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魔王誕生編
24話 俺は転生者ではないぞ
しおりを挟む「あなたのおかげで、僕がどれだけヤバいことをしていたか気づくことができました!これからは真っ当に生きて行きたいと思います。気づかせてくれてありがとうございました!!」
あの後、ダンはすっかり夢から覚めたような顔つきになり、何故か俺に何度も礼を言って去っていった。
「これって、一件落着って奴になるのかな?」
「犯人も見つかったし、そいつもそういう行為はもうしないと言っているのだ。任務は完了したといっていいだろう。」
レオが何か釈然としない感じの様だが、当初の犯人を捕まえるという目的を達成したのだから問題はない。
「ちょっと、あんた。少しいい?」
それまで黙って何か思案していたミナが俺に話しかけてきた。
「何だ?」
「ここではちょっと。二人だけで話がしたいの。レオ君とノア君、少しの間だけ、この人借りていい?」
「ん~、ファーガス達にルドから絶対に目を離すなって言われているんだよね~。僕達の前では話しづらい事なのかな~?」
ミナの言葉にレオが難色を示した。
「お願い!どうしても確かめたい事があるの。少しの間だけでいいから。」
「俺は別に構わないぞ。」
ミナの必死な様子に俺に何を聞きたいのか気になってしまった。
「それならこういうのはどうでしょう?僕達の目が届く範囲の離れた位置で話をしてもらうのです。すぐに駆け付けられるようにできますし、ある程度、離れていたら話が聞こえるようなこともないでしょうし。」
「それでもいいわ。」
「俺もそれでいいぞ。」
ノアの提案に俺とミナは頷いた。そして近くにあった公園まで移動し、レオとノアは公園の入り口の方に居てもらい、俺達は二人が見える位置の中央にあるベンチに座った。
「で、聞きたい事というのは何だ?」
「単刀直入に言うわ!あんたって転生者でしょ!?」
また、意味の分からない言葉を言い出した。
「テンセイシャとはなんだ?お前はさっきから俺の知らない言葉を言うが、お前の方こそ何者なのだ?」
「えっ?日本人じゃないの??」
またしても、奇妙なことを言い出した。
「俺は、テンセイシャでもニホンジンとやらでもない。一体何なんだ。」
「あんた、本物のアーノルド王子なの?」
「俺に偽物がいるのか?というか何故、俺の本当の名を知っている?…お前、もしかして魔人と言う奴なのか?」
俺の中で一気にこの女に対する警戒度が高くなった。
「違うわ!私は魔人じゃないわよ。…だって、あんたが原作のキャラと全然違うから驚いたの!」
「また、俺の知らない言葉を。いい加減にしてくれ!俺を揶揄いたいだけなら帰るぞ。」
さっきから意味の分からない言葉ばかり言ってくるミナに怒りが湧いて、帰ろうと立ち上がると手を掴まえられて真剣な表情でミナが聞いてきた。
「待って!もう一つだけ聞かせて!!あなたはお兄さんに。…バーナード王子に強いコンプレックスを持っているのよね?今でもお兄さんの事は嫌いなの?」
「…確かに昔は、俺より優秀な兄上に劣等感を抱いていた。しかし、今は違うぞ。そんな兄上を尊敬しているし、将来は国王となる兄上を俺なりに支えたいとも思っている。」
予想外の事を聞かれて一瞬戸惑ったが、俺の本心を話した。
「え…。あれはそんな話じゃ……。じゃあ、つまりこの世界は…。なら、私は……。」
ミナは俺の言葉に衝撃を受けたように目を見開いたが、その後は俯いてブツブツと何か独り言のような事を言い始めた。
「おい、お前。本当に大丈夫か?どこか具合が悪いのなら医者を呼ぶぞ。」
さすがに気になって声をかけてみたが、俺の言葉が聞こえていない様だ。
「おーい!ミナちゃん、ルド~、大丈夫~?」
俺達のただならぬ雰囲気にレオとノアが駆け寄って来た。
「…私、少し考えたいことがあるので、今日は帰ります。」
ミナがいきなりそう言ってベンチから立ち上がった。
「おい、俺の質問には答えないのか?」
俺の質問には答えてないくせに聞きたい事だけ聞きやがって。
「…明日。明日には全部、お話ししますので今日は帰らせてください。」
「…わかった。」
先ほどとは打って変わって意気消沈したように大人しくなった奴にこれ以上はなにも言うことができず。終始無言のミナを家まで送り届けて、俺達はホテルへと戻ったのだった。
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