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制服管理課のドルマ
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「・・マティアスの言っていたことは本当だ」
カイルは己の戦闘時の数々明らかな変化に顔を青くした。
カイルの制服の繕いには、全く光魔法の施された跡はない。
聖女のような聖力が使われた痕もない。
ドルマがカイルの制服を繕っていた修繕の現場には、辺境一の魔法泊家の跡継ぎであるユールもいたし、ユールが常に所持している魔道具すら一切何も反応しなかった。
ユールに隠れてドルマが何かの魔術を施していたような事態はあり得ないのだ。
だが、明らかに、ドルマが繕った制服を身に纏うようになってから、3人中でドルマの繕った制服を纏った2人ともにわずかに、だが確実に戦闘時の運が良くなった。
猪魔獣討伐の際、少しだけ魔獣の牙の向きが逸れて大きな怪我をしなかったり、スライムの討伐の際はスライムが放った粘膜が、制服にはべっちゃりとついたが、粘膜がつくと切らなくてはいけない羽目になる髪はなんとか無事だったり、その程度だ。
本当にわずか。
だが確実にわずかな幸運に恵まれているのだ。
「光魔法でもなく、加護でもないのであれば、あの子の繕いは一体何だというのだ」
ベッチャリとスライムの粘膜の被害を一人だけ髪の毛に受けてしまったユールが、眼鏡を外して手元のハンカチで拭き始めた。
戦闘中のわずかな幸運は、生死にかかわる大きな重要事項だ。
そしてこの第6要塞は、この30年間どの要塞も成し遂げる事ができなかった、一年の死傷者ゼロという大偉業を成し遂げているのだ。
「魔力も持たない、対人恐怖症の娘の繕い仕事などで、なぜこんな・・」
「すごいだろ、ドルマちゃんの繕い物。だけどな、ユール、自分で破って持っていくのは絶対に無しだぜ。あの娘は自分でわざと破いた制服は絶対に繕ってくれないんだよ。でも同じ自分で破いたやつでも、わざとじゃない奴は繕ってくれるし。なんであの娘にはわざとと、わざと破いたのでないのがわかるんだろうな」
ユールの独り言に反応してくれた騎士の一人が可笑しそうにそう話しかけた。
ドルマちゃん、あれで案外厳しいところがあるんだよな!それにワザとドルマちゃんの仕事増やしたのがバレたらハンザにめちゃくちゃ怒られる!
そう第6の騎士達はドッと笑った。
どうやら己の仕事に誇りを持っているらしいのは、あの怖がりのドルマもハンザと同じらしい。
まさにちょっと袖でも破いてまたドルマに会いにでも行こうかと、よからぬ考えを思っていたマティアスは自分の考えを恥じた。
だがそれでも、どうしてもドルマが気になって仕方がない。
居ても立っても居られないマティアスは、うずうずと、おのれの制服を上から下まで点検しはじめた。
(どこか・・何か破れてないか、ボタンは外れていないか)
大焦りで身体中を探して、マティアスはようやく上着のジャケットのポケットの一つが、少し綻んでいるのを見つけた。
「おい、どこにいくんだマティ!」
マティアスは光の速さで上着を脱ぐと、ユールもカイルもその場に残し、一人で制服管理室に走った。
--------
マティアスが制服管理室の前まで走って到着すると、いつもは開いている部屋の扉は閉められており、何枚かの制服が無造作に扉の前に積んであった。
「あれ?」
息を切らしたマティアスが不思議そうにしていると、先客の中年の騎士がハハハと笑って教えてくれた。
「今日からしばらくハンザは王都の卸売店まで用事があって出張で出掛けてるんだ。ドルマに繕い物の用事なら、制服をここに置いておけば、繕い終わったら扉の前に置いていてくれるから、それを回収すれば良い」
そう言って、この中年の騎士は、繕い終わった制服の山らしいバスケットの中から、丁寧に畳まれている自分のシャツを見つけて大切そうに持ち帰った。
(・・しばらくは会えないのか、残念だ)
マティアスは、ガッカリしたが、気を取り直すとポケットからペンとメモを取り出して、ドルマに当ててメッセージを綴って、制服のジャケットの胸ポケットに入れた。そして丁寧にジャケットを畳むと、そっと他の制服と一緒にドアの前に置いた。
