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城崎先生は
「思い出すのが早かったわね。もう少しかかると思ったのに」
と、冷静に言った。瑛子が
「なんであんなこと」
と言うと、城崎先生は
「まだわからない? 護さんのためよ」
瑛子は芦谷先生のためにと、あそこまでやる城崎先生に狂気を感じながら
「丹家さんを巻き込む必要はあったんですか?」
と訊くと
「バカね、護さんのために一番最初に潰さないといけないのは、あの子じゃない。と言っても貴女にはわからないわね」
そう言われて、瑛子は城崎先生がヒロインと芦谷先生が、くっつかないように動いていたのだと気づいた。城崎先生はぼんやり右上を見つめながら
「とにかく、あの子が他の生徒たちのどれかとくっつけば私はそれで良かったのよ。その為にあんな下らない怪文書まで送りつけて、わざわざ出会いのエピソードまで仕立ててやったのに」
と言うと、瑛子に視線を戻し
「思わぬ伏兵がいたもんね」
と言った。瑛子は
「でも、私と芦谷先生は特別な関係なんかじゃありません」
と言うと、城崎先生は薄ら笑いを浮かべて
「貴女のそう言うところが癇に触るのよね。貴女、本当にそう思ってるの? まぁ、いいけど。これから貴女はこの件の犯人として、社会から抹消されるでしょうから」
と言った。瑛子はどういうことなのか分からず、城崎先生を見つめた。城崎先生は楽しそうに
「貴女と私の相談記録を作ってあるの。貴女は丹家さんをそそのかして、一緒に今までのことを自演自作したことで、酷く悩んでるって内容。楽しそうでしょ?」
瑛子は怒りに震えながら
「そんなもの、誰も信用してくれませんよ」
と言ったが、城崎先生は笑うと
「本当に? そうかしら。貴女を襲ってこようとした男子生徒が、貴女の指紋入りの手紙を持ってたり、バレーボールの支柱が倒れてきたのに、軽い脳震盪ですんだり。あの子と二人でやったことにすれば、辻褄が会うんじゃない?」
と言った。瑛子は
「残念ですけど、私と丹家さんが仲良くないのは周知の事実ですし、そもそも丹家さんが明らかに損をするような計画を、一緒に実行したとは思わないと思います。それに丹家さんだって黙っていないでしょうし」
と言い返した。城崎先生は憐憫の眼差しで瑛子を見つめると
「それは、あの子が協力者が私だと知っていたら、の話よねぇ? あの子、誰が協力者かも知らないのよ?」
と言った。瑛子が押し黙っていると
「なんで私が貴女にこんな話したか分かる? 悔しがるその顔を見たかったからよ」
と言って微笑んだ。瑛子は
「そんなの上手くいくはずありません!」
と言ったが、実際に暎子は警察に一度は疑われている。もしも瑛子が、ヒロインを操っていたとなれば、また疑われるかもしれない。そう思った。その時、保健室のドアが勢い良く開くと
「瑛子! 大丈夫か!?」
と芦谷先生が保健室に入って来て、城崎先生と瑛子の間に割り込み、瑛子を背後に隠した。城崎先生は
「芦谷先生、そんなに慌てなくても、櫤山さんは大丈夫ですよ。なんでも坪野先生に追いかけられてたみたいで」
と穏やかに言った。芦谷先生は
「えぇ、知ってます。坪野先生から聞きましたから」
と言うと、城崎先生は驚いた顔をして
「そうなんですか? じゃあなにか誤解があっただけなのかな?」
と言うと、芦谷先生の後ろにいる瑛子を覗き込んで
「良かったわね、櫤山さん。誤解なんですって」
と言った。そして急に表情を曇らせると
「それにしても、芦谷先生。私この子から色々相談を受けてましてね、記録が残ってますので後でちょっとお話しましょう」
と言った。瑛子は芦谷先生の背広の裾をギュッと握った。芦谷先生は
「それは良かった。その記録も証拠になりますから、助かります」
と言った。瑛子はどういうこと? と、混乱していると、芦谷先生は
「他にも証拠がでてますからね、指紋入りの手紙とか」
と言うと、城崎先生は
「あら、警察の方でもちゃんと捜査されていたんですね。じゃあ色々解決ですね」
