57 / 63
グレイシュブルー
2
しおりを挟む「そういえば、結局、藤川くんからの告白の返事ってどうしたの?」
考えていると、あやめがまだ他のメンバーが来ていないことを確認してからわたしに訊ねてきた。
「それは、まだ……」
「そうなの? それが原因で、藤川くんは陽咲とちょっと距離をとってるのかな。なんでまだ返事してないの? 迷わずオッケーでしょ」
中学生のときからわたしと大晴のことを知っているあやめは、わたしが大晴の告白を断る理由がないと思っている。わたしは、大晴が好きだなんて一度も言ったことがないのに、あやめの中でわたしと大晴は両思い認定されているのだ。
だけど、あやめの言うように「迷わずオッケー」なんてことはない。
返事をするのは、今度大晴とふたりで出かける夏祭りの日。日にちが迫ってきているのに、わたしはまだ答えに迷っている。
「返事はまだできてないんだけど、今度……」
「陽咲ー、深澤さん、おはよう」
大晴から夏祭りに誘われていることを話そうとしたとき、涼晴が手を振りながらこちらに向かって歩いてきた。
「あれ、大晴は?」
「ああ。たいせーは、蒼月くん誘っていくっておれより先に家出たよ。まだ来てない?」
ひとりきりでやってきた涼晴が、わたしに聞き返してくる。
「来てないよ。先に改札に入ってるとかじゃなければ……。ね、あやめ」
「うん、わたしが一番乗りだと思うんだけどな」
「ていうか、大晴はなんでわざわざ蒼月のこと誘いに行ったの? 逆ならわかるけど」
真面目な蒼月は、人との待ち合わせに遅刻するようなタイプじゃない。連絡もなく約束の時間に遅れてきたりするのは、どちらかというと大晴のほうだ。
「さあ、おれもわかんない。たいせー、夏休みに入ってからほぼ毎日ってくらい蒼月くんのところに行ってるみたいなんだよね」
「毎日?」
涼晴から聞かされた事実に驚いた。小学生のあの事件以降、わたしが蒼月とあまり話さなくなってからも、大晴と蒼月は変わらず仲が良かった。
といっても、いつも一緒にいるわけではなくて、お互いが必要のあるときにだけ一緒にいるという感じ。付かず離れず。わたしからしてみればうらやましく思えるような幼なじみの関係でふたりは繋がっていた。
一番仲が良かった小学校のときですら、ふたりが毎日一緒に遊ぶようなことはなかったのに……。
そんなふたりが、毎日会っていて、しかも、大晴のほうが蒼月の家に頻繁に遊びに行っているなんて……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる