回転くらいひっくり返ってしまいたかったが、どうにか一回転で堪えることに成功した。
「どうしたんだ白虎」
〝……確かに恭介は、そういうところがあります。ですがこの件に関して言えば、そういうところはありません〟
「……お前は何を言っているの?」
我ながら、動揺のあまりろくな言葉が出てこなかった。案の定圭吾は、その意味を丸ごと頭から再確認するように聞いてくる。
〝重ねて言います。そういうところはないんです〟
「お前は僕の味方だからね」
〝もどかしい!〟
白虎は、ビターンと尻尾を屋根に叩きつけた。それはかつてないストレスだった。
「……まるで、先輩に原因があるみたいな言い方をしちゃったけど。どちらかというと、信じられないのは僕の方だ」
胡座をかいたまま、その膝に腕を置き頬杖を付く。午後の陽が、圭吾の頬を容赦なく照らして、濃い影を作っていた。
「もし頷いてくれても、僕へ引け目を感じているからかもしれないなんて……そんなひどいことを不安に思う今の僕じゃ、先輩には釣り合わないよ――だから」
すう、と小さく息を吸って、圭吾はひとつの決意を口にした。
「盟約をきっちり解除して、すべての問題を片付けて、先輩との関係がフラットになれたら……ちゃんと僕から言うつもり」
〝もどかしい……!〟
白虎はバタンと真横に倒れた。この世にあるじれったさと歯がゆさをシェイクして、一気飲みしたような気持ちだった。
「それは僕もだよ」
〝恐れながら申し上げます。マスターは、恭介がこの神社に戻ってからずっと、恭介のうなじや鎖骨を見ないようにしています〟
「お前、そんなことにまで気づいてるのか」
〝自覚があったんですね〟
「……見ていたら噛みたくなるし、仕方ないだろ」
気まずそうにプイッと視線を避けて、圭吾が答える。それは前科二犯どころか三犯は犯している者の言い分として、ひどく説得力のある理由だった。
〝恭介は、和服を好んで着ています〟
「そうだな」
〝マスター、恐れながら申し上げます〟
「お前はもう何も恐れなくて良いよ」
〝そういう訳には参りません!〟
白虎が高らかに叫んだ。それは途方に暮れたような声だった。
「……悪かった。何?」
〝実は、今回自覚をなされる前からずっとマスターは、恭介のうなじや鎖骨をよく盗み見していらっしゃいました。落ち着いて聞いていただきたいのですが、マスターは多分、和服が性癖です〟
「……」
圭吾は、遠くを見るような目で空を仰いだ。雲こそあるものの、抜けるようなスカイブルーは存外目に痛い。
〝失礼しました。正確には、和服独特の、首元がよく見えるデザインの服装が性癖です〟
「正確に言わなくていいよ……」
〝再三言います。恭介は、その和服を好んで着ています。恭介はもう最初から、既にマスターの性癖どストライクだったのです〟
ひどく真剣な声で、白虎が言った。圭吾はいよいよ頭を抱えてその場に沈み込んでしまった。
「丁寧に説明をありがとう」
〝これからも、その性癖の塊のような恭介と共に生活を過ごされるおつもりであれば、何かの切欠でまた衝動に襲われ、昨日のようなことが起こらないとも限りません〟
「……善処する」
〝告白さえしていただければ、善処しなくて良いんです!〟
白虎はついに叫んだ。叫んででも説得しなければならない局面に立っているのだと思案しての行動だった。
「どのみち善処は必要だろ」
〝何故!?〟
「僕が中学生のうちは、さすがに抱くのはまだ駄目だろうし」
〝抱……?〟
「すまん、忘れてくれ」
〝抱……〟
「忘れてくれ頼む」
白虎は、認識の甘さに今更気がついた。両想いにさえなれば、唇へのキスをいくらでもできるようになるんですよなどとアドバイスするつもりだったが、事態はもっと深刻であり生々しいことになっている。
〝マスター、はっきり申し上げます。隠したままでいるのは無理です……〟
白虎は、泣きそうな声でそう言った。そこまで先の関係を具体的に想像できてしまっているのに、今更言わないもへったくれもないと心から思った。
「うるさいな、わかってるよ」
