付与術師の異世界ライフ

畑の神様

文字の大きさ
22 / 91
王都編

パートナー

しおりを挟む
「ところでノエルはどんな装備が欲しいんだ?」
「……動きやすいもの…武器は見てから決める」


 そんな会話をしながら歩いているとすぐに武具屋に到着した。


「いらっしゃい、今日は…って昨日の兄ちゃんじゃねーか、二日連続なんてどうしたんだい?」


 何故か武具屋の店主も彰のことを覚えていた。彰は何かしたかと考えてみるがここでは本当に何もした記憶はなかった。ただ普通に買い物をしただけである。


「なんで俺のこと覚えてるんですか?」
「いやな、結構高い装備をさらっと買って行ったからよく覚えてるんだよ」
「え、あれって高いんですか…武器は基本あれくらいするもんだとばっかり…」
「ん~剣はともかく防具は結構高い方だと思うぞ?そうか、知らなかったのか、悪いことしたな兄ちゃん」
「いえ、大丈夫です。ここでけちって大けがするよりいいんで…」


 彰はこの時初めて自分の金銭感覚が狂い始めていることに気づいたのだった。ここで装備を買ったらこれからは節約しようと意識を改める。


「そうか…で、今日はどうすんだ兄ちゃん?」
「この子の装備が欲しいんです。値段は俺のと同じくらいでもかまわないんで」
「おお、この子のね…で、どんな装備がいいんだい?お嬢ちゃん」
「……防具は動きやすいの…武器は決めてない」
「う~ん、決めてないか…ならボウガンなんてどうだい?」
「……ボウガン…?」
「そうボウガンだ、比較的女、子供でも使いやすいし昨日の装備だと近接戦闘はこっちの兄ちゃんがしてくれるんだろ?なら一人は遠距離が使えるといいと思うんだが…どうだ?」
「……見てみたい」
「わかった。じゃあ今持ってくるよ、待ってな」


 そう言って奥に行く店主。少しすると店主が戻って来た。

 その手にはノエルでも頑張れば片手で持てる位の大きさのボウガンと彰と似たような皮の防具の茶色版を持っていた。


「防具は兄ちゃんと同じタイプの奴だな、でこっちがボウガンだ。値段は兄ちゃんのと同じくらいなんだが…」
「大丈夫ですよ、気にしないで下さい。それで、どうだ?ノエル」
「……少し待って」


 ノエルは店主の持ってきたボウガンを持ってみたり構えて見たりした後、なんか満足した感じの顔をする。


「……これでいい」


(ノエルがいいって言うならこれでいいか、付与術との相性も良さそうだしな)


「店主これ今持ってきたものとこれ用の矢を大量にくれ、後近接用の短剣もひとつ頼む」
「ハイよ、全部で金貨6だが前と同じで付属品付きで5枚でいいぜ、いっぱい買ってくれてるからな」
「さんきゅ、店主」


 彰は金貨を払い、買った装備などをノエルにつけさせた後、武具屋を出た。

 その後、彰は文字が読めるというノエルにこの世界の文字を教えてもらうため雑貨屋によって適当な本を買った。

 活版印刷がまだないらしく、手書きで本を書いているせいなのか少し値段が高かったが、これも必要経費と割り切った。

 そうして宿に戻って来た彰達だったのだが…ここであることに気づいた。ベッドが一つしかないのだ。

 彰は急いで女将さんに言いに行き、何とかベッドの二つある部屋に移してもらった。

 彰達は夕飯をおいしくいただいたあと、いざ寝ようとしたのだが…


「おい、ノエル、なぜお前はせっかくベッドを2つにしたのにこっちのベッドに来るんだ?」
「……?」
「なんで何言ってるかわからないって顔してんの!?」


 何故かノエルが彰のベッドの方に来るのだ。これではベッドが2つある部屋に移動して来た意味がない。

 そう思って激しく反論する彰に淡々と言い返すノエル。


「……私…アキラの奴隷…夜の相手は…奴隷の責務」


 そう言うとノエルは着ていた服を脱いで抱きついてきた。


「な!?…ちょ、ノエル!?」


 今の彰は寝る前で防具を外している。

 よって抱きついているノエルから漂ってくる女の子独特の甘い香りが鼻腔をくすぐり、密着している肌からはほんのりと温かい人肌の感触と柔らかさが彰にへとダイレクトに伝わってくる。

 ノエルの胸は大きくはないがそれでも抱きつかれ、密着されていればその発展途上の感触が嫌でもわかってしまう。まぁ彰も嫌なわけではないのだが…。

 とにかく、上目づかいで彰を見てくるノエルの姿はとても扇情的で彰はこのままではどうにかなってしまいそうだった。
 
 しかし、彰はそこで彼女の体が震えていることに気づいた。慌ててノエルを引き離して服を着させる。

 それでもその際見えてしまい、頭に焼き付いてしまった胸のイメージを頭を振って振り払うとノエルの方を向いた。


「ノエル、何でこんなことをしたんだ?」
「……私は…アキラの奴隷だから…」
「でももうノエルに首輪は無いんだ、嫌なのにそんなことをする必要はないはずだ」
「……だって…捨てて欲しくなかったから…」


 と暗い顔で俯くノエル。どうやらあれだけ言っても信じられなかったらしい。

 彰は今度こそ自分の気持ちを伝えようとノエルの目を見て言った。


「ノエル、お前は自分のことを俺の奴隷だと言っているが俺はそう思ったことはない」
「……え…そんな…」
「最後まで聞け、俺はノエルのことは大切なパートナーだと思ってる」
「………パートナー?」
「そうだ、お互いのダメなところをそれぞれの長所でカバーしあって、時には怒ったり、時には一緒に笑ったりできる、そんなパートナーになりたいんだ。
 そんなノエルのことを見捨てるなんてことは絶対にない!これでも信じてもらえないか?」


 顔を下げて考え込むノエル。彰は信じてもらえるかだんだん心配になってきていたがノエルはやがて満足そうな顔をすると答えた。

「……パートナー、いい響き…」
「なら…」
「……わかった…信じる」
「そうか、ありがとな」


 彰が自分を信じてくれたことにお礼を言うとノエルは今日一番の笑顔で笑った。


「……やっぱり…アキラは優しい…私を買ったのが…アキラで良かった」


 この夜、彰はノエルと本当の意味で分かりあえた気がした。


 だが、この後一人で寝ると奴隷時代を思い出して怖いというノエルの強い主張により、結局二人は一つのベッドで寝ることになり、彰は一人ドキドキして眠れぬ夜を過ごしたのだった。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...