【加筆修正済】貴方に幸せの花束を

かかし

文字の大きさ
45 / 51
後編

でも、否定しないで欲しい

しおりを挟む
得体も知れない恐怖に震え、わんわんと子供のように泣き続ける僕を、ドミニク様は辛抱強く背中を摩って慰めてくれた。
優しく頭を撫でてくれた。
まるで婚約していた頃のような優しい手付き。
そこでハッと気付く。

多分だけど、以前のドミニク様は婚約していた頃から僕のことを良く思ってなかった。
それはそうだろう。
恋人が居たのに、その人じゃなくて僕なんかを宛がわれてしまったのだから。
でも今のドミニク様に関しては、殆ど関りがない。
パーティーの時にお会いしたきりだ。
そんな状態で婚約者でも友人でもないのに下位の家の者が、尊いお名前を呼んで抱き着いて泣き喚くなんて、なんたること!
そう気付いた瞬間、恐怖でひゅんと涙が引っ込んだ。

「ルイ、大丈夫だよ。」

離れよう。
そして誠心誠意の謝罪を………!
そう思って身を捩ると、何故か逆に強く抱き締められてしかも頭のてっぺんにキスをされた。
えっ?
………なんで?

「ああ、目が腫れてしまってるね。」
「んっ」

顎をすくわれ上を向かされたと思ったら、目元に優しくキスをされる。
以前の僕が泣いた時に、以前のドミニク様がよくしてくれた動作だ。
嬉しい。
ふわふわする。
やっぱり僕の都合の良い夢なのかな?

「痛い?」
「ううん、痛くない………」

いけないって分かってても、口調が以前のモノに戻ってしまう。
不敬なのに。
罰せられてもおかしくないのに。
でも、眦に何度も何度もキスをされたら嬉しくてふわふわしてしまうのは仕方ない話だ。
思わず甘えるように擦り寄れば、嬉しそうに目を細めているドミニク様と目が遭う。
視界の端には、ふらふらと楽しそうに揺れる漆黒の尻尾。

どうして、そんなに嬉しそうなの?

僕の知っているドミニク様と違う。
でも思えば、ドミニク様が出陣命令で家を空ける前まではいつもこんな顔をしていた気がする。
どうして?
でもは、いつも我慢していたと言っていて―――

「ルイ………」

名前を呼ばれ、そっと頬を撫でられる。
キスする前にいつもしてくれてた行動。
どうして、このドミニク様がそれをするの?
疑問に思うよりも早く、腰を抱き寄せられて顔が近付いてくる。
それに釣られるように、僕も顔を寄せてしまう。
今は、全ての疑問を―――

カサッ
「え?」
「あっ。」

そう思っていたら、ドミニク様のポケットから何かが落ちてきた。
カサリと乾いた音を立てて落ちたそれに、ドミニク様の意識が逸れて力が抜けた。
その隙に腕の中から抜け出して、ドミニク様よりも早く【何か】を拾う。
何故そんな不敬極まりないことをしたのかは分からない。
でも僕は、その見覚えのある淡い青色の封筒を拾わなければいけないと思ったのだ。

「これ………どうしてドミニク様が………」
「そっ、れは………」

僕の問いに、ドミニク様は辛そうな表情で俯いた。
いつもハッキリと意見を言う彼らしくない。
さっきまで嬉しそうに振られていた尻尾も、すっかり元気無くなってしまっている。
聞いてはいけないのかもしれない。
でも、聞かないといけないと、僕の中で僕が叫んでいる。

ですよね?それをどうしてのですか………?」

声が震える。
否定して欲しい。
でも、否定しないで欲しい。

「こ、これは………」

ドミニク様が、僕に負けず劣らずの震えた声で語り始める。
僕の予想だにしない、内容まで。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

処理中です...