と笑顔で答えた。瑛子は絶望していたが、芦谷先生は手を後ろに回し、瑛子の手を強く握った。そして
「そうですね、手紙に使われたノートの切れ端は、保健室の台帳に使っているノートと、切れ口が一致しました。それに、丹家が協力者を吐きましたしね。手紙の処分の時に隠れて見ていたそうですよ? 気づきませんでしたか? 城崎先生」
と言った。次の瞬間、城崎先生は
「うぁぁあ!」
と獣のように咆哮をあげると、そこにあったハサミをつかみ襲いかかってこようとした。芦谷先生は瑛子を庇うように抱き締めた。
するとそこに、坪野先生が
「いぇやぁぁぁー!!」
と叫んで猛突進してきた、その場にいた三人とも驚いてそちらを見て固まっていると、坪野先生は城崎先生にタックルをかました。城崎先生は
「ぶべらっ!」
と、言いながら横に吹っ飛んだ。そして、坪野先生は倒れた城崎先生の上に乗ると、城崎先生の手を後ろ手にして
「そこのバカップル! ぼんやりしてないで、紐!」
と叫んだ。芦谷先生はビニール紐を見つけ坪野先生に手渡した。坪野先生は手早く城崎先生の手を縛りあげると、朦朧としている城崎先生を仰向けにして襟首を持ち上げ、両頬をぶっ叩いて
「美咲! いつまでもだらしなく寝てるんじゃありません。ほら行くわよ!」
と、唸り声を出している城崎先生を無理矢理立たせると、芦谷先生を見てニヤリと笑い
「櫤山さんは、ショックを受けているでしょうから、芦谷先生が責任をもって対処してください。警察にもそのように伝えます」
と言うと、芦谷先生の肩を叩き
「上手くやりなさい」
と言い、瑛子に向かい
「恋愛は自由でしょうけど、周囲に悟られないように気をつけなさい。芦屋先生に迷惑をかけないように」
と、言うと城崎先生と共に去って行った。瑛子は呆気にとられ
「坪野先生って何者ですか?」
と訊いた。芦谷先生は
「番長……、いや、坪野先生は昔ヤンチャをしていてな、だから身体能力が卓越している。まぁ、そんなことはどうでもいい。櫤山、大丈夫か? 怪我はないか?」
瑛子は頷き
「はい、大丈夫です。ご心配おかけして大変申し訳ありませんでした。でも、これで一件落着ですから、これからは迷惑をかけずに過ごせると思います。じゃあ行きましょうか」
と言って歩き出した。すると芦谷先生は瑛子の腕をつかみ引き留めた。瑛子は驚いて
「芦谷先生? 私、本当に大丈夫ですよ?」
と言ったが、芦谷先生は瑛子を見つめると
「お前の大丈夫は、大丈夫じゃないんだな。気づくのが遅くなってごめんな」
と、苦笑して瑛子の頭を撫でた。そして、続けて
「瑛子、お前に何かあったら私が平気でいられない。この前もお前が死んでしまうかと思ったら、教師だとか生徒だとかそんなものは些細なことだと気づいた」
と言うと瑛子の頬を撫で
「教師として、私は失格だろう。だがお前には言わずにはいられない。瑛子、私はお前を愛している」
瑛子は信じられず
「だって先生は文化祭の時に、嫌そうにしていたじゃないですか」
と言うと、芦谷先生は
「あの時はすまなかった。私はお前の気持ちも考えずに、感情だけで動いてあんな行動をしてしまった。途中で我にかえってお前を自分から引き離した。それについて謝りたかった。だが、まさかお前を大切に思ってやった行動が、拒絶だと捉えられていたとは」
瑛子は我慢ができなくなり、涙がこぼれた。そして、震える声で
「私だって、芦谷先生のこと好きです」
と言った。すると芦谷先生は、瑛子を引き寄せ思い切り抱き締めた。そして、瑛子の耳元で
「好きになってくれてありがとう。お前のことをずっと大切にする」
と言った。瑛子は頷きながら芦谷先生を抱き締め返した。芦谷先生は泣いている瑛子の優しく背中を撫でなでた。しばらくそうしてから、芦谷先生が
「もうそろそろ警察が来ている頃だろう。瑛子、ちゃんと説明ができるか? 無理なら後日、ご両親と一緒にでもかまわないぞ?」
と、瑛子の顔を覗き込みながら言った。瑛子は
「大丈夫です」
と言ったが、芦谷先生は瑛子の顔をしばらく見つめると
「駄目だ、今日は無理そうだな。警察にはそう伝えるから大丈夫。さぁ、家まで送って行こう」
