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二ヶ月目
毛布ふみふみする猫かよ。
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「………お、お邪魔します!」
「おう。」
来たる土曜日。
正直俺も康介も、初めて俺の家に招いた時よりも緊張しているのかもしれない。
取り敢えず歯ブラシとか下着とか買ったけど、それで足りるか?
荷物を持って来てるみたいではあるが………。
てかそれお泊りセットなんだよな?
期待して良いんだよな?
「耀司くん、耀司くん。」
「ん?」
ちょっと緊張した面持ちの康介が、俺の名前を呼びながら袖を引っ張る。
屈めの合図だ。
要望通り少し身体を傾けてやれば、慣れた様子で康介が背伸びをして俺の頬にキスをしてくる。
は?
あざとすぎないか?
可愛いんだが?
「今日お泊りするから、よろしくね。」
「………おう。」
照れ笑いを浮かべる康介に、顔がにやけてしまうのが止められない。
まだ玄関だというのに、暫くの間互いにキスをしてはケラケラと笑い合った。
結局満足してリビングに行ったのは三十分程じゃれ合ってからで。
こんなバカップルなイチャつき方、自分にはほんと縁が無いと思ってたんだけどな。
康介相手だと、いつまででもできる気がする。
「映画観て良い?」
「良いぞ。好きなの選べ。」
いそいそと我が物顔でソファベッドを準備しながらそう聞いてくるので、俺も俺で昼寝用に買った大人の男二人でも余裕で包まれるブランケットを用意しながら答える。
この間買ったDVDも並べてるから、探し甲斐もあるだろう。
「んー………耀司くんも一緒に探そう?」
DVDやBlu-rayを並べている棚に背を向けて、康介が俺に向かって腕を広げる。
なんか今日めっちゃ甘えてくるじゃねぇか、可愛い。
少し近寄って広げられた腕を取って逆にこっちに引き寄せてみれば、何の抵抗もなくすっぽりと収まって俺の首筋に顔を埋めた。
好きだよな、それ。
「俺も?」
「うん。耀司くんのオススメ観たい。」
康介を支えながら胡座をかけば、至極当然といった感じで康介が体制を変えて胡座の上に乗ってくる。
猫みたいで可愛いな、マジで。
しかしオススメなぁ………
基本面白くなかったやつは売ってるから、残ってるやつはそういう意味じゃオススメになる訳だし………
「ああ、これどうだ?」
手に取ったのは映画じゃなくて、連続ドラマになった小説のドラマスペシャルのDVDだ。
尺が長いスペシャルならではって感じで、より原作重視な重苦しい雰囲気の内容と人間模様等が個人的にはお気に入りだった。
「ドラマのやつだ。」
「そ。ドラマ面白かったから小説買って、で、これが放送された時も観て………ぶっちゃげ泣いた。」
因みに未だにこのドラマ観て泣いてる。
感動モノじゃないし、お涙頂戴モノでもない。
ただ、だからこそ、純粋に登場人物の気持ちに引き込まれて泣けたんだ。
「耀司くんもドラマ観て泣くのか………」
「たまにはな。で?どうする?」
俺の事なんだと思ってんだと思わなくもないが、まぁ確かに感動モノやお涙頂戴モノを見ると欠伸が出るか鼻で笑うかのどっちかだしな。
涙が出るとしたら、欠伸による生理的なやつだ。
映画にしてもドラマにしても、泣けるやつは結構珍しいかも。
「お前はボロボロ泣いてそう。」
「んっ、分かんないよ?」
案外もちもちしている頬を甘噛みしながらそう言えば、康介はちょっと不服そうな顔をして俺の顎を噛み返した。
意趣返しのつもりか?可愛い。
顔届かなくて顎を辛うじてなのが尚更可愛い。
「ソファ行く?」
「あー………」
どうすっかなぁ………ソファで昼寝しても良いけど、このまま康介を抱いたまんまも良いよな………
抱き心地良いんだよ、コイツ。
あと噛み心地もいい。
「このまま。」
「大丈夫?足痺れない?」
「そこまでヤワじゃねぇよ。ま、辛くなったらソファ行こうぜ。」
結局膝の上に乗せたまま、気が付けば康介が握りしめていたリモコンを操作することに決めた。
とはいえ角度と距離が良くないから、横着して康介を膝に乗せたままケツを擦るようにソファの前まで動く。
動きにくいが、ちゃんとテレビから距離は取れたな。
「近くねぇ?見にくくねぇ?」
「平気!耀司くんは?」
「平気。ほら、じっとしてろ。」
ソファからブランケットを引き寄せて、康介ごと包まる。
うん、ふわふわ。
洗濯したとはいえ買ったばかりで今日初めて下ろしたから康介が気にいるか不安だったが、どうやら気に入ったらしく楽しそうにブランケットの手触りを確かめている。
毛布ふみふみする猫かよ。
「気に入ったか?」
「うん。気持ち良いしあったかい。」
嬉しそうに笑う康介の頬にキスをしながら、俺はプレイヤーを起動させた。
すぐに康介の視線が画面に取られてしまうのは少し寂しかったが、それでも俺も俺で、ドラマを象徴するあのテーマ曲が流れるとそっちに集中してしまったのだけど。
「おう。」
来たる土曜日。
正直俺も康介も、初めて俺の家に招いた時よりも緊張しているのかもしれない。
取り敢えず歯ブラシとか下着とか買ったけど、それで足りるか?
