消えていく君のカケラと、進まない僕の時間

碧月あめり

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アイスクリーム頭痛

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 いつまでも笑いを収められずにいると、大晴が不貞腐れたような目でこちらを見てきた。

「笑いすぎ」
「ごめん。で、映画撮るのはいいけど、素人でも大丈夫なの? その高校生みたいにスマホで撮影するんだとして、脚本は? 監督は?」

 ドキュメンタリーの高校生に影響されて「映画を撮って文化祭で上映しよう」なんて具体的な提案をしてくるくらいだから、大晴の中でめくるめく構想でもあるのだろう。

 そう思って尋ねたら、大晴の顔が微妙に歪んだ。昔から何度も見たことがある。授業中、何も考えてないときに先生に当てられて、やべっと思ってるときの顔だ。

「それはほら、これからみんなで適当に考えてけばいいんじゃない?」
「適当なの?」

 わざわざこんなところまで呼び出しておいて、なんだそれは……。

 蝉の鳴き声がジージーと、それまでよりもいっそう大きく聞こえ始め。ガリガリくんのおかげでほんの一瞬クールダウンしていた体がまた、熱くなってくる。

 昨日の夜の電話も、今日の待ち合わせも、映画を撮ろうという提案も。全部適当な思いつきだというのなら、ほんとうに勘弁してほしい。

「わざわざ出てきて損した。具体的なプランがないなら、もう帰っていい?」

 わたしだって暇なわけじゃない。夏休みの課題にはまだ少しも手を付けられていないし、午後からは部活に顔を出さななければいけない。ちなみに、わたしの所属はバドミントン部だ。うちの高校のバドミントン部は特別強いわけではないけれど、いちおう一週間後には地区の試合への出場が決まっている。

 一度コンビニに入って、入り口近くのゴミ箱に、食べ終えたガリガリくんの袋と棒をぽいっと投げ込む。

「アイス、ありがとう」

 暑い中長時間待たされて具体的なプランもない映画撮影の話をされた身としては、ソーダ味のアイスバーを一本奢ってもらったくらいではまったく割に合わないけれど……。

 いちおうお礼を言ってから帰ろうとすると、「いやいや、ちょっと待ってよ」と大晴に引き止められた。


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