と言った。
「思い出すのが早かったわね。もう少しかかると思ったのに」
と、冷静に言った。瑛子が
「なんであんなこと」
と言うと、城崎先生は
「まだわからない? 護さんのためよ」
瑛子は芦谷先生のためにと、あそこまでやる城崎先生に狂気を感じながら
「丹家さんを巻き込む必要はあったんですか?」
と訊くと
「バカね、護さんのために一番最初に潰さないといけないのは、あの子じゃない。と言っても貴女にはわからないわね」
そう言われて、瑛子は城崎先生がヒロインと芦谷先生が、くっつかないように動いていたのだと気づいた。城崎先生はぼんやり右上を見つめながら
「とにかく、あの子が他の生徒たちのどれかとくっつけば私はそれで良かったのよ。その為にあんな下らない怪文書まで送りつけて、わざわざ出会いのエピソードまで仕立ててやったのに」
と言うと、瑛子に視線を戻し
「思わぬ伏兵がいたもんね」
と言った。瑛子は
「でも、私と芦谷先生は特別な関係なんかじゃありません」
と言うと、城崎先生は薄ら笑いを浮かべて
「貴女のそう言うところが癇に触るのよね。貴女、本当にそう思ってるの? まぁ、いいけど。これから貴女はこの件の犯人として、社会から抹消されるでしょうから」
と言った。瑛子はどういうことなのか分からず、城崎先生を見つめた。城崎先生は楽しそうに
「貴女と私の相談記録を作ってあるの。貴女は丹家さんをそそのかして、一緒に今までのことを自演自作したことで、酷く悩んでるって内容。楽しそうでしょ?」
瑛子は怒りに震えながら
「そんなもの、誰も信用してくれませんよ」
と言ったが、城崎先生は笑うと
「本当に? そうかしら。貴女を襲ってこようとした男子生徒が、貴女の指紋入りの手紙を持ってたり、バレーボールの支柱が倒れてきたのに、軽い脳震盪ですんだり。あの子と二人でやったことにすれば、辻褄が会うんじゃない?」
と言った。瑛子は
「残念ですけど、私と丹家さんが仲良くないのは周知の事実ですし、そもそも丹家さんが明らかに損をするような計画を、一緒に実行したとは思わないと思います。それに丹家さんだって黙っていないでしょうし」
と言い返した。城崎先生は憐憫の眼差しで瑛子を見つめると
「それは、あの子が協力者が私だと知っていたら、の話よねぇ? あの子、誰が協力者かも知らないのよ?」
と言った。瑛子が押し黙っていると
「なんで私が貴女にこんな話したか分かる? 悔しがるその顔を見たかったからよ」
と言って微笑んだ。瑛子は
「そんなの上手くいくはずありません!」
と言ったが、実際に暎子は警察に一度は疑われている。もしも瑛子が、ヒロインを操っていたとなれば、また疑われるかもしれない。そう思った。その時、保健室のドアが勢い良く開くと
「瑛子! 大丈夫か!?」
と芦谷先生が保健室に入って来て、城崎先生と瑛子の間に割り込み、瑛子を背後に隠した。城崎先生は
「芦谷先生、そんなに慌てなくても、櫤山さんは大丈夫ですよ。なんでも坪野先生に追いかけられてたみたいで」
と穏やかに言った。芦谷先生は
「えぇ、知ってます。坪野先生から聞きましたから」
と言うと、城崎先生は驚いた顔をして
「そうなんですか? じゃあなにか誤解があっただけなのかな?」
と言うと、芦谷先生の後ろにいる瑛子を覗き込んで
「良かったわね、櫤山さん。誤解なんですって」
と言った。そして急に表情を曇らせると
「それにしても、芦谷先生。私この子から色々相談を受けてましてね、記録が残ってますので後でちょっとお話しましょう」
と言った。瑛子は芦谷先生の背広の裾をギュッと握った。芦谷先生は
「それは良かった。その記録も証拠になりますから、助かります」
と言った。瑛子はどういうこと? と、混乱していると、芦谷先生は
「他にも証拠がでてますからね、指紋入りの手紙とか」
と言うと、城崎先生は
「あら、警察の方でもちゃんと捜査されていたんですね。じゃあ色々解決ですね」
と笑顔で答えた。瑛子は絶望していたが、芦谷先生は手を後ろに回し、瑛子の手を強く握った。そして
