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The 2nd episode
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「はい、そうですね。あなたなら、話しても良いかもしれない。
正直、迷ってました。話して良いのかも。
あ、ただ、悪い意味じゃないんです。今回も、壽美田さんにとっては、いきなり科が移動したのは、正直動揺させてしまったと思うし。
私実は、精神科医とは言いましたが、口頭科や内科もやっています。前の先生はいま病院を移ってしまいまして。たまにはウチに来るんですけど、彼女を託されました。
良いお話なのかはなんとも言えませんが、今日の様子を看護士から聞くと、あなたが一番今後の彼女のためには最適かなと思います。あくまで、女としての客観視ですが。
結論から申し上げますと、彼女の声帯に今、異常は見当たりません」
「え?」
それはどういう…。
「つまり、環は話せるんですか?」
「はい。ただ、物理的には、です。彼女の喉は、言うなれば我々の喉と変わりがないのです」
「…え、でも…」
7年以上、話せなかったのに。
「確かに、彼女のカルテを見ると…搬送されてきたのはもう、8年くらい前になりますね。
そのナイフが、声帯を傷付けてしまった。これは事実で、少し呼吸がしにくいこともあるようですが、声は、出るはずです。
我々も、最初はナイフの位置的に、喉仏辺りだったので、口頭がもうダメなのかなぁという見解でした。
しかし、あれから医療も発展しました。いろいろな、まぁCTやMRIで見てみたところ…。
確かに少し変形はしてしまったのですが、運ばれたのが早かったのもあって迅速な対応が出来、あまり大事にならずに済んだようです。ただ、もちろん、普通より…と言うかなんというか…まあ、炎症とかには気を使っていかなければなりません。食事も、口頭が近かったので少し気を使わなければなりません。だけど、本当に少しです。ゆっくり食べるとか、そのくらい。
声は、多分精神的なものだと思います。なにより、今、声帯には全く問題がないのです」
「そう、なんですか」
なんとなくはわかった。
「…きっと、よほどの恐怖だったのでしょう。そして、もうだめだと、本人も思ってしまっている。しかし、大丈夫なんです」
それはそうだろう。だって。
「…先生、少し、作戦があるんですが、いいですか?」
「…はい?」
「彼女の人生を、心機一転させてみたら良いんじゃないかなって、思うんです。
せっかく外にも出れたんだ。それだけ回復してるんだ。だったら…」
俺は思い付いた計画を、先生に話してみた。始めは、「うーん…」と渋っていたが、スケッチブックの話をすると、「…やってみてもいいかも…」と、徐々に納得してくれたようだった。
「彼女、外には一歩も出ていませんよ」
「え?」
「やっぱり、あなたは彼女の治療には必要ですね。特別な、存在なんでしょうね」
そう言ってにこにこと先生は笑っていた。
「そのスケッチブックの意味、ちょっと考えてみてください。ただ、事実は、彼女は、外には出ていません。
これを気に、徐々に外に出れるようになるといいですね。
お昼の時間ですね。もしよかったら外出許可を出しますので、どこか、二人で出掛けてみてはいかがでしょう?」
「え?」
「…そっかぁ、外に出たかったんだぁ…。
彼女の気持ちが知れてよかった。彼女を見てあげながら、まだまだわからないことがたくさんあって。
でもきっと…」
「きっと?」
「いえ。
すみません、長々と。では、ごゆっくりどうぞ」
先生はそう言うと、丁寧に一度頭を下げてくれた。
「…こちらこそ。これからも、よろしくお願いいたします」
「もし院外に出るようでしたら、一声掛けてください。お茶くらいなら、近くでしょう?」
「はい…、そうですね。じゃぁ、すぐ目の前の喫茶店にでも行ってこようかな。
あ、あと近くに公園とか、ありましたっけ?」
「はい、後ろ側に少し歩くと」
「じゃぁ、あわよくばそこに散歩にでも行こうかな」
「わかりました」
「では、出るとき受け付けに言って行きます」
そう告げて俺は先生に会釈をし、部屋を出た。