〝恐れながら申し上げます。これから先、恭介を衝動で抱く恐れがあるのなら、尚のことです。気持ちを伝える前に抱くより、絶対に言ってから抱いた方が良いです〟
「抱くってそんなに何度も言わないでくれないか?」
〝マスター〟
「だから、これはもう僕の問題なんだっては」
〝圭吾……!? お前何してンだそんなとこで!?〟
足元から、驚いたような声が聞こえた。白虎と圭吾は、お互い視線を合わせた後、釣られるようにして屋根の下を覗き込む。
「いち君」
〝いち君ゆうな〟
唐紅の着物を着崩した男が、隆々とした筋肉の載る腕を胸の前で組んでいるのが見える。その左横で、鳴海が朗らかに手を振り、反対側にいた拓真が頭を下げた。
「虎ちゃんと何話してるのか知らないけど、そろそろパンケーキパーティーやるから降りて来て~! 危ないでしょ」
木の枝のところまで勢い登ったがその結果降りられなくなった猫相手にでもするかのように、鳴海が優しく声を掛けてくる。
「……この話は終わり」
ぼそりと白虎に言い置いて、圭吾は屋根の端まで歩いた。
「そう言えば、一之進さんはどうして現世に戻って来られたんです?」
「それがね! 聞いてよ! いち君、たっ君の新しい守護霊になったんだって!」
ふいに聞きそびれていたことを思い出したので質問したら、本人よりも早く明朗快活な回答が返ってきた。
「もともと守護霊って、人間一人に対して五人くらいいるんだけど」
「多いな」
「勿論、全員がおんなじ仕事してる訳じゃないよ。メインにいる守護霊は、遥か遠くの冥界から見守る役目があって、必要があれば現世に居る守護霊四人に指示を出したりするの。今回その四人のうちの一人が交代の時期で、代わりにいち君が着任することになったんだって!」
まるで一之進専属のマネージャーのように、詳細でわかりやすい説明だった。
〝恭介が拐われた時、ちょうど引き継ぎでこっちに降りて来たんだよ。拓真が巻き込まれている現状を知らされる前だったから、うまくフォローできなくて悪かったな〟
「いえ、僕が一番悪いんです……その節は、本当に申し訳ありませんでした」
「もー! そんなの全然良いったら~!」
頭を掻きながら詫びる一之進と、その横で彼以上に真っ青になりながら頭を下げる拓真の背中をまとめて馬鹿力で叩きながら、鳴海がけらけらと笑っている。粉砕骨折直前の拓真の肩が気になりつつ、圭吾は呆れたようにはしゃぐその友人に声を投げた。
「……で、城脇は何でそんなに浮かれてるんだ?」
「だって! もういち君が、俺に黙ってあの世に戻っちゃうこと、当分ないんだよ? 会いたくなったら、たっ君のところに行けば、いつでも会えるだなんて……! 夢みたい……っ!」
うっとりと、鳴海が頬に手を当てながら言った。圭吾は、未だに肩の痛みを散らそうとしている拓真を横目に考える。どうやら最近告白まで済ませたらしい鳴海が、件の一之進と両想いになっても振られても、一番気まずいのは拓真なんじゃないかとは圭吾の感想であった。
「鳴海は何で、この急な階段をスキップしながら登れるんだ……」
どき、と圭吾の心臓が跳ねる。屋根から地面に、飛び降りようとしていた足が竦んだ。それは高さが原因などではなかった。白虎の言葉を借りればどうやら最初から圭吾の好みどストライクだったらしい上司が、息も絶え絶え階段を登ってくるのが見えたから。
「恭ちゃん、遅いよー!」
右手に持ったエコバッグから、パンケーキパーティーだというのに、何故か長ネギが顔を覗かせている。屋根に居る圭吾に一瞬ぎょっとしてから、首を傾げながらまじまじと確かめるようにこちらを見つめて来た。圭吾は上から見下ろしているので、綺麗な線を描くうなじも、水の溜まりそうなほどくっきりと浮いた鎖骨も、心臓破りの階段を登ってきた直後のせいかこめかみから顎に伝い落ちている汗も、しっとりとした短い黒髪が貼り付いた形の良いおでこも、圭吾を見上げる無防備な上目遣いも、何から何まで丸見えで――成程、それは確かにどストライクだった。
「おかえりなさい」
「えっ……しの、そんなとこで何してんの?」
「ふふ。猫みたいだよね」
