クラス転移した世界で使えない僕は追い出されました。(仮題)

kashizaki

文字の大きさ
19 / 36
第2章ーーお人好しとラフォトンの森ーー

第16話〜お人好しは海王に救われる〜

しおりを挟む
「・・・・・・あれ、ノラ・・・さん?す、すみません。魚、無くなっちゃって・・・。」

え?どういう事?ついこの前貰った時は、まだ余ってるって言ってた筈なのに。

「ミカド君、あなた私に嘘ついたの?」

私は何故か怒っていた。それは、海王である私に嘘をついていたという怒りではなく、何故教えてくれなかったのかというもので。自分でも、何でそれに怒っているのか分からなかった。でも、その怒りは、彼の次の言葉で、ひとつの答えになった。

「う、嘘ですか・・・。はは。すみません。何せ食べるものがそろそろ無くなるって言うと、困らせちゃうかなと思って。」

そうか、ミカド君は他人には優しくするけど、自分が他人の迷惑にはなりたくない人なんだ。

今思えば、いつかのミカド君は、当初より幾らか痩せていたのを思い出す。だけど、私は自分の供物の為にミカド君自身の事なんて一切考えていなかった。

「ごめんね。」

「え?」

私が謝ったなんていつぶりだろ。いや、初めてかもしれない。でも、それ程私は、ミカド君がここまでなってしまった原因だと、分かってしまった。

相手は人間、所詮人間なんだから、私よりも何千倍も弱い生物なんだから、強い私は利用して当たり前。今まではそう思っていたのに。

「君の優しさは、私たちには無いものだよ。ただ、暴力で全てを解決する私たちには。」

何百年か前、何処かの人間が書いた本の一節に、弱肉強食という言葉があった。弱いものは強いものに淘汰される。弱きものはただ、強きものに屈し、強きものは弱きものを喰らう。
私はその言葉に、激しく同意した。ただ、世界中の海を暴れ回っていた私が、人間に興味を抱いた時だった。

だけど、私は彼を見て思ってしまった。何も無いのに何かができる彼は、果たして本当に弱きものなのか。それなら彼は何なのか。

「私たち・・・って。僕は優しくなんて無いで・・・す・・・。」

そう言ってミカド君はまた気を失った。

「でも、これだけは言えるね。ミカド君、君は本当に強いだ。・・・私は君に興味が湧いたよ。」

だから、少し記憶を見させてもらうね。


△▽


「で、結局お主が元凶という訳かの?」

「まぁそうだね。本当にミカド君には悪い事をしたよ。」

「「え!?」」

私は、その後ミカド君に森の木の実を何個か上げたあと、二人に祠でその話をしていた。

「あの海王、いや儂らの女王が素直に自分の非を認めただと・・・。」

「これは、何かあったのかな・・・。」

あ、いけない。そろそろミカド君が起きちゃう。

「じゃあそろそろ私は行くね!」

そう言って振り返ろうとすると、フェルに止められた。

「待て待て、お主、ミカドは飢餓状態なのだろ!?早く何か持っていかねば。」

「そうだよ!あの肉付き骨が貰えなくなっちゃうって。」

「大丈夫だよー、もうちゃんとミカド君には、フカツの実も食べてもらったし。」

「ま、待て!だから、今ミカドは寝ているのだろ!どうやって食べたって・・・まさか!?」

「え!?も、もしかしてノラ、君!」

っち!感のいい男どもめ。でも、別にいっか。

「ご想像にお任せしまーす!」

そう言って、私はスキップでまた巣へ向かった。

「あれがなぁ。ミカド、頑張るのだぞ。」

「ノラの変わった理由はこれかぁ。僕もいつか・・・。」

後に残された二人の王は、どちらも最初はミカドの無事を喜んだが、今は何とも言えない表情をしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...