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8.再会
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落ち込むけど、時間は待っちゃくれない。時は金なり。
僕は夕方になると、変装して酒場にアルバイトに出掛けた。
主に調理と配膳だけど、軽くギターやピアノを弾いて歌うこともあるし、色々やる。
給料は夜だけあってそこそこいいし、何よりお客から貰えるチップがいいんだよね。
頭の中がモヤモヤした時は、働くに限る。余計なことを考えずに済んで、お金も貰えるなんて最高じゃない?
「マリウス!3番にビール2つ!」
「ハーイ喜んでー!」
やば、つい居酒屋のノリが出ちゃう。あ、弁解するけど前世で未成年飲酒したりはしてないからね!
ただ、これやってたらもしかしたら僕と同じ転生者が見つかるんじゃないかな、と思ってやってたら癖になっちゃった。
今は逆に見つかっちゃダメだから隠さないとなんだけど、習慣ってなかなか変えられない。
常連さんたちにビールを運ぶと、酒場のドアが開いた。僕は0円スマイルでご新規さんを歓迎する。
「いらっしゃいませーーー!」
そんで、固まった。相手も固まった。
2人して互いを見つめ合って立ち尽くす。
(な、なんで、なんでウィルフレッドがーーー⁉︎)
「マリウス、何やってんだい?早くお客様をお通しして!」
女将さんの声で僕はハッとして、笑顔を取り繕った。
「いらっしゃいませ!こちらのカウンターへどうぞ!」
僕が促すけど、ウィルフレッドは眉を顰めて動かない。
「何故、君がこんな所に」
そうだよねー、気になっちゃうよねー、だけどね。
「他のお客様のご迷惑になりますので」
僕がわざとらしいまでの営業スマイルで言い放ったら、ウィルフレッドはようやっと後ろで新しいお客さんがつかえてるのに気づいた。
慌てて僕の言う通りに指示したカウンターに座る。
「いらっしゃいませー!何名さまですか?」
「今日は3人!マリウスくん、今日も元気だね」
「働くの、大好きなんで!沢山飲んでってくださいね。5番テーブル3名様はいりまーす!」
馴染みのお客さんに軽口を叩きながらテーブルに通し、僕は声を張り上げる。
お客さんは座ると同時にビールを3つ注文し、僕はその場で声を張り上げて厨房にオーダーを通した。
「5番テーブル、ビール3つお願いしまーす!」
「あいよー!」
僕は返事が返ってきたのを確認して、ウィルフレッドの席にオーダーを取りに行った。
「お待たせしました。ご注文はお決まりですか?」
普通に働いてる僕を見て、ウィルフレッドは困惑してるみたいだった。まあ気持ちはわかるけど、飲みにきたんなら、飲みながら考えたらいいじゃん。
あ、ちなみにこの世界ではお酒大体15歳ぐらいから飲んでるから、大丈夫だよ。
「君は、何故こんなところで働いてるんだ?」
「ご注文は何になさいますか?」
僕はウィルフレッドの質問を完無視して繰り返した。ウィルフレッドはさすがに気圧されて、ビールを注文する。
「はい、ビールですね。うちフードも美味しいんで、良かったらどうぞ」
僕はそれだけ言って、カウンターを離れた。
女将さんのビール上がったよー、という威勢の良い声に応えて、僕はビールをテーブルに運ぶ。
続いてウィルフレッドのビールもできて、僕はそれをカウンターに運んだ。
「お待たせしました。他にご注文は?」
「いや…ない。それより話を」
「どうぞごゆっくり」
僕が背を向けると、ウィルフレッドが僕の手を掴んで引き止める。
反射的にやったから加減が効かなかったのか、結構な力で掴まれた。痛い。
「……仕事中だから」
僕が睨むと、ウィルフレッドはたじろいだ。
パッと手を離されると同時に、お客さんの注文の声があがる。
「マリウス、ビールもう3つ!フライドポテトとベーコン炒めも頼む」
「こっちも、ビール2つ!あとダシマキ!」
「はいよろこんでーーー!」
僕はウィルフレッドを振り切って、仕事に戻った。
掴まれたとこがまだ痛い。
でも、僕は不快感よりもドキドキの方がずっと大きかった。
(推しに……ウィルフレッドに触られちゃった)
別に好意からとかそんなんじゃないし、むしろ嫌われるのはわかってるけど、それでもドキドキした。
推しの体温。推しが生きてるんだ、って実感は、言葉にできない。
「あれ?マリウス、顔赤くないか?」
「そ、そうですか?熱いからかな?アハ、アハハ」
僕はお客さんのツッコミをかわしながら、ウィルフレッドの視線を背中に浴びて1日仕事をした。
僕は夕方になると、変装して酒場にアルバイトに出掛けた。
主に調理と配膳だけど、軽くギターやピアノを弾いて歌うこともあるし、色々やる。
給料は夜だけあってそこそこいいし、何よりお客から貰えるチップがいいんだよね。
頭の中がモヤモヤした時は、働くに限る。余計なことを考えずに済んで、お金も貰えるなんて最高じゃない?
