エルフェニウムの魔人

神谷レイン

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 計画実行の一時間半前。

 イーゲルは人質の引き渡しの条件であるシュリの元に訪れていた。だがシュリがいる部屋に入ってすぐ、思わぬ光景に驚き、そして目を細めた。

「おや、兎の獣人種は性欲が強いとは聞いていたが、まさかこうなっているとは」

 イーゲルは面白げに呟いた。そこには一人の男に胸元を触られ、もう一人の男には耳を舐めまわされているシュリがいた。前がはだけ、ズボンも足元まで下げられて、シュリはほぼ裸同然だ。シュリは嗚咽を漏らしながら「も、やめ、ろ」とぼろぼろっと泣き、肩を震わせた。
 そして時間を忘れて行為にふけこんでいた男達は、イーゲルが現れたことに驚き、慌ててシュリから身を離した。

「イーゲルの旦那、もうそんな時間ですかい」
「す、すみません、つい」

 そう男達は言い、イーゲルは笑った。

「いや、構わない。……しかし、なんだ。お前、男だったのだな」

 イーゲルはシュリの股に生えたペニスを見て呟いた。シュリはそれを聞いてもっと涙を流す。
 そして行為が始まった時の事をシュリは思い出した。



 ◇◇◇◇


 スープがこぼれた後。
 男達はしばらくどうするか押し問答し、話し合った後、結局シュリの姿にあてられて、手を出すことにした。
 シュリは急に鼻息荒く、熱い息を首筋に吹きかけ始めた男達に服を脱がされ、今から何をされようとしているのか、さすがに鈍感なシュリでも理解した。

「何するんだ! やめろ!」

 シュリは叫んだが、それさえも男達の欲情に油を注ぐ。

「いいね。拒む相手をするのも、萌える」

 男はシュリの顎についているスープをべろりと舐めながら呟き、シュリに悪寒が走る。それでも構わず、男はシュリの服の中に手を入れて胸元をまさぐった。カサカサの荒れた男の手で胸を触られ、気持ち悪さにシュリは体を震わせる。

「や、触るな!」
「胸がないと思ったけどやっぱり男か。……女だったら俺の息子を突っ込んで、孕ませてやったのに」

 下卑た声で言われ、シュリは言葉もでないほど怖くなった。

 まだズボンは履いている。だが、自分の何もない股を見たらこの男達はどう思うだろうか。もしかして俺は女にされてしまうんじゃないだろうか……?
 そんな事できはしないのに、そう思えて急に胸の奥が凍り付いていくような気がした。

 ……恐ろしい。怖い。

 ただその二言が胸の中に浮かび、アレクシスの顔が頭に過ぎる。アレクシスにキスされても一緒にお風呂に入って触られても気持ち悪さなんてなかったのに、今は気持ち悪さしかない。

 ……アレクシス、アレクシス、アレクシスッ!!

 心で叫ぶが、アレクシスは現れない。

「さぁ、ズボンも取ろうか?」

 シュリの耳を舐める男とは違うもう一人の男がズボンに手をかけた。

「や、ヤダ! やめろ!」

 シュリは怖くなって叫んだが、空しくも男はシュリのズボンをはぎ取ろうとする。もうズボンは脱がされるだろう。そして何もついてない股を見られることになる。
 だからシュリは願ってしまった。

 ……女なんかになりたくない。俺は男がいいッ!

 そうシュリが願った時。視界がぐにゃりっと揺れた。
 そして男がズボンを脱がす。

「見た目と同じで小さいのがついてるな」

 男はシュリの体から生えているペニスを見て呟いた。シュリの強い願いは体に受けれられ、体はシュリが選んだ性を具現化していた。揺れた視界が元に戻ったシュリは自分の股に視線を向ける。そこには男がいた。

 ……ちんこ、ついてる。

 シュリは自分で願ったのに、どこか絶望的な気分になった。
 シュリのペニスはこの状況に縮こまって、まだ皮を被っている。けれど男達には関係なかった。

「まあ、男でも後ろの穴に俺のをつっこんでやるよ」

 笑みと臭い息をかけられ、シュリは恐怖に涙を零した。
 
 だが少しの間を開いて、そこにイーゲルが現れた。
 イーゲルが現れたことによって、男達の手は止まり、シュリはまだ何とか胸元を触られ耳を舐められただけで済んでいた。けれど、心に受けたショックは大きい。

 気持ち悪いと怖い、悲しいが胸の中をぐるぐると回る。そしてこんな風に自分の性が決まってしまったことに混乱していた。
 けれどイーゲルは関係なく、怯え切り、涙を溢れさせ続けるシュリを面白そうに見た。

「なるほど、こういう傷つけ方もあったんだな。この方が手っ取り早かったかもしれんな。お前を変態の元に送って、一日中飼殺してもらう方が」

 イーゲルは口元に笑みを浮かべ、シュリを脅すように言った。その言葉にシュリはびくりっと肩を震わした。そのシュリを見て、イーゲルはシュリの顎を片手で持ち上げる。シュリの顔を見ると涙で顔は濡れ、殴られて頬が腫れている。
 そこに魔人のシュリはいない。傷ついたシュリだけだ。
 その顔を見て、ますますイーゲルは満足気な顔を見せた。

「そう、私はお前のそういう顔が見たかったんだ」

 イーゲルは笑って言い、その笑い声には男達も恐れて身を引いた。

「い、イーゲルさん。もうそろそろ、こいつを連れて行きましょう。引き渡しの時間が」

 今まで楽しんでいたはずの男が言うと、イーゲルは「そうだな」と冷めた顔をして男達を見た。
 そしてイーゲルが次に起こした行動に、シュリは目を見開いた。

「お前達にもう用はない」

 イーゲルは冷めた声で呟いた。
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