「そうですね、手紙に使われたノートの切れ端は、保健室の台帳に使っているノートと、切れ口が一致しました。それに、丹家が協力者を吐きましたしね。手紙の処分の時に隠れて見ていたそうですよ? 気づきませんでしたか? 城崎先生」
と言った。次の瞬間、城崎先生は
「うぁぁあ!」
と獣のように咆哮をあげると、そこにあったハサミをつかみ襲いかかってこようとした。芦谷先生は瑛子を庇うように抱き締めた。
するとそこに、坪野先生が
「いぇやぁぁぁー!!」
と叫んで猛突進してきた、その場にいた三人とも驚いてそちらを見て固まっていると、坪野先生は城崎先生にタックルをかました。城崎先生は
「ぶべらっ!」
と、言いながら横に吹っ飛んだ。そして、坪野先生は倒れた城崎先生の上に乗ると、城崎先生の手を後ろ手にして
「そこのバカップル! ぼんやりしてないで、紐!」
と叫んだ。芦谷先生はビニール紐を見つけ坪野先生に手渡した。坪野先生は手早く城崎先生の手を縛りあげると、朦朧としている城崎先生を仰向けにして襟首を持ち上げ、両頬をぶっ叩いて
「美咲! いつまでもだらしなく寝てるんじゃありません。ほら行くわよ!」
と、唸り声を出している城崎先生を無理矢理立たせると、芦谷先生を見てニヤリと笑い
「櫤山さんは、ショックを受けているでしょうから、芦谷先生が責任をもって対処してください。警察にもそのように伝えます」
と言うと、芦谷先生の肩を叩き
「上手くやりなさい」
と言い、瑛子に向かい
「恋愛は自由でしょうけど、周囲に悟られないように気をつけなさい。芦屋先生に迷惑をかけないように」
と、言うと城崎先生と共に去って行った。瑛子は呆気にとられ
「坪野先生って何者ですか?」
と訊いた。芦谷先生は
「番長……、いや、坪野先生は昔ヤンチャをしていてな、だから身体能力が卓越している。まぁ、そんなことはどうでもいい。櫤山、大丈夫か? 怪我はないか?」
瑛子は頷き
「はい、大丈夫です。ご心配おかけして大変申し訳ありませんでした。でも、これで一件落着ですから、これからは迷惑をかけずに過ごせると思います。じゃあ行きましょうか」
と言って歩き出した。すると芦谷先生は瑛子の腕をつかみ引き留めた。瑛子は驚いて
「芦谷先生? 私、本当に大丈夫ですよ?」
と言ったが、芦谷先生は瑛子を見つめると
「お前の大丈夫は、大丈夫じゃないんだな。気づくのが遅くなってごめんな」
と、苦笑して瑛子の頭を撫でた。そして、続けて
「瑛子、お前に何かあったら私が平気でいられない。この前もお前が死んでしまうかと思ったら、教師だとか生徒だとかそんなものは些細なことだと気づいた」
と言うと瑛子の頬を撫で
「教師として、私は失格だろう。だがお前には言わずにはいられない。瑛子、私はお前を愛している」
瑛子は信じられず
「だって先生は文化祭の時に、嫌そうにしていたじゃないですか」
と言うと、芦谷先生は
「あの時はすまなかった。私はお前の気持ちも考えずに、感情だけで動いてあんな行動をしてしまった。途中で我にかえってお前を自分から引き離した。それについて謝りたかった。だが、まさかお前を大切に思ってやった行動が、拒絶だと捉えられていたとは」
瑛子は我慢ができなくなり、涙がこぼれた。そして、震える声で
「私だって、芦谷先生のこと好きです」
と言った。すると芦谷先生は、瑛子を引き寄せ思い切り抱き締めた。そして、瑛子の耳元で
「好きになってくれてありがとう。お前のことをずっと大切にする」
と言った。瑛子は頷きながら芦谷先生を抱き締め返した。芦谷先生は泣いている瑛子の優しく背中を撫でなでた。しばらくそうしてから、芦谷先生が
「もうそろそろ警察が来ている頃だろう。瑛子、ちゃんと説明ができるか? 無理なら後日、ご両親と一緒にでもかまわないぞ?」
と、瑛子の顔を覗き込みながら言った。瑛子は
「大丈夫です」
と言ったが、芦谷先生は瑛子の顔をしばらく見つめると
「駄目だ、今日は無理そうだな。警察にはそう伝えるから大丈夫。さぁ、家まで送って行こう」
と言った。
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