荷物を持って来てるみたいではあるが………。
てかそれお泊りセットなんだよな?
期待して良いんだよな?
「耀司くん、耀司くん。」
「ん?」
ちょっと緊張した面持ちの康介が、俺の名前を呼びながら袖を引っ張る。
屈めの合図だ。
要望通り少し身体を傾けてやれば、慣れた様子で康介が背伸びをして俺の頬にキスをしてくる。
は?
あざとすぎないか?
可愛いんだが?
「今日お泊りするから、よろしくね。」
「………おう。」
照れ笑いを浮かべる康介に、顔がにやけてしまうのが止められない。
まだ玄関だというのに、暫くの間互いにキスをしてはケラケラと笑い合った。
結局満足してリビングに行ったのは三十分程じゃれ合ってからで。
こんなバカップルなイチャつき方、自分にはほんと縁が無いと思ってたんだけどな。
康介相手だと、いつまででもできる気がする。
「映画観て良い?」
「良いぞ。好きなの選べ。」
いそいそと我が物顔でソファベッドを準備しながらそう聞いてくるので、俺も俺で昼寝用に買った大人の男二人でも余裕で包まれるブランケットを用意しながら答える。
この間買ったDVDも並べてるから、探し甲斐もあるだろう。
「んー………耀司くんも一緒に探そう?」
DVDやBlu-rayを並べている棚に背を向けて、康介が俺に向かって腕を広げる。
なんか今日めっちゃ甘えてくるじゃねぇか、可愛い。
少し近寄って広げられた腕を取って逆にこっちに引き寄せてみれば、何の抵抗もなくすっぽりと収まって俺の首筋に顔を埋めた。
好きだよな、それ。
「俺も?」
「うん。耀司くんのオススメ観たい。」
康介を支えながら胡座をかけば、至極当然といった感じで康介が体制を変えて胡座の上に乗ってくる。
猫みたいで可愛いな、マジで。
しかしオススメなぁ………
基本面白くなかったやつは売ってるから、残ってるやつはそういう意味じゃオススメになる訳だし………
「ああ、これどうだ?」
手に取ったのは映画じゃなくて、連続ドラマになった小説のドラマスペシャルのDVDだ。
尺が長いスペシャルならではって感じで、より原作重視な重苦しい雰囲気の内容と人間模様等が個人的にはお気に入りだった。
「ドラマのやつだ。」
「そ。ドラマ面白かったから小説買って、で、これが放送された時も観て………ぶっちゃげ泣いた。」
因みに未だにこのドラマ観て泣いてる。
感動モノじゃないし、お涙頂戴モノでもない。
ただ、だからこそ、純粋に登場人物の気持ちに引き込まれて泣けたんだ。
「耀司くんもドラマ観て泣くのか………」
「たまにはな。で?どうする?」
俺の事なんだと思ってんだと思わなくもないが、まぁ確かに感動モノやお涙頂戴モノを見ると欠伸が出るか鼻で笑うかのどっちかだしな。
涙が出るとしたら、欠伸による生理的なやつだ。
映画にしてもドラマにしても、泣けるやつは結構珍しいかも。
「お前はボロボロ泣いてそう。」
「んっ、分かんないよ?」
案外もちもちしている頬を甘噛みしながらそう言えば、康介はちょっと不服そうな顔をして俺の顎を噛み返した。
意趣返しのつもりか?可愛い。
顔届かなくて顎を辛うじてなのが尚更可愛い。
「ソファ行く?」
「あー………」
どうすっかなぁ………ソファで昼寝しても良いけど、このまま康介を抱いたまんまも良いよな………
抱き心地良いんだよ、コイツ。
あと噛み心地もいい。
「このまま。」
「大丈夫?足痺れない?」
「そこまでヤワじゃねぇよ。ま、辛くなったらソファ行こうぜ。」
結局膝の上に乗せたまま、気が付けば康介が握りしめていたリモコンを操作することに決めた。
とはいえ角度と距離が良くないから、横着して康介を膝に乗せたままケツを擦るようにソファの前まで動く。
動きにくいが、ちゃんとテレビから距離は取れたな。
「近くねぇ?見にくくねぇ?」
「平気!耀司くんは?」
「平気。ほら、じっとしてろ。」
ソファからブランケットを引き寄せて、康介ごと包まる。
うん、ふわふわ。
洗濯したとはいえ買ったばかりで今日初めて下ろしたから康介が気にいるか不安だったが、どうやら気に入ったらしく楽しそうにブランケットの手触りを確かめている。
毛布ふみふみする猫かよ。
「気に入ったか?」
「うん。気持ち良いしあったかい。」
嬉しそうに笑う康介の頬にキスをしながら、俺はプレイヤーを起動させた。
すぐに康介の視線が画面に取られてしまうのは少し寂しかったが、それでも俺も俺で、ドラマを象徴するあのテーマ曲が流れるとそっちに集中してしまったのだけど。
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