「マリウス!3番にビール2つ!」
「ハーイ喜んでー!」
やば、つい居酒屋のノリが出ちゃう。あ、弁解するけど前世で未成年飲酒したりはしてないからね!
ただ、これやってたらもしかしたら僕と同じ転生者が見つかるんじゃないかな、と思ってやってたら癖になっちゃった。
今は逆に見つかっちゃダメだから隠さないとなんだけど、習慣ってなかなか変えられない。
常連さんたちにビールを運ぶと、酒場のドアが開いた。僕は0円スマイルでご新規さんを歓迎する。
「いらっしゃいませーーー!」
そんで、固まった。相手も固まった。
2人して互いを見つめ合って立ち尽くす。
(な、なんで、なんでウィルフレッドがーーー⁉︎)
「マリウス、何やってんだい?早くお客様をお通しして!」
女将さんの声で僕はハッとして、笑顔を取り繕った。
「いらっしゃいませ!こちらのカウンターへどうぞ!」
僕が促すけど、ウィルフレッドは眉を顰めて動かない。
「何故、君がこんな所に」
そうだよねー、気になっちゃうよねー、だけどね。
「他のお客様のご迷惑になりますので」
僕がわざとらしいまでの営業スマイルで言い放ったら、ウィルフレッドはようやっと後ろで新しいお客さんがつかえてるのに気づいた。
慌てて僕の言う通りに指示したカウンターに座る。
「いらっしゃいませー!何名さまですか?」
「今日は3人!マリウスくん、今日も元気だね」
「働くの、大好きなんで!沢山飲んでってくださいね。5番テーブル3名様はいりまーす!」
馴染みのお客さんに軽口を叩きながらテーブルに通し、僕は声を張り上げる。
お客さんは座ると同時にビールを3つ注文し、僕はその場で声を張り上げて厨房にオーダーを通した。
「5番テーブル、ビール3つお願いしまーす!」
「あいよー!」
僕は返事が返ってきたのを確認して、ウィルフレッドの席にオーダーを取りに行った。
「お待たせしました。ご注文はお決まりですか?」
普通に働いてる僕を見て、ウィルフレッドは困惑してるみたいだった。まあ気持ちはわかるけど、飲みにきたんなら、飲みながら考えたらいいじゃん。
あ、ちなみにこの世界ではお酒大体15歳ぐらいから飲んでるから、大丈夫だよ。
「君は、何故こんなところで働いてるんだ?」
「ご注文は何になさいますか?」
僕はウィルフレッドの質問を完無視して繰り返した。ウィルフレッドはさすがに気圧されて、ビールを注文する。
「はい、ビールですね。うちフードも美味しいんで、良かったらどうぞ」
僕はそれだけ言って、カウンターを離れた。
女将さんのビール上がったよー、という威勢の良い声に応えて、僕はビールをテーブルに運ぶ。
続いてウィルフレッドのビールもできて、僕はそれをカウンターに運んだ。
「お待たせしました。他にご注文は?」
「いや…ない。それより話を」
「どうぞごゆっくり」
僕が背を向けると、ウィルフレッドが僕の手を掴んで引き止める。
反射的にやったから加減が効かなかったのか、結構な力で掴まれた。痛い。
「……仕事中だから」
僕が睨むと、ウィルフレッドはたじろいだ。
パッと手を離されると同時に、お客さんの注文の声があがる。
「マリウス、ビールもう3つ!フライドポテトとベーコン炒めも頼む」
「こっちも、ビール2つ!あとダシマキ!」
「はいよろこんでーーー!」
僕はウィルフレッドを振り切って、仕事に戻った。
掴まれたとこがまだ痛い。
でも、僕は不快感よりもドキドキの方がずっと大きかった。
(推しに……ウィルフレッドに触られちゃった)
別に好意からとかそんなんじゃないし、むしろ嫌われるのはわかってるけど、それでもドキドキした。
推しの体温。推しが生きてるんだ、って実感は、言葉にできない。
「あれ?マリウス、顔赤くないか?」
「そ、そうですか?熱いからかな?アハ、アハハ」
僕はお客さんのツッコミをかわしながら、ウィルフレッドの視線を背中に浴びて1日仕事をした。
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