漸くその影を圭吾だと認識したらしい恭介が、のろのろと問い掛けた。依然ご機嫌なままの鳴海が、歌うような声でそれに答える。
「土屋先輩」
頑張ったら乳首が見えないだろうかなどという邪念を振り払いつつ、圭吾はその場で立ち上がった。降りるのをやめ、恭介が視線を合わせてくれるのをおとなしく待つ。
「そろそろ謹慎、解いてもらえませんか?」
「……それ、お前から言っちゃうの?」
「すみません、でも」
自ら提案する時点で反省が足りないと指摘されているような気がして、素直に謝る。恭介の近くでおさんどんのようなことばかりして、彼に尽くしてさまざまな面倒を見る日々も存外楽しかったし、自身を見つめ直す時間もできた。改めて考えてみても、きっとそれは、必要な期間だったのだと思う――けれど。
「やっぱり僕は、公私共に、あんたの傍にいたいんです」
ざあ、と、気まぐれな風が圭吾の足元を過ぎ去った。恭介は、眉間にシワを寄せたまま何かを考えている。
「……次にまた、依頼人を危険に巻き込むような真似したら、もう絶対に許せないからな」
「わかってます」
きっぱりと、圭吾が言った。今度こそ、間違えない。間違えたくはない――その覚悟は、既にできていた。
訪れた沈黙は、不安になる程長いようにも思えたし、ほんの二、三度、瞬きをする程度の時間だったようにも思う。顰めっ面だった相貌をふっと崩して、恭介がいたずらを詰め込んだおもちゃ箱のように笑った。
「……降りてこい、しの。鳴海のホットケーキ食べたら、次の依頼の打ち合わせするぞ」
「……っ!」
「わぁ! やったね圭吾! お祝いに俺、天井埋め尽くすまで焼いちゃう!」
鳴海が手を叩いて喜んだ。はしゃぐ声は、水飴のようにキラキラと輝いている。
「それは焼きすぎだと思います」
その隣で拓真が、ひどく冷静な声で突っ込んだ。
「あーあ、ほんとはいち君にも食べて欲しいんだけどなぁ……たっ君、俺に飲ませた魂を抜く薬まだ余ってない?」
「その節は誠に申し訳ありませんでした……」
〝鳴海、やめろ。拓真の傷口をえぐるな〟
秒で腰を九十度に近い角度まで折り曲げて謝る拓真を宥めながら、一之進が静かに鳴海を嗜めた。
「……あ」
「どうしたの恭ちゃん」
「メープルシロップ、買うの忘れちゃった。師匠にメールして、買ってきてもらおう」
〝……おい。メール送るなら、鳴海からってことにしておけよ。恭介がねだるものは全部、業者単位で買いかねないからな烏丸は〟
ゆらり。恭介の周りの影が揺れる。彼曰く毎度呼び出した訳でもないのに勝手に出てくる犬神が今回もいつものごとく自由気ままに現れて、やれやれと首を振りながら恐ろしいことを忠告した。
〝容易く想像できるな……〟
しみじみと、一之進が言った。それは、思い描くには簡単すぎる情景だった。
「あっ! ねーねー、烏丸さんにメールする時にさぁ、メープルシロップのついでに魂を抜く薬、追加で持って来れないか聞いてもらってもいいかな?」
「その節は誠に」
〝いいから、拓真。鳴海も俺に、容易く体を明け渡そうとすんな〟
膝の上に肘を載せて、ぼんやりと屋根の下を眺める。いままでと同じ日常が戻ってきたようで、けれど目の前で繰り広げられるそれは、全く同じものではなかった。一之進と拓真が新たに増えているし、どうやら告白済みらしい鳴海の一之進に対する距離も、以前と比べてとても近い。
(……それに、僕だって)
基本的に、感情が表に出ない質であることに感謝する。白虎の言うように、どこまで隠しておけるのかは分からない。あの上司はとにかく無防備なところがあるし、本当に無理だと思う瞬間は、この先にきっとやってくる。
「――しの!」
それでも、恭介へと向かうこの歪な執着心の正体が、はっきりと分かったことで圭吾の心は少しだけ穏やかになっていた。
「今行きますよ、先輩」
瓦を蹴りあげて、空へ飛び出す。
圭吾の革靴に反射したスカイブルーの青が、刹那、強い光を放った。
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