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しおりを挟む「ルート君、今日はいろいろ付き合ってくれてありがとね!」
「こちらこそ、アキちゃんの話とかたくさんできて楽しかったです」
だいぶ長居してしまったコーヒーショップの前で、光秋とルートはにこやかに別れの挨拶を交わしていた。
ルートは光秋の手にぶら下がった小さな紙袋をちらりと見て、優しく目を細める。
「プレゼント、喜んでくれるといいですね」
「うん。俺ひとりだと選べなかったから、ルート君がいてくれて助かったよ」
「いえいえ、俺は店を紹介しただけなので」
リョクの誕生日プレゼント探しに行き詰まっていた光秋を救ってくれたのは、たまたま近くに買い物に来ていたルートだった。
光秋が藁にもすがる思いでルートに事情を説明すると、ルートはあっさりと光秋に手を貸してくれた。
『リョクさんって、普段どんなものを身に付けてるんですか?』
『服装に合わせてるみたいだから日にもよるけど、アクセサリーは多い方かな……指輪とか、バングルとか……あ、あとピアスも開けてる』
それを聞いたルートが光秋を連れて行ってくれたのが、表通りから少し離れたところにある少し怖い外観のピアスショップだった。
顔面ピアスだらけで両腕にタトゥーの入った厳つい男性店員に出迎えられたときは、光秋も思わず後退りしかけた。
けれども、彼はどうやらルートの友人らしく、ピアスのことなどなにも知らない光秋にも丁寧に接客をしてくれた。
『プレゼントだったら、こういうシンプルなのが無難っちゃ無難ですね。もちろん、こういう派手目のドロップピアスで印象に残るプレゼントを、ってのも有りだと思いますけど』
『うーん、シンプルなのがいいですかね……こんな感じのとか、俺から見ても綺麗でかっこいいなぁって思うし……』
『自分が相手に付けて欲しいピアスを贈るってのもいいッスよねぇ~。スタッドピアスなら、最近はここらへんがよく売れてますよ』
『……この黒いのかっこいいけど、もしかしたら似たようなの持ってるかも……』
『いいんすよ! ピアスってなんだかんだすぐ行方不明になるんで、似たようなのいくつあっても困らないッス!』
ピアスだらけの顔に浮かべられた満面の笑みに背中を押されて、光秋はブラックダイヤモンドのスタッドピアスを購入した。
実はその時点では予算をそこそこオーバーしていたのだが、会計時に『ルートの彼氏のお兄さんなら、安くしときますよ!』と言ってくれて、なんとか予算内の値段で買うことができた。
厳つい見た目に反して、本当に優しい店員さんである。
そんなこんなで光秋は、リョクのプレゼントをゲッドできた。
とてもほくほくとした気分だ。
光秋はプレゼントのお礼も兼ねてルートをコーヒーショップに誘い、ふたりでいろいろなことを話した。
といっても、光秋とルートの間で上がる話題なんて、秋也のこととリョクのことくらいしかない……のだが、それが大いに盛り上がって、何時間も窓際の席で話していた。秋也と違ってルートは光秋の恋に否定的でないので、いろいろと話しやすかったというのもある。
あとたぶん、お互いいわゆる恋バナというのが好きなたちなのだと思う。周りに聞こえないようにこそこそと顔を寄せて話すというのも、修学旅行の夜を思い出すようで楽しかった。
まだまだ話し足りないくらいだったが、互いに陽が落ちる前には帰りたかったので、泣く泣く解散の運びとなった。
ルートも秋也の話がたくさんできてうれしかったのか、にこにこと笑みを浮かべながら頭を下げる。
「今日はごちそうさまでした。じゃあ、また」
「うん。秋也によろしく」
「はい。プレゼントの件は伏せて、今日会ったことは軽く話しとくんで」
「了解。今度は三人でまたご飯食べようね」
「ぜひ」
「じゃ、またね~」
軽くあげた手をひらひらと振って、ふたりは別れた。
光秋はそのまま軽い足取りで駅へと向かう。
──今日、めちゃくちゃ良い日だったな。
リョクのプレゼントを買えて、リョクの話も聞いてもらえて、本当に最高の日だ。
このあとの夕飯がどれだけ質素でも、今日だけはきっと耐えられるだろう。
──リョク君の誕生日まであと二週間か……プレゼント、喜んでくれるといいなぁ。
九月に入ってから、もうすでに予約は済ませてある。
あとはがんばって節約を続けて、リョクの誕生日を迎えるだけだ。
光秋はにやにやしながら家へと帰る。
今日ばかりは、周りの白い目など少しも気にならなかった。
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