消えていく君のカケラと、進まない僕の時間

碧月あめり

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アイスクリーム頭痛

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 夏休みが始まる二週間前。わたしは学校帰りに交通事故に遭った。

 地元の駅からの帰り道。居眠り運転の乗用車が、植え込みを乗り越えて、歩道に突っ込んできたのだ。

 そばにいた蒼月がとっさに庇ってくれたおかげで、わたしは頭を打って意識を失ったけれど、軽傷で助かった。

 といっても、事故のことはすべて、病院で目を覚ましてから両親に聞かされたことしか知らない。

 わたしには事故の前後の記憶が失われてしまっていて、そのときにどうして蒼月がそばにいたのかまったくわからない。失われた記憶は事故のショックで一時的に忘れているだけかもしれないし、このまま思い出せないままかもしれないらしい。

 蒼月は、事故のときに近くに居合わせた理由を、学校帰りにたまたま駅でいっしょになったのだとわたしの両親に説明したそうだ。

 だけど、わたしには最近はあまり話すこともなかった蒼月がたまたまでもいっしょに帰っていたことが不思議だった。

 聞いた話だと、わたしが事故に遭ったのは、奇しくも七月七日。七年前にわたしと蒼月が疎遠になる出来事が起きた日で……。蒼月の十七際の誕生日だった。

「誕生日だったのにごめんね」
「気にしなくていいよ。もともと七月七日は厄日なんだ」

 謝るわたしに、蒼月が眉間を寄せてそう言った。

 七月七日は厄日。蒼月は昔から、自分の誕生日について悲観的に話す。

「蒼月、未だにそんなこと言ってるんだ? 七月七日に、織姫と彦星の呪いが降りかかってくるってやつだよね」
「呪いじゃなくて、恨み」
「どう違うの?」
「全然違う」

 真顔で首を横に振る蒼月と、わたしは前にも同じようなやりとりをしたような気がする。

「よくわからないけど……。でもそれって、蒼月のおばあちゃんが亡くなったのが、たまたまその日だっただけのことでしょう?」
「たまたまじゃないよ。全部七月七日だからだ。七年前に死にかけのホタルしか見られなかったのも、陽咲のケガも、今回の事故も、陽咲の記憶が欠けてるのも……」
「わたしの記憶……?」

 わたしの言葉に、蒼月がハッとしたように口を噤んだ。

うつむいた蒼月が、何かをごまかすように鼻に指をあててメガネの縁を押し上げる。

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