なんだか、環は良い先生に巡り会えたようだ。
前の先生も、名医ではあったが、今は、また違う可能性が、広がったように思う。
正直、迷ってました。話して良いのかも。
あ、ただ、悪い意味じゃないんです。今回も、壽美田さんにとっては、いきなり科が移動したのは、正直動揺させてしまったと思うし。
私実は、精神科医とは言いましたが、口頭科や内科もやっています。前の先生はいま病院を移ってしまいまして。たまにはウチに来るんですけど、彼女を託されました。
良いお話なのかはなんとも言えませんが、今日の様子を看護士から聞くと、あなたが一番今後の彼女のためには最適かなと思います。あくまで、女としての客観視ですが。
結論から申し上げますと、彼女の声帯に今、異常は見当たりません」
「え?」
それはどういう…。
「つまり、環は話せるんですか?」
「はい。ただ、物理的には、です。彼女の喉は、言うなれば我々の喉と変わりがないのです」
「…え、でも…」
7年以上、話せなかったのに。
「確かに、彼女のカルテを見ると…搬送されてきたのはもう、8年くらい前になりますね。
そのナイフが、声帯を傷付けてしまった。これは事実で、少し呼吸がしにくいこともあるようですが、声は、出るはずです。
我々も、最初はナイフの位置的に、喉仏辺りだったので、口頭がもうダメなのかなぁという見解でした。
しかし、あれから医療も発展しました。いろいろな、まぁCTやMRIで見てみたところ…。
確かに少し変形はしてしまったのですが、運ばれたのが早かったのもあって迅速な対応が出来、あまり大事にならずに済んだようです。ただ、もちろん、普通より…と言うかなんというか…まあ、炎症とかには気を使っていかなければなりません。食事も、口頭が近かったので少し気を使わなければなりません。だけど、本当に少しです。ゆっくり食べるとか、そのくらい。
声は、多分精神的なものだと思います。なにより、今、声帯には全く問題がないのです」
「そう、なんですか」
なんとなくはわかった。
「…きっと、よほどの恐怖だったのでしょう。そして、もうだめだと、本人も思ってしまっている。しかし、大丈夫なんです」
それはそうだろう。だって。
「…先生、少し、作戦があるんですが、いいですか?」
「…はい?」
「彼女の人生を、心機一転させてみたら良いんじゃないかなって、思うんです。
せっかく外にも出れたんだ。それだけ回復してるんだ。だったら…」
俺は思い付いた計画を、先生に話してみた。始めは、「うーん…」と渋っていたが、スケッチブックの話をすると、「…やってみてもいいかも…」と、徐々に納得してくれたようだった。
「彼女、外には一歩も出ていませんよ」
「え?」
「やっぱり、あなたは彼女の治療には必要ですね。特別な、存在なんでしょうね」
そう言ってにこにこと先生は笑っていた。
「そのスケッチブックの意味、ちょっと考えてみてください。ただ、事実は、彼女は、外には出ていません。
これを気に、徐々に外に出れるようになるといいですね。
お昼の時間ですね。もしよかったら外出許可を出しますので、どこか、二人で出掛けてみてはいかがでしょう?」
「え?」
「…そっかぁ、外に出たかったんだぁ…。
彼女の気持ちが知れてよかった。彼女を見てあげながら、まだまだわからないことがたくさんあって。
でもきっと…」
「きっと?」
「いえ。
すみません、長々と。では、ごゆっくりどうぞ」
先生はそう言うと、丁寧に一度頭を下げてくれた。
「…こちらこそ。これからも、よろしくお願いいたします」
「もし院外に出るようでしたら、一声掛けてください。お茶くらいなら、近くでしょう?」
「はい…、そうですね。じゃぁ、すぐ目の前の喫茶店にでも行ってこようかな。
あ、あと近くに公園とか、ありましたっけ?」
「はい、後ろ側に少し歩くと」
「じゃぁ、あわよくばそこに散歩にでも行こうかな」
「わかりました」
「では、出るとき受け付けに言って行きます」
そう告げて俺は先生に会釈をし、部屋を出た。
なんだか、環は良い先生に巡り会えたようだ。
前の先生も、名医ではあったが、今は、また違う可能性が、広がったように思う。
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