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③〈フレドリクサス編〉
1『偶然も、必然も、楽しい夢のうち』②
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ぽーーーん!!
きらめくような霧状の穴から、レンとフラップ、ユカとフリーナが飛びだしました。
ドラギィたちは、地面に滑りこむように胴体着陸し、
その弾みで、レンとユカが土の上に投げ出されます。
「あいったたた……みんな、無事だね?」
レンは少々強く打った頭をさすりながら、ゆっくりと起き上がります。
幸い、ユカも、フラップも、フリーナも、怪我はひとつもありませんでした。
全員、こじんまりとした仔犬サイズの状態です。
「あ~ん、もう……怖かったあ~」
フリーナは、身体についた土汚れを、ポンポンとはらいのけました。
「せっかく、ぼくたちの自由なフライト場所が見つかったと思ったのに」
開かれた異界穴を、両手で払うような動作で消しながら、
フラップは残念そうに言いました。
だって、仕方のないことでしょう?
あんなとてつもない生物に目をつけられて、二度と行きたいとは思えません。
「――しょうがない。もう帰ろう。
ユカちゃん、悪いんだけど、キミの銃でオレのことも大きくしてほしいな。
オレのは、どうやら失くしちゃったみたいでさ……」
レンとユカは、チヂミガンの逆行機能で元の大きさになり、
ドラギィたちは、二人の上着の内ポケットに潜りこみました。
そこは、小さな森のそばに立つきれいな民家の、花や低木に包まれた庭でした。
先ほどの異界穴は、植物たちに間にある細い通り道の、
ウッドフェンスにはばまれた突き当たりに開いていたのです。
まさかこんな場所から、あの広大なサバンナに行けるとは、
だれも想像がつかないでしょう。
レンたちは、家主に断りもせずに入ってしまったため、
すぐにでもここから立ち去らなければなりませんでした。
しかし、レンたちが庭の曲がり角を通ったところ、
家の玄関から出てきた一人のおばあさんに見つかってしまいました。
七十歳くらいでしょうか。明るくて優しそうな人です。
「あらまあ、こんにちは。どちら様かしら?」
おばあさんは、レンたちをとがめるどころか、にっこりと出迎えました。
「あ、ごめんなさい! オレたち、べつに変なことしてるんじゃなくて!」
「こ、この庭がきれいだから、ちょっと見てみたくなっただけなんです!
わたしたち、すぐにおいとましますから――」
「いいの、いいの。気にしないで。ゆっくりしていきなさいな。
うちの庭、気に入ってもらえたなら、とても嬉しいから」
なんだか、とてもおっとりとしたご婦人です。
レンとユカは、きょとんとして、おたがいの顔を見るのでした。
「まあ。あなたたちは、何か大切な秘密を抱えているように見えるわね」
「「はい!?」」
子どもたちは、ドキッとして目を丸くしました。
内ポケットに隠れたドラギィたちも、ぶるっと身震いしたのが分かります。
「ふふっ、長く生きていると、なんとなく分かっちゃうのよ。
でもね、おばあちゃんは、秘密を持っている子どもは好きよ。
だって、秘密のある子どもって、とてもかわいいもの」
ユカはともかく、
レンは他人から「カワイイ」と評価されることに慣れていないので、
「へ……はぁ……」
ポカンとしながら、微妙な返事をするしかありませんでした。
ユカは、ここまで言われてしまっては、すぐには帰れないと思って、
ふと庭を見回し……庭の木の幹にかけられた木の巣箱を見つけました。
正面に丸い小さな穴の開いた、スズメくらいの鳥が入りそうなサイズです。
「あそこ巣箱がある! ステキ!」
「あら、よく見つけたわね。あの巣箱、毎年小鳥たちが巣をつくるのよ。
今年の三月には、シジュウカラが巣を作ったわ。雛も、全部で十羽孵ったの」
「「えっ、そんなに!?」」
「ええ。それぐらいが普通なのよ。みんな元気に巣立っていったわ。
わたしの巣箱が、鳥たちのプライバシーをしっかり守っている証拠ね。
これも、この巣箱におまじないもかねて、
『コンドルハウス』なんて派手な名前をつけてみたおかげだわ。
どう、なかなかいいアイデアでしょう?」
「「コン、ドル……!」」
これは偶然のいたずらでしょうか? それとも、必然のうち?
