DRAGGY!ードラギィ!ー【フレデリック編連載中!】

Sirocos(シロコス)

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④〈フロン編〉

8『大切な○が終わってしまうので、警告します』①

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 その後、レンとフラップは合流場所である緑公園の林の奥で、
他のメンバーたちと今回の成果について話し合いました。
不思議にも、ジュンとフリーナも、タクとフレディも、同じあり様でした。
運よく黒金魚を見つけて追いかけたものの、
フリーナもフレディも、どこか追跡に集中できていなかったというのです。
そのせいで、フリーナは電柱やら車やらに危うくぶつかりそうになり、
フレディは追跡の途中でいきなり泣き出して飛ぶことすらできなくなったと、
ジュンとタクは言いました。
しかも、二匹ともチョーカーの効果が思いのほか早く切れてしまい、
もう少しで道行く人に発見されそうになったというのです……。

「今日はもう、お開きな」ジュンはぶっきゅらぼうに言いました。
「レン、こいつらのボスはお前だろ。ちゃんとハナシ聞いてやれよ」

「え、ハナシ?」

「今日のその子たち、ちょっと変だったから」タクはおだやかに言いました。
「何か事情があるなら話してごらんってさ。ぼくたちも聞いてみたんだけど――」

「なーんか、だんまりになってやんの。
やっぱレン、お前から聞くのが一番ってこと。んじゃ、おれはこれで」

「ぼくも帰るよ。みんな、また明日ね」

 そうしてジュンとタクと別れた頃、あたりはすっかり暗くなっていました。
レンは二人に言われた通り、ドラギィたちから話を聞くために、
彼らをバッグの中に入れて、ある場所へやってきました。


 そこは、うさみ町にある小さな神社でした。
緑公園のすぐ近くにある場所ですが、この時間に人が来ることはまずありません。
おまけに、境内は雑木林にすっぽりと囲まれているので、
ドラギィたちとこっそり話をするならちょうどいいかと思ったのです。
自分の部屋で話を聞くこともできますが、
今日はたまたま家のお店が定休日だったので、両親が自宅の中にいるのです。
お母さんが部屋にやってきて、話し中に水を差される心配がありました。

 レンは一応、境内に人がいないことを確認してから、
本殿の前に立っている石灯籠によりかかると、
ドラギィたちをバッグから外に出るように指示しました。

 バッグから出てきた三匹は、
いささか不安そうな面持ちで宙に浮かびながら、レンの顔を見つめてきました。

「……お説教、するの?」と、フリーナが聞きました。

「お説教っていうか、その……まあ、なんていうか。今日は、疲れたね」

「ぼくらは……そうでもない」フレディがつぶやくように答えます。

「あれ、オレだけかな。はは、なんでこんなに疲れてるんだろ。
最初にフラップと会ってから、今日までいろいろとあったものなあ」

 レンは、なんだかやりにくい気分でうなじをかいてから、
いや、そういうことを話したいんじゃないんだと、自分を改めました。

「あのさ……今日のキミたちを見てて思うんだけど。
やっぱり最近、オレの知らないところで何かが――」


  ヘイ!  ヘイ!  気分はスカイハァーイ♪


 突然、ポケットの中のスマホが陽気に歌い出しました。
レンは真面目な話をスマホに邪魔をされた気分になり、少しむっとしました。

「……もう、ジュンかタクだな。話をしろって言ったのはむこうなのに、
明日のことならもう少し後にずらしてちょうだいよ」

 レンはじれったそうにスマホを取り出すと、
画面もよく見ずにコールに応じました。

「……もしもし?」


『こんな時間に悪いねえ、坂本君。今晩もマズイカレーを食べたのかな』


 電話の相手は、なんとヨシでした。
レンは胃がよじれて、思わず目がギッと細くなります。

「小野寺っ……! もうかけてくるなって言ったじゃん!」

 レンが怒鳴り散らすと、
フレディはやっぱり両腕で胸をおさえながら縮まってしまいました。

『あはははっ! 思った通りの反応で笑えるし』

 ヨシがこんなふうにゴキゲンな調子で話しかけてくるのは、
決まってレンをあざけりに来る時だけでした。

「……切るぞ」

『逃げるんだ? 男じゃないねぇ』

 うぐぐぐ……。こうも言われてしまうと、レンも電話を切るに切れません。

「今、フラップたちと大事な話の真っ最中なんだけど」

『へえ、そうだったのかあ。じゃあ、なおさら悪いことしたなぁ~』

 言葉とは裏腹に、ヨシの声には、
これはしてやったぞといういやらしさがにじんでいました。

『まあでも、そのドラギィたちのことで心配だったから、
こうして電話をかけたんだよねぇ、ぼくは』

 嘘に決まっています。そうでなければ、
いったいどうして、こうも鼻につくような調子で話してくるのでしょう?

「何が心配なわけ?」

『うーん、今日はたしか、調査隊の仕事で外に出てたんだろ?』

「……今も外にいるけど」

『どっちでもいいよ、そんなことは。
町中で何か変な事件があるたびに、キミのようなさえない男に引っ張り出されて、
その子たちも大変だよなあ』

 回りくどい話し方に、レンはますます腹が立ってきました。
ドラギィたちは、そわそわしながらレンの顔を見ています。

「何が言いたいんだよ」

『あのさ、なんでも調査隊なんてのをやってて、
本当に意味があると思ってるのか、キミは?』

「はぁ?」

『そこらの不思議事件を解決させるくらいで、
彼らの修行そのものに直結するとは、とうてい思えないんだけどなあ。
ドラギィってのは、生き物を超える力を持った竜なんだぜ?』

「それは……」レンは言葉につまってしまいました。

『まあ、修行になるか、ならないかは、ぼくが決めつけることじゃないな。
キミたち次第なんだよねえ、結局は。……でも、一度よく考えてみるといいよ。
人間界のど真ん中で修行するなんて、明らかにいいやり方じゃないだろうからさ。
何が一番にドラギィたちのためになるか、少し考えれば――』

「はいはいはい、ありがとう!」レンは振りはらうように話をさえぎります。
「あとで、じーっくりと考えてみるから、安心しなって。それじゃあ――」

『あ、そうそう。最後に一つだけ言わせてほしいんだけど』

 ヨシは、ほんの少し間をあけてから、つぶやくようにこう言いました。

『……いねむり坂本君』

 ヨシの口がみにくくゆがむのが目に見えるよう。
レンは、とうとうカンニン袋のが切れてしまいました。


「うるさあああぁぁぁーーーい!!」


 ダンッ!

 レンは、画面をたたき割るような思いで『通話終了ボタン』を押しました。
絶叫に驚いたドラギィたちが、少し遠のいたことにも気づかずに。
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