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第2章ーーお人好しとラフォトンの森ーー

第13話〜お人好しは気に入られる〜

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「ここからがラフォトンの森か。」

あれから歩いて丸二日。ラフォトンの森らしき看板が見えてきていた。そして、僕は意外と警備とかそういうのはされていない事に驚いた。何せ、おじさんがS級何とかって言ってたくらいだし。

「・・・これはえっと、まぁいいか!」

目の前のラフォトンの森の表記が書かれてあった木の看板に、なんか凄いのが書かれていたけど、僕は見なかったことにした。決して現実逃避じゃないよ!?

『ここから先ラフォトンの森近寄る事は極力無いように。
世界ランク指定冒険者ギルド認定S級危険区域』


△▽


「わぁ・・・!」

中はとっても綺麗だ。って聞いたけど、本当に声が出るほど自然を感じる美しさだ。

「本当にここにそんなに凄い魔物がいるなんて思わないくらいだなぁ。」

本当に何処をみても飽きない。これは、正直日本にもない程の所ではないんじゃないかな。

「おっと、忘れる所だった。」

周りに集中しすぎて、忘れていたが例の物があったので思い出す。

『入ったら直ぐに三つの祠があるからそこのどれかに持ってきた供物を置けよ!』

という事なので、マジックバックの中から、樽に詰められた大量の魚から何匹か取りだし、そして、同じくリンゴを三つほど取り出す。

「このまま置いても大丈夫なのかなぁ。」

「せめて、学校に持って行った僕のバックがあれば、色々と・・・」

その瞬間、マジックバックが光を帯びる。

「え!?」

慌てて中を確認すると、何故かマジックバックの中には、王城の部屋へ置いていったはずの、僕のバックが入っていた。

「ふぁ、ファンタジー・・・いぃ?ま、まぁいいや。」

中から筆箱を取り出しカッターを取る。リンゴを剥く必要があるし、軽く魚のえぐみを取るためだ。
どちらも、もしかしたら魔物だからそのままガブッといきそうだけど、どうせなら美味しい方が良いと思った。

「フ~ン、フフ~ン」

鼻歌交じりにそこで軽く処理を行う。長年キッチンに立っていた僕に、料理での不可能は無い!

という訳で、しっかり小分けでリンゴは切り終え、魚は中の内蔵、鱗などを処理。

「居候させていただきます。どうか殺さないでください!」

と、特に意味が無いとは思うが、祠なのでしっかり拝み、僕は森を進んだ。


御門がいなくなって早々、祠の前には二人の人影があった。

「人間が入ってきたか。どうだ?あの者、長く居座るつもりだぞ?」

「別にいいんじゃない?他のとは違って、しっかり魚の何たるかを分かってそうだし。」

「お主はそんなのを気にしていたか?食えればよかろう食えれば。」

「ったく、分かってないわね。どうしても魚を食べると中の内蔵とかそんなので、変な味がしたりするのよ。骨とか喉に挟まったらもうイラつきすぎて寝れないくらい。」

そう話す二人の元に、もう一人遅れて小さな少年のような人物が降りてくる。

「また、僕の供物無かった・・・。」

「お願いすればいいんじゃない?あの子なら、本当に生物か?ってくらいビックリする程心が綺麗だし大丈夫そうよ?」

「そ、そうかなぁ?」

「うむ。小分けで少し残念だったがこれもまた良き。」

「ふふん。これで少しはただ食事をするだけなのは面白みに欠けると分かったかしら?」

二人はそうして、お互いに御門が置いた供物を口に入れた。

「むん!?これ、何よ!何の魚!?」

だが、彼女はそれを食べた瞬間驚きに目を見開いた。

「いや、違うわ。これは処理だけじゃなくて、他にも何か。とにかく新鮮な海の味がするわ!」

それは、御門が腐らないようにと、まぶしておいた塩のおかげなのだが、それを知らない彼女はその味に驚くことになった。

「こちらもその海の味が少しだけする。だが、それでよりこのリンゴの甘さが引き立っている!」

そちらも同じく腐らないように塩をまぶしたリンゴだ。

「「これは!!」」

「え、えっとどうしたの二人とも?」

二人は考える。既に御門をこの森へ滞在の許可をするのは確定、後はどれだけ自分たちの実入りが良い方向へするかを。

「あの者に、毎日寄こすように出来るかの?」

「難しいけど、この姿なら注意喚起をする風に近づく事ができるわ。」

「え、えっと、僕にも何かくれる物があったらお願いしたいんですけど。」

そして、御門は知らぬ間にこの森の実質主である伝説の魔物の三体に興味を持たれるようになった。

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