クラス転移した世界で使えない僕は追い出されました。(仮題)

kashizaki

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第2章ーーお人好しとラフォトンの森ーー

第12話〜お人好しはこの世界でも人を助ける〜

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ラフォトンの森、それは人間、エルフ、ドワーフを始め、様々な種族が一言、「ヤバい。」という感想が漏れる場所。

そして、魔王さえも、その森へ進もうとは、思わない場所。

その森は静かである。木々は風に優しく揺られ、動物たちは共存し合い、奥にあるとされる大きな湖は、ひとつの濁りもない、自然の美しさを見せてくれる天界の楽園。

ただし、それはたった三体の魔物のおかげで成り立っている。

かつて全ての空を支配したとされる体長数十メートルの鳥、天空王フェルニア。

その誇り高き獅子のたてがみは、陸の王者の象徴と呼ばれ、獣たちの全てを支配してきた獣王ラドル。

深海を制するのは誰だと言われた時、この天災しか思い浮かばない。太古に一度、この世界の全てを海へと変えたとされる海王ノヴムラナーヴァ。

現在、この三体は森の外へ出たとされる事は無い。そして、何故その森にいるのか。それも定かではない。


△▽


「だからな、あんちゃん。そこに行くんなら必ず近場か、もしくはその三体のどれかの好む食べ物を持っていかねぇと、一瞬で殺されちまうってことさ!」

「なるほど。つまりはそれさえクリアすれば、取り敢えずは森にすんでも大丈夫って事なんですね!」

今、僕は冒険者ギルドに来ている。そして、人の良さそうなおじさんを見つけ、その人から今から行くラフォトンの森の情報を聞いていた。

マカさんが言っていたことは本当だったようだ。つまりは捧げ物さえ持っていくことが出来れば、温厚な魔物ということなのだろう。

「おいおい!まさか、あんちゃん危険区域ハンターか何かか!?やめとけやめとけ。あそこは別格さ。森の物とかを持ち帰ったり湖の水を飲むと、直ぐに三体が殺しに何処までも来るって噂だぜ。」

いや、怖!?・・・でも。

「それは噂なんですよね。それに、森の外に三体が出た事は無いって行ったじゃないですか!」

「見た者はいないってことはつまりはだな、・・・死んだってことさ。」 

!!?

「三年前、どっかの村のやつが、その森に行って果物を持ち帰ったそうだ。そしたら、その村は二日もしないあと、ただの荒野。なんも残んなかったとよ。記憶だけが、そこに確かに村があったってだけだ。」

それから、僕は気のいいおじさんに、小包に入っていたお金を数枚、情報料的な意味で渡し、冒険者ギルドを後にするのだった。



「おい、今のあんちゃん誰か知ってるか!?」

「おいなんだグロフ。急に立ち上がって。どうしたんだよ酔ったか?」

「違ぇよ!情報料代わりにって、これ渡されたんだけどよ。」

「お前これ国王金貨じゃねえか!!それも3枚!お前これ!」

「そうだよ、俺が一年働いても、稼げない程の金貨だ!!」

「し、し、し知らぬが仏ってやつよ。あんちゃんのことは忘れな。それより今日奢ってくんね?」

「おい。」

御門が温和そうだなと話しかけたおじさん、グロフは、黒斧のグロフと呼ばれ、A級冒険者である。そもそも、この魔王との戦争の中、王国のギルドに残っている者の殆どが高ランク冒険者なのだが、それを御門が知るのは、一体いつになるだろうか。


△▽


「天空王は、リンゴ。獣王は、分かっていない。海王は魚か。行く前に買っておこう。」

それから僕は近くの商店街で、それぞれ購入した。意外と小包の中のお金は良い物だったらしく、何か二つとも凄い量を貰ってしまった。ついでに貴重らしいマジックバックも。

まぁ、貰えるものは貰っておこうかな。時間止まるらしいし。

「あ、痛!」

あ、目の前で女の子が転んだ!

「大丈夫?」

「ぅぅうう。」

な、泣いちゃってるかぁ、足も擦りむいちゃってるし、えっと確か内ポケットに。

「ちょっと染みるけど我慢してね。」

僕は普段、入れている消毒液と絆創膏を取り出すと、それを傷口に、まずは消毒液をかけた。

「痛いぃ。」

「大丈夫だよー。お兄ちゃんがこんな傷治してあげますからねぇ。」

傷口が充分に濡れたのを確認すると、次は絆創膏をその上にピタリと貼った。

「お兄ちゃん、これなぁに?」

「これはね。お兄ちゃんの魔法なんだよ!三日くらいたったら剥がして大丈夫だと思うから、それまでは剥がさないようにね!」

恐らく、この世界はラノベとおなじように、現代日本のように、文明は進化してないはずだ。こうやって傷口を消毒するとか、絆創膏で保護するなんて、誰も考えないだろう。だって魔法で一発なんだろうし・・・。

「お兄ちゃん凄い!ありがとう!」

そうして手を振ってどこかへ行く女の子に僕は笑顔で手を振り返した。

「さて、死ぬ前にひとつ良い行いは出来たかな。」

そして、御門は、ラフォトンの森へまた歩き出すのだった。



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