練習なんかじゃ終われない!

リツカ

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「はあああぁッ? 結局今までと同じ男とデートしてるってどういうことだよ?」
「どういうことって言われても、そのままの意味だけど」

 光秋はなるべく淡々と返して、目の前のたこ焼きをたこ焼きピックでくるくると回転させた。
 自分でたこ焼きを作るのは随分久しぶりだが、なかなか美味そうにできていると思う。タコだけでなく帆立やチーズなども入れたので、今から出来上がりが楽しみだ。

「……おい、のん気にたこ焼き焼いてる場合じゃねぇだろ。ちゃんと説明しろ。この前、俺が一緒に選んでやった男はどうなったんだよ?」
「コウさんは俺と会う前に熱が出たらしくて、代わりにリョク君が来たんだよね」
「はあっ~? 代わりとかそんなのあり?」
「知らないよ。急に来たんだもん」
 
 言い返しながら、光秋は出来上がったたこ焼きを皿に盛っていく。

「はい、ルート君。右が普通のたこ焼きで、真ん中が帆立、左がチーズね」
「ありがとうございます」

 秋也の恋人であるルートはにこりと笑い、たこ焼きの盛られた皿を受け取った。
 まるで芸能人のような華やかな顔立ちをした彼も、リョクに負けず劣らずの美青年である。

 ──秋也は別に面食いじゃないって言い張ってたけど、こんなかっこいい男の子と付き合ってたら説得力ないよなぁ~……まっ、今はそんなことよりたこ焼きたこ焼き!

 光秋は自分と秋也の分のたこ焼きを皿に取り分けたあと、その上にたこ焼きソース、青海苔、たっぷりのマヨネーズと鰹節をかけた。
 ふーふーと軽く息を吹きかけてから、熱々のたこ焼きを口に運ぶ。
 一口目はオーソドックスに普通のたこ焼きからと決めていた。出汁のきいたトロトロの生地と、大きめに切ったぷりぷりのタコが美味い。刻んだ紅生姜もいいアクセントになっている。

「ん~っ! 美味しいっ!」
「うん、やっぱ自分で作るたこ焼きっていいよなぁ~……って、んなことはどうでもいいんだよ。話逸らすな」
「別に逸らしてないけど」
「なら、ちゃんと説明しろって。話の流れから言ってくんないと、こっちはわかんねぇだろ」

 秋也から『タコパするから家来いよ』と誘われた時点で、こうなるのはわかっていた。
 光秋は一度箸を置いて、姿勢を正す。
 そして、軽く息を吸い込んでからゆっくりと口を開いた。

「この前さ、お前にリョク君のこと好きなのかって聞かれたとき、『好きだけど好きじゃない』って答えただろ?」
「ああ」
「あれ、やっぱ嘘」
「……は?」
「絶対付き合ったりできないし、あっちからしたらただの客だってわかってる……けど、それでも俺はリョク君のことが好き。リョク君以外と付き合いたいと思わないし、興味もない。だから、もう恋人を作る練習とかどうでもいいんだ。俺はリョク君と一緒にいられるだけで幸せだから」
「…………」

 秋也だけでなく、ルートも愕然とした表情で光秋を見ていた。
 やがて、秋也の唇が戦慄き、引きつった声で光秋に問いかけてくる。

「……冗談だよな?」
「冗談じゃない。本心」
「ッ~~~~このバカッ!!」
「ア、アキちゃんっ、落ち着いて……!」

 ダンッとテーブルを殴り付ける音とともに、身を乗り出してきた秋也の手が光秋の胸ぐらへと伸びてきた。
 秋也の隣に座るルートが間一髪それをとめてくれたおかげで光秋は秋也に締め上げられずに済んだものの、当然ながら秋也の怒りはまったく収まっていない。
 ルートから羽交締めにされながらも、秋也は鋭く光秋を睨み付ける。

「光秋、正気に戻れ。お前、騙されてんだよ。洗脳されてる」
「違うよ。俺、ちゃんと自分が馬鹿なこと言ってるってわかってるもん」
「…………」
「ただ、俺がリョク君のこと好きになっちゃっただけ。それを否定して認めないふりして生きてくより、開き直っちゃった方が楽なんだよ。だって好きなんだもん」
「『だって好きなんだもん』ってお前なぁ、恋愛脳の女子中学生じゃないんだからさぁ……あー、なんか頭痛くなってきた……」

 秋也が額に手を当てる横で、秋也の拘束を解いたルートは腕を組んで「うーん……」と唸った。
 かと思うと、妙にすっきりした顔をして「いいんじゃないかな」と言い放つ。
 秋也は怪訝そうに顔をしかめた。

「……はっ? なにが?」
「光秋さん、今はそのリョクってひとのこと好きでいてもいいんじゃない? 好きになっちゃったなら仕方ないよね。相手が借金とか風俗で働かせてまで貢がせようとしてきたら話は別だけど、今のところそんなこともなさそうだし」
「ルッ、ルートっ!? お前までなに言ってんだよ!?」

 秋也は目を剥いてルートに食ってかかった。
 しかし、対するルートは涼しい顔のまま、秋也を諭すように話しだす。

「アキちゃんは光秋さんに偉そうなことばっか言ってるけどさ、こうなった原因はアキちゃんにあるってわかってる? レンタル彼氏のサイトを光秋さんに教えたのはアキちゃんなんでしょ?」
「ぐっ……そ、それは……」

 ばつの悪い顔をした秋也が言葉に詰まった。
 その合間にも、ルートは畳み掛けるように喋り続ける。

「恋愛経験のない光秋さんがそんなサービス使ったらどうなるのか、少しも考えなかったの? 好みのタイプのひとに優しくされて好きって言われたら、誰だって本気で好きになっちゃってもおかしくないでしょ」
「…………」
「俺はアキちゃんには光秋さんを責める資格なんてないと思うけどな」

 容赦ない言葉の弾丸に、とうとう秋也は口をへの字にして黙り込んだ。
 俗にいう『ぐぬぬ』の表情である。
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