カイルは己の戦闘時の数々明らかな変化に顔を青くした。
カイルの制服の繕いには、全く光魔法の施された跡はない。
聖女のような聖力が使われた痕もない。
ドルマがカイルの制服を繕っていた修繕の現場には、辺境一の魔法泊家の跡継ぎであるユールもいたし、ユールが常に所持している魔道具すら一切何も反応しなかった。
ユールに隠れてドルマが何かの魔術を施していたような事態はあり得ないのだ。
だが、明らかに、ドルマが繕った制服を身に纏うようになってから、3人中でドルマの繕った制服を纏った2人ともにわずかに、だが確実に戦闘時の運が良くなった。
猪魔獣討伐の際、少しだけ魔獣の牙の向きが逸れて大きな怪我をしなかったり、スライムの討伐の際はスライムが放った粘膜が、制服にはべっちゃりとついたが、粘膜がつくと切らなくてはいけない羽目になる髪はなんとか無事だったり、その程度だ。
本当にわずか。
だが確実にわずかな幸運に恵まれているのだ。
「光魔法でもなく、加護でもないのであれば、あの子の繕いは一体何だというのだ」
ベッチャリとスライムの粘膜の被害を一人だけ髪の毛に受けてしまったユールが、眼鏡を外して手元のハンカチで拭き始めた。
戦闘中のわずかな幸運は、生死にかかわる大きな重要事項だ。
そしてこの第6要塞は、この30年間どの要塞も成し遂げる事ができなかった、一年の死傷者ゼロという大偉業を成し遂げているのだ。
「魔力も持たない、対人恐怖症の娘の繕い仕事などで、なぜこんな・・」
「すごいだろ、ドルマちゃんの繕い物。だけどな、ユール、自分で破って持っていくのは絶対に無しだぜ。あの娘は自分でわざと破いた制服は絶対に繕ってくれないんだよ。でも同じ自分で破いたやつでも、わざとじゃない奴は繕ってくれるし。なんであの娘にはわざとと、わざと破いたのでないのがわかるんだろうな」
ユールの独り言に反応してくれた騎士の一人が可笑しそうにそう話しかけた。
ドルマちゃん、あれで案外厳しいところがあるんだよな!それにワザとドルマちゃんの仕事増やしたのがバレたらハンザにめちゃくちゃ怒られる!
そう第6の騎士達はドッと笑った。
どうやら己の仕事に誇りを持っているらしいのは、あの怖がりのドルマもハンザと同じらしい。
まさにちょっと袖でも破いてまたドルマに会いにでも行こうかと、よからぬ考えを思っていたマティアスは自分の考えを恥じた。
だがそれでも、どうしてもドルマが気になって仕方がない。
居ても立っても居られないマティアスは、うずうずと、おのれの制服を上から下まで点検しはじめた。
(どこか・・何か破れてないか、ボタンは外れていないか)
大焦りで身体中を探して、マティアスはようやく上着のジャケットのポケットの一つが、少し綻んでいるのを見つけた。
「おい、どこにいくんだマティ!」
マティアスは光の速さで上着を脱ぐと、ユールもカイルもその場に残し、一人で制服管理室に走った。
--------
マティアスが制服管理室の前まで走って到着すると、いつもは開いている部屋の扉は閉められており、何枚かの制服が無造作に扉の前に積んであった。
「あれ?」
息を切らしたマティアスが不思議そうにしていると、先客の中年の騎士がハハハと笑って教えてくれた。
「今日からしばらくハンザは王都の卸売店まで用事があって出張で出掛けてるんだ。ドルマに繕い物の用事なら、制服をここに置いておけば、繕い終わったら扉の前に置いていてくれるから、それを回収すれば良い」
そう言って、この中年の騎士は、繕い終わった制服の山らしいバスケットの中から、丁寧に畳まれている自分のシャツを見つけて大切そうに持ち帰った。
(・・しばらくは会えないのか、残念だ)
マティアスは、ガッカリしたが、気を取り直すとポケットからペンとメモを取り出して、ドルマに当ててメッセージを綴って、制服のジャケットの胸ポケットに入れた。そして丁寧にジャケットを畳むと、そっと他の制服と一緒にドアの前に置いた。
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