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第2章ーーお人好しとラフォトンの森ーー

第15話〜お人好しは力尽きる〜

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ラフォトンの森に来てから1ヶ月。僕は何故か、まだ生きていた。

毎日、3つの祠に魚とリンゴと、そして・・・骨とを置いて。

骨についてだが、前の世界で、よく隣のおじさんの愛犬が、学校から帰る時に僕に擦り寄ってくるので、いつも学校用のバックに仕込んでおいた犬用の骨付き肉で代用した。

1パック10個入りだった為、10日しか、本来なら僕は生きられなかったはずなのだが、全て無くなる事にバックが輝き、元に戻るため、僕は命を繋ぐことが出来た。獣王が上げていた骨が犬用だと知ったら僕は即、殺されるだろうから毎日死ぬ恐怖でいっぱいだ。ある意味生きてるより辛い。

そして、食料面だがとにかくこの森でただ、毎日落ちてる枯葉や木、石を使って、バックに入っているマッチで火を炊き、魚を焼いて食べるという毎日を送っていた。何故かノラさんとよく会い、魚を彼女にも振る舞うのは、彼女がよくこの森を使うからだろうか・・・。


だが、それもここまで。僕は今日、死ぬか、この森を去らなければならない。それは、簡単な話、魚とリンゴが遂に尽きたからだ。逆によくここまでもってくれたと思ってもいい。

ぐうぅぅ。とまたお腹がなる。

「腹減ったなぁ。」

もしかしたら、魚もリンゴも無くなったら元に戻るかもという淡い期待を持っていたのだが、このマジックバックは輝くことは無かった。多分、異世界の物が関係しているのではないかと踏んでいる。

ここから去るか死ぬか。僕に残されたのは、奇しくもこの世界から二日目と同じ選択肢だった。

「死んだ方が良いのかな。こんな辛い日々が続くなら。」

口に出すと、涙が零れてきた。
僕はもう悟っていた。どちらに転んでも、結局行き着く先は死だ。それなら早く、僕は死にたいと。

「ごめん、元也君、真矢さん。クラスのみんな、、母さん、めぐ。・・・父さん。」

そうして、御門は湖のほとり、誰も来ない静かな安らぎの世界の中、深い眠りについた。


△▽


ここ2日、私たちにとって、異常事態と言えることが起こっていた。

「おい、今日の供物がないぞ?どういう事だ。海王、お主まさか殺したのではあるまいな?」

「私じゃないわよ!それに、あの子と最近会った時も、大丈夫そうだったし。」

私が三日に一度、ミカド君に会って二人より供物を貰っていたなんて言えない。いや、それよりもあの子は確かに元気そうだった。

「もしかして、もう森に居ないのかな?」 

「「あ!」」

その事を忘れていた。そうだ。ミカド君は、確かにこの森にいるみたいには言ってたけど、ずっととは限らない。
そもそもこの森に、私が考えるのも何だけど、こんなにいた生き物なんていなかった。

「そうか、行ってしまったかのう。それは少し残念だ。いや物凄く残念だ。好物を毎日食べられるのは一重にあの存在のおかげだったからな。」

私たちは何も食べなくても生きていける。それは、私たちが魔物だから。それも稀な。
生き物とは違い、私たちは魔から生まれた生き物。私たちはそれぞれ、生き物の感情や想像、考えで空想上にいた存在が具現化した非常に稀な魔物。

ある人間の私でも興味を引くような一説だと、魔物とは、世界の意思。そして、バランスを保つために生まれたと言われている。だからこそ、魔物は本来無かった存在だから食事、自我、そして生殖を必要としないと。

私たちの帰りの足取りはそれぞれ重かった。実はこの話し合いは待っていた二日間、ずっと行っていたのだ。そして、出た結論。私たちはそれぞれミカド君という存在を少なからず欲していたのだと分かった。

私は自身の巣である湖に着くと、そこで本来の姿を現す。かつて世界を全て海へと変えたことで、海王と私は呼ばれ、様々な私の本来の姿の特徴を、人間たちは試算してきたが。

「本当はただの人魚なのよねぇ。」

全く滑稽だこと。誰が数十メートルの怪物だとか、数千キロの重さがあるクジラの化け物だって。

ミカド君が来たことで、巣に、そして本来の姿に戻るのは、約1ヶ月ぶりだ。久しぶりの湖を有意義に私は一周しようとする。

だが、その途中に気がついた。湖のほとり、そこに誰かが倒れていると。

「!!?み、ミカド君!!」

そして、私はその存在を察した途端、いてもたってもいられなくなった。本来、殺す者や、あの二人にしか見せない私の本来の姿のまま、私はミカド君を叩いた。

起きてくれ、どうか起きてくれと。
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