【加筆修正済】貴方に幸せの花束を

かかし

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中編

やっぱり一年離れるのは、辛い

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「じゃあ、行って参ります。」
「行ってらっしゃい、ルイ。気を付けてね。」
「どうか無理はしないで。」

父様と母様と強くハグをして、そうして母様の後ろに居る妹を見る。
泣いたのだろうか、目元が赤くなっている。
思えば以前の僕はご学友候補だったからとっとと学園に行ってしまったし、そういう意味じゃ家族とコミュニケーションを取らなかった。
取ろうとも、しなかった。
あの日のカノンノも、こんな風に寂しかったのだろうか?

「カノンノ。」
「………はい、ちい兄さま。」
「お願い、ハグして。暫くの間、したくても出来ないんだから。」

甘えるように、そう言ってみる。
お兄ちゃんらしくないけど、でもこうする方が妹は好きなので最大限に利用させてもらう。
案の定、そろそろと母様の後ろから出て来たカノンノは、勢い良く僕の腕の中に飛び込んでくれた。
大きくなって、僕とそう変わらなくなった身体をギュッと抱き締める。
ほろほろと涙を流して僕の服を掴んで離さない彼女が、もう二年もしたら僕よりも身長が高くなってスラッとした身体になって、その人形のように可愛らしい顔でたいそうモテモテになることは知っている。
いつか、以前の僕が終ぞ見ることが出来なかった最高に美しい彼女のウエディングドレス姿を見るんだ。

「行って来るね。」
「うん!待ってます!」

ぐしゃぐしゃに泣きながら、カノンノは僕にそう言った。
可愛いカノンノ、僕の最愛の妹。
来年になったらカノンノも学園を通うし夏期休暇や冬期休暇の時には会えるとはいえ、やっぱり一年離れるのは、辛い。
でも、もう行かないといけない。

僕はアルシェント家の次男なんだから。

そっとカノンノの身体を離し、そうしてそのまま何も言わずに踵を返す。
馬車の扉を開けてもらって乗り込んで、でも拳を固く握らないとまた引き返して行きたくないって駄々を捏ねてしまいそうで怖かった。
窓を見るのは、暫くの間止めておくことにした。
だって父様母様、そして妹の姿を見てしまったらきっと窓から転げ落ちてでも降りてしまう。

嗚呼、僕はこんなにも甘ったれだったのか。

甘ったれというよりも、依存体質ってやつなのかな?
以前の僕はしつこい程ドミニク様について回っていたし、今の僕は家族にべったりとしている。
依存体質は最低な男の第一歩って聞く。

改めないとなと思いながら、そろそろと窓を見た。
車ほどじゃないけど、二馬力で走る馬車はなかなかに速い。
以前の僕がずっとずっと帰りたかったお屋敷が、あっという間に小さくなってしまう。

じんわりとした不安が、全身に広がっていく。

僕はお屋敷に、家に帰れるのだろうか。
ちゃんと皆無事に、生きていれるのだろうか。
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