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第1章ーーお人好し追放されるーー

第11話〜お人好しは僅かな希望にかけた〜

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「バーランドさんのあの顔。僕の父に似ていた。あれはやっぱりダメな人の顔だった。クラスのみんな、元也君、真矢さん。大丈夫かな。」

自分が犠牲になる事しか、あの場は救われなかった。バーランドさんがこれ以上、クラスのみんなに何するか分からなかったし、あの場は国王様しか味方がいなかった。もしかしたら国王様の身が危なくなったかもしれなかった。

「国王様ごめんなさい。僕は勇者じゃありませんでした。」

でも、僕が招いた事だ。僕だけがそうなればいい。僕だけが犠牲になればいい。
それに僕の幼馴染と先生はチートだ。きっと、魔王を倒してくれるはずだ。

元々、昨日のバーランドさんと話した時からいつか何かされるという予感はしていた。こんな強硬手段に出るとは思わなかったけど。

場所は分からなかったけど、歩く事に何故か城の執事の人やメイドの方に場所を教えて貰えたので、迷わず出る事が出来そうだ。

「・・・まさか自分からここを出る事になるとはね。」

「・・・これどうぞ。」

「君は・・・。」

僕が王城の外へ出て、門が見えた頃、そこにはマカが立っていた。

「これはなんだい?もしかして君の大事なものなのかな。それだったら貰う訳には・・・。」

僕に彼女が渡したのは何か中で音がする小さな小包。もし、彼女が僕を思って渡してるのだったらそれは貰うことはできない。バーランドさんが、僕に要らぬものを与えたと、今度は彼女を消そうとするだろうから。

「やっぱり、分からないんですね。」

そう彼女が言うと、中を開けてくださいと言うので、僕は小包の封を開けた。

「これは・・・なんだろうもしかして鉱石?こんな高そうなの貰うなんて出来ないよ。」

「それはこの世界のお金です。やはりあなたは異世界人なんですね。バーランド卿が言っていたことが全て嘘だったということが確かめられましたわ。」

・・・そういう事ね。僕がもし勇者に近づいた賊のような者なのなら、この世界のお金は知ってて当たり前。なのに、それを僕は知らなかった。

「アハハ・・・。人を探るのは感心しないよ。」

「バーランド卿は、私が責任をもって排除致します。」

僕はこの時、彼女が何を言っているのか分からなかった。彼女が僕を思って言っているのだと思った。

「それはあまり言っちゃいけない。今度は君がバーランド卿に消されてしまうかもしれない。それにこれは受け取れない。」

そう言って僕は彼女に小包を返そうとするが、彼女は首を横に振って受け取らなかった。

「私は今日はあなたの専属のメイドです。御主人様がお金が無ければメイドは懐から代わりに払う、渡すもの。それはあなたが事件前に私から貰ったことに致します。どうぞ納めてください。」

なんだろう。彼女の目がとても慈愛に満ちているのは。今日一度も見せなかった彼女の新たな一面だ。

「そういう事なら頂くよ。それじゃあね。」

そうして僕は振り返ろうとする。長居はそれだけ彼女へのリスクを上げることになるだろうから。

「あ、待ってください!」

「何?」

「ここから南、ラフォトンの森は唯一魔王軍が恐れて近寄らない場所です。そこは強大な魔物しかいませんが、数は少なく、実はその魔物たちは温厚な魔物が多いので、そこならもしかしたら生き抜くことができるかもしれません!」

それを僕に教えるのはやはり彼女なりの僕に対する同情なのだろうか。彼女の目を見ると本当の事なのだろうし、僕はそれを信じることにした。

「分かった。ありがとう!このまま死ぬ事を覚悟していたけど、少しは生きる希望が見えた!」

彼女は笑った。そして、彼女の最後の一言に僕は温かいものを感じて、王城を後にしたのだった。
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