二人は、あの恐ろしいコンドルの途方もない姿を思いだし、
背中が冷や水を浴びたようにぞっとするのでした。
「まあ、二人ともどうしたの? 顔色が真っ青よ」
「いえ、あの……オレたち、そろそろ失礼します」
「ありがとうございました……!」
レンとユカは、開いていた門扉から、そそくさとその家を退散しました。
きらめくような霧状の穴から、レンとフラップ、ユカとフリーナが飛びだしました。
ドラギィたちは、地面に滑りこむように胴体着陸し、
その弾みで、レンとユカが土の上に投げ出されます。
「あいったたた……みんな、無事だね?」
レンは少々強く打った頭をさすりながら、ゆっくりと起き上がります。
幸い、ユカも、フラップも、フリーナも、怪我はひとつもありませんでした。
全員、こじんまりとした仔犬サイズの状態です。
「あ~ん、もう……怖かったあ~」
フリーナは、身体についた土汚れを、ポンポンとはらいのけました。
「せっかく、ぼくたちの自由なフライト場所が見つかったと思ったのに」
開かれた異界穴を、両手で払うような動作で消しながら、
フラップは残念そうに言いました。
だって、仕方のないことでしょう?
あんなとてつもない生物に目をつけられて、二度と行きたいとは思えません。
「――しょうがない。もう帰ろう。
ユカちゃん、悪いんだけど、キミの銃でオレのことも大きくしてほしいな。
オレのは、どうやら失くしちゃったみたいでさ……」
レンとユカは、チヂミガンの逆行機能で元の大きさになり、
ドラギィたちは、二人の上着の内ポケットに潜りこみました。
そこは、小さな森のそばに立つきれいな民家の、花や低木に包まれた庭でした。
先ほどの異界穴は、植物たちに間にある細い通り道の、
ウッドフェンスにはばまれた突き当たりに開いていたのです。
まさかこんな場所から、あの広大なサバンナに行けるとは、
だれも想像がつかないでしょう。
レンたちは、家主に断りもせずに入ってしまったため、
すぐにでもここから立ち去らなければなりませんでした。
しかし、レンたちが庭の曲がり角を通ったところ、
家の玄関から出てきた一人のおばあさんに見つかってしまいました。
七十歳くらいでしょうか。明るくて優しそうな人です。
「あらまあ、こんにちは。どちら様かしら?」
おばあさんは、レンたちをとがめるどころか、にっこりと出迎えました。
「あ、ごめんなさい! オレたち、べつに変なことしてるんじゃなくて!」
「こ、この庭がきれいだから、ちょっと見てみたくなっただけなんです!
わたしたち、すぐにおいとましますから――」
「いいの、いいの。気にしないで。ゆっくりしていきなさいな。
うちの庭、気に入ってもらえたなら、とても嬉しいから」
なんだか、とてもおっとりとしたご婦人です。
レンとユカは、きょとんとして、おたがいの顔を見るのでした。
「まあ。あなたたちは、何か大切な秘密を抱えているように見えるわね」
「「はい!?」」
子どもたちは、ドキッとして目を丸くしました。
内ポケットに隠れたドラギィたちも、ぶるっと身震いしたのが分かります。
「ふふっ、長く生きていると、なんとなく分かっちゃうのよ。
でもね、おばあちゃんは、秘密を持っている子どもは好きよ。
だって、秘密のある子どもって、とてもかわいいもの」
ユカはともかく、
レンは他人から「カワイイ」と評価されることに慣れていないので、
「へ……はぁ……」
ポカンとしながら、微妙な返事をするしかありませんでした。
ユカは、ここまで言われてしまっては、すぐには帰れないと思って、
ふと庭を見回し……庭の木の幹にかけられた木の巣箱を見つけました。
正面に丸い小さな穴の開いた、スズメくらいの鳥が入りそうなサイズです。
「あそこ巣箱がある! ステキ!」
「あら、よく見つけたわね。あの巣箱、毎年小鳥たちが巣をつくるのよ。
今年の三月には、シジュウカラが巣を作ったわ。雛も、全部で十羽孵ったの」
「「えっ、そんなに!?」」
「ええ。それぐらいが普通なのよ。みんな元気に巣立っていったわ。
わたしの巣箱が、鳥たちのプライバシーをしっかり守っている証拠ね。
これも、この巣箱におまじないもかねて、
『コンドルハウス』なんて派手な名前をつけてみたおかげだわ。
どう、なかなかいいアイデアでしょう?」
「「コン、ドル……!」」
これは偶然のいたずらでしょうか? それとも、必然のうち?
二人は、あの恐ろしいコンドルの途方もない姿を思いだし、
背中が冷や水を浴びたようにぞっとするのでした。
「まあ、二人ともどうしたの? 顔色が真っ青よ」
「いえ、あの……オレたち、そろそろ失礼します」
「ありがとうございました……!」
レンとユカは、開いていた門扉から、そそくさとその